環境教育な日々

環境教育事務所 野の塾工房たまご代表の後藤清史のブログ

8月17日 自然の中で遊ぶということ

2012年08月19日 | 環境教育


人の育成における自然体験活動の大切さが注目され、ロハスなど自然回帰的な流行もあり、ここ数年アウトドアでの体験を身近に楽しむ人が増えている。
実際、海水浴やキャンプだけでなく、今までオタクな領域だった登山や川遊びを楽しむ人も増加している。
道路網が整備され現地に行きやすくなったことや、インターネットなどで身近に情報を得やすくなったことなどが要因と考えている。
また、よりパーソナルな体験を求める気運の盛り上がりも、流行を後押ししているのかもしれない。
ただ、愛好者の増加に合わせるように体験が原因となった事故が多発している。

容易に現地に行けるようになったことや都市近郊の居住がが増え、慣れ親しんだ自然での体験から、未知の場所での自然体験が増加しているのかもしれない。
祖父母が遊び、父母が慣れ親しんだ場所。そのような場所を持つ(維持する)ことが現代では難しく、様々な情報を得て自然体験の場を求め各地へ移動することになる。
結果、不慣れな場所や方法での体験が増えていると考えられる。
家族単位での自然体験を保護者の経験に基づく体験の共有(伝承)と考えると、体験のレベル(経験)には自ずと差があるはずなのだが、自然環境は当然のことながら保護者の経験の差には対応してくれない。
対応されないからこそ保護者や周囲の大人の安全に果たす役割(負担)は、プールやスキー場などの人工施設よりも重要になる。


私たちが求める安全は、様々な要因で大きさの変わる風船のようなもの。
場所、天候、技術、装備、知識などその要因は多岐にわたる。
場所が悪ければ変える、装備がなければ無理をしないなど対応により不足を補うことはある程度できる。
また、天候や他の要因が意図せず不足を補うこともある。
ただし、どんな要因が整うことよりも「安全に体験させる」という保護者の思いが一番重要といえる。(残念なことに、この思いだけでは事故は防げない。)
自分ができないと思えることは、その不安を補える十分な装備や状況が整わない限りさせないことが大切だと考えている。
自分の経験知の外にある体験は、それだけ不測の要因を含んでいる可能性がある。


「もしも~したら」と考えるのか、「まさか~はない」と考えるのか。
安全は風船のようなもの。
経験と共に出来ることも増えてくる。
危険の質も変化し、安全も大きさや形を様々に変化する。
我々はその安全の範囲の中で活動するように努力しているにすぎない。


危険を排除したら自然体験をする必要がないのではと思う方がいるかも知れない。
しかし、そうではない。
要は、自然の中で(自然を対象に)どのような体験をさせたいのかということ。
どのようにリスクを取る(選択する)のかということが重要になる。
家族で楽しみに来たのであれば、必要以上のリスクはいらない。
子どもに何かを体験させたいのであれば、それに合った環境を与えればいい。
不必要なリスクは排除して。
ただし、すべてのリスクを排除することはできない。
そのため自然体験では安全の枠外に一瞬出てしまうこともある。
だが、対応すべきリスクが少なければ解決が図れ、貴重な経験となる可能性もある。


子どもは保護される立場にいる。
「手を出すな、決して目を離すな」という言葉がある。
子どもは保護された環境の中で様々に経験を積み、外の世界でするであろう体験の準備をする。


子どもたちの安全のために。
先ずは、子どもたちと体験しようとしている環境をじっくり観察してほしい。
そして経験では対応できず、装備に頼らなければならないなど不要なリスクが多いようなら、そこは体験にふさわしい環境ではないと判断できる。
保護者や周囲の大人によって不要なリスクが軽減される場合もある。
また、整備により軽減されていると思える場所もある。
このような環境では、保護者は意識しづらい不要なリスクを想像する必要があるかもしれない。
根拠のない楽観が一番危険なのだから。


最後に、装備の特性も気にしてほしい。
例1、幼児用の履く(足穴があり座る)タイプの浮輪。
一見、浮輪の欠点である使用者の抜け落ちが防止されて安全に見えるが、波で転覆すると幼児が浮輪の下になり水面下に没してしまう。波打ち際では、浮輪から足が抜けず起き上がることができないため危険な状態になることもある。

例2、浮輪
大型の物は浮力が強いが、風を受けやすく知らぬ間に風によって流されてしまう危険がある。また、持ち手がないため浮輪から抜け落ちる可能性もある。
川では流れがあるため泳力がおよばず浮輪につかまったまま流されることも考えられる。私には、実際に上流から子供が流されてきたのを助けた経験がある。
保護者は浮輪をつけているのでと安心して浅瀬で遊ばせていたが、子どもは水遊び中に脱げたサンダルが浮いたため取ろうとして流されたのだと。このときの保護者はBBQの準備中で気づかなかったと述べていた。

例3、シュノーケル
・・・

子どもたちの大切な体験のために。
自然の中で遊ぶということは、「ウィルダネス(Wilderness)」を内包する環境で遊ぶということ。
ただし、そこには危険ばかりでなく、発見と気づきの冒険が待っている。
保護者の方々は、もう一度この点を思い出して自然体験に出かけてほしい。


8月12日 環境教育に関する教員研修

2012年08月12日 | 環境教育


環境教育に関する教員研修を堺市の小学校の依頼で8月2日に実施した。
環境教育と言えば「環境学習」「自然学習」と思われ、多くの研修の場合はフィールドワーク(自然観察)か環境に関する座学がメインとなる。
最近では体験学習手法をとりいれたコンセプト学習なども行われているが、なぜそれを行うのかまでを視野に入れた研修は少ない。
また、その時の教師の役割などをトータルに学べる機会も同じではないか。

環境教育や様々な教育のなかに取り入れられ始めたグループ学習的な活動。
比較検討する過程(プロセス)を通して、お互いの発見や考えを共有しつつ学習を展開する。
良く聞かれる「このプログラムは面白い、良くできている」「活発に意見を述べるのが印象的」の意見。
プログラム自体の面白さや巧みさに関心が向いてしまい、そこに受講者がいることを忘れてしまってはいないだろうか。
受講者は、プログラム中で指示されたから意見を述べあうわけではない。
受講者が、学びやすくするための流れや、場づくりがそこにはある。また、互いの意見を聞き、互いに意見を述べ合う能力が参加者にも求められています。



この研修では、先生方に違う視点から環境教育への理解を進めようとチームビルド的なプログラムを提供しました。
安心できる空間について、意見を述べ合うこと、協力とは…
環境教育を進める上で大切なことは「個」の存在であること。
そして、「個」が集まり「グループ」が形成されていることを体験していただいた。

プログラム「地球を救え!(仮称)」を最後に提供した。
これは、グループで協力とは何かを学ぶためプログラムをアレンジしたもの。
「環境を持続可能なものとするために我々はどうあるべきなのでしょうか?」がまとめでした。


コミュニケーション⇒場づくり⇒共有体験⇒課題解決
「なぜ、環境教育の研修として提供されたのか?」を考えつつ、振り返っていただければと考えています。
積極的に学べる(チャレンジできる)環境とは、積極的に社会にかかわれる人材とは…。
今回の研修では、環境教育と体験した各アクティビティの位置づけなど(プログラム構成など)の解説を控え実施しました。


主体的参加、グループ体験、他者認知、自己肯定感の向上、失敗の共有、共有体験、チーム、失敗の許容、他者とのかかわり方、課題解決etc.etc
環境教育に不要なワードはあるだろうか?