８・１５ニッポン

　きょうは８・１５敗戦記念日。15年戦争による戦死者は日本人310万人、アジアの戦死者2000万人という。わが家はヒューヒューうなる焼夷爆弾の爆風で倒れ、名古屋市昭和区洲雲町の長屋から西加茂郡猿投村四郷字天道の薬局の裏小屋に引っ越した。幸か不幸か家族に戦死者はなかった。爆弾で命を失った誰それさんの話や親たちの愚痴を聞くたびに、この戦争への疑問がつのった。その疑問は成人してもかわらない。　ようもこんな無謀なことを。疑問が解けない。戦争反対を一言でも口にしようものならしょっ引かれたという。学校では「ススメススメヘイタイススメ」だったという。新聞もラジオもすべて戦争勝利を鼓舞するラッパだったという。中国や朝鮮を蔑視する排外思想がなんの疑問もなく浸み渡っていたという。そんな風潮の中でぼくの母は時々夜、向かいの朝鮮人のお婆さんになにか食べ物を届けていた。父にも内緒だった。

　朝、花壇に水やり。「ごくろうさま」。Ｙさんの家族そろってのお出かけ。「いってらっしゃい」。いいねえ。平和は。日本のマスメディアは敗戦直後、一時的に「戦争責任」を表明したがいまでは知らん顔。きょうもえらそうな口をたたく各社の社説を見て腹立たしく思った。「戦後日本の原点を問い直す」とか言っているが、朝日も読売も毎日も、あの侵略戦争の煽り役をした自身の反省の弁はかけらもない。国が戦争を反省して制定した日本国憲法を守る精神も消え失せている。「二度と戦争を繰り返さない原点の確認」といいながら、中国や韓国などかつて領土を奪っていた国との間で歴史観を共有する立場は見られない。かろうじて「核兵器の廃絶」を毎日が口にしたことぐらいが救いかな。と、いうようにぼくのマスコミ不信はつのるいっぽう。

　きょうも千里南公園へ行って、木陰のベンチに涼む。鷭の子が池の中の枯れ木に上ってダイビングしている。遠くへは飛べない。大人になる練習をしてるんや。えらいっ。丘へ登って歌碑をみる（写真は「やは肌の」歌碑）。
防人に行くは誰が夫と問う人を見るが羨しさ物思もせず（万葉集巻の二十－４４２５）
茜草指武良前野逝標野行野守者不見哉君之袖布流　額田王
やは肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君　与謝野晶子
　与謝野晶子は日露戦争のさなかに弟に「君死にたまうこと勿れ」と詠って、世間の非難ゴウゴウだったという。このニッポン風景はまだ尾っぽを振っていそうや。

盆あけて大欠伸するよその犬　愚句