ノーやん日記パート2

花の終わり

 人は非情である。ながい間心を和ませてくれた花たちを、まだ咲き続けているのに力づくで引き抜く。
 「パンジー、撤去しましたよ」。ある人の葬儀場で花のボランティアから聞いた。「ご苦労様でした」となにげなく答えた。ここは葬儀場である。うんもすんもない。お棺には栄華をきわめた人の亡骸に白い菊花が埋められていく。だれもが自然な振る舞いで美しい花をもぎり悲しみをあらわしている。わが身はひるんだ。もうひとり、死者の親友らしき男性が泣き顔を隠しながら花を入れるのをためらいお棺から離れている。
 人には感情がある。言葉もある。花たちにはない。いや、現わすすべがない。人は勝手に植え勝手に引き抜き花をもぎる生殺与奪の力をもつ。傲慢といえばそのとおりだが人は自然を支配する欲求を本能的にもつ。自然の摂理を知っている。つぎはどんな花が人を楽しませてくれるかを知っている。その知識にそって花に相対している。そこには感情など入る余地はない。が、不思議なことに育てた花に人の感情が微妙に湧いてきてその死を別れ惜しむ。葬儀に参列したその足でパンジーなきあとの土を起こし苦土石灰を漉きこんだ。少し気持ちが安らいだ。
 駄温鉢のアサガオは25個中8個がすべて発芽した。大方は1個以上芽を出したがひとつも芽をだしていないのもある。一昨日の大雨の影響がちょっと心配だ。
有る程の菊抛げ入れよ棺の中 漱石
雲しろむけふこのごろの花供養 蛇笏
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