南北朝の内乱騒ぎが歴史的にどういう意味をもっていたか。王朝権力の没落と武家幕府の登場、つまり古代社会から封建制社会へ日本が大きく変動した時期の一大ドキュメントと、現代のわれわれが理解すればこと足りることで、尊氏をめぐるそれ以上の史実の詮索、深入りは専門家に委ねればよい話だろう。
原作は1991年のNHK大河ドラマになった。恥ずかしながらぼくは映像を見ていない。見ようとも思わないが、小説は映像化を十分に意識したと思われるほど見事な筆捌きである。そのなかで引っかかったくだりがある。佐々木道誉の「バサラ」ぶりである。「バサラ」とは室町時代の流行語らしく、「婆沙羅」あるいは「跋折羅」といい、遠慮会釈なくふるまうことをいうらしい。佐々木道誉はそのさきがけのような人物で、「茶寄合」という博打に「数千貫を賭けた」という遊びに打ち興じたり、花の遊戯「立花」にも一家言もって興じていたらしい。「立花」とは今でいう「生け花」のことらしい。あだ花というべきかどうか。殺伐とした南北朝の世にそんな風雅の華が咲いたとは思いもよらぬ話である。歴史は皮肉なものだ。
金色の壺は新茶よ身ほとりに 青邨
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