limited express NANKI-1号の独り言

折々の話題や国内外の出来事・自身の過去について、語り綴ります。
たまに、写真も掲載中。本日、天気晴朗ナレドモ波高シ

ミスター DB ⑮

2018年01月30日 20時19分56秒 | 日記
翌日、私は看護師長さんから大目玉を頂戴した。「危うく捕らわれる場に出て来るなんて、馬鹿げてます。貴方は病人なんですよ!」お説ごもっともなので、ひたすら謝り続けて小さくなるしか無かった。一通りのお説教が終わろうとする頃、院内PHSが鳴り出した。看護師長の顔色が変わった。「今、警備員が昨日来た男らしき、怪しい者を追跡して逃げられたそうよ!一応、知らせて置くけど。貴方の言った通りになった様だわ。会社に対して厳重に抗議しなくてはならないけれど、窓口になりそうな人は思い当たる?」と問われた。確実なのはI氏しかいない。「Iさんの携帯番号なら分かりますが」と言うと「その人は医療の現場について理解があるの?」と更に聞かれたので「病院へ送り出してくれたのはIさんです」と言うと「唯一の理解者が居たのね。私から連絡してもいいかしら?」と言うので「異存はありません」と言ってI氏の携帯番号をメモして看護師長さんに手渡した。DBは懲りもせず、またしても病棟侵入を企て、失敗したようだ。後から聞いた話しによれば、マスクで顔を隠し目指し坊を被って「変装」しつつ、見舞い人に紛れて侵入しようとしたらしいが、警備員さん達が見逃すはずがない。たちまち、追跡される羽目になった様だが、発煙筒を投げて振り切ると言うはちゃめちゃな手口で逃げお失せたと言う。今後も週末の度に現れる事は間違いなく、それを考えると頭が痛くなり気分も滅入ってしまいそうだった。一体誰が嗅ぎつけたのだろか?事業所内では、限られた者しか入院の事実は知らないはず。DBのスパイ網は、壊滅しているので、私に関する情報が漏れるはずが無いと言うのに。暫く呆然と考えを巡らせているところへHさんがやって来た。「どう?昨夜は眠れた?結局、注射だったけど?」少し表情が冴えないところを見るとHさんも?と思っていると「私もやられました。看護師長に!」と言って、ようやく笑顔に変わった。「あれは、禁じ手だよね。でも、貴方はやはり男の子だったよ。私を庇って前に出たもの。それは女子としては、認めるよ!でも、もういいよ!貴方は患者さんなんだから、私達看護師を信じてね。守って行くのもこっちの仕事なんだから!分かったかな?!」確かにHさんの言う通りだ。「はい、お任せします」と私は頭を下げた。「分かれば宜しい!」また、看護師長さんの来訪であった。「2人とも今後は慎む様に!」またまた頭を下げて恐縮していると、看護師長さんが私に「今、Iさんとお話しをして、会社としての対応をお願いしました。早急に手立てを考えるそうですが、貴方に聞きたい事がある様なの。電話してもらえますか?」と言って来た。「構いませんが、談話室で携帯を使ってもいいですか?」と聞くと「そうしてくれると助かります。午後4時以降にかけて欲しいと言ってましたから、時間になったらHさんに車椅子で送って貰って下さい。Hさんは監視を怠らない事。貴方はなるべく早く済ませる事を忘れないで。向こうも困惑している様子でしたが、なるべく早く手を講じてもらえる様に、貴方からもお願いして置いて!」私は恐る恐る聴いた「私は、転院しなくてはならないのでしょうか?」「そんな心配は無用よ!Hさんも言ってましたけど、私達看護師は全力で貴方を含む患者さん達全員を守り抜くわ!余計な心配はしなくていいから、安心なさい!」さっきの話し聞かれていた様だ。「さあ、貴方は少しでも体力を温存して。電話で話すことだって疲れるものよ」カーテンが閉じられ、私はベッドに横たわって目を閉じ大きく息をはいた。DBが誰から情報を手に入れたのだろか?少なくとも私の入院について知っているのは4人。他の部課長クラスは関知すらしてはいないはずだ。誰だ?誰が嗅ぎつけたのだ?不意にある人物が思い浮かんだ。事業部の「陰の帝王」と呼ばれ、1年半前までは総務部に居た男。「K帝」と恐れられているDBの盟友。「まさか!」鳥肌が立ったが、9分9厘間違いはなさそうだ。Kならばあらゆるコネを通じて、極秘情報を集められる。何しろKに盾を突いたが為に、閑職に落とされた者は数知れないし、本社や営業にも顔が効く。DBが窮地に立っている今、裏から援護が出来るのはKだけだ。私は、知らない間に「K帝」を敵に回して居たのだ。事業所長と言えどもKに盾を突く事は「タブー」と知っている。あまりにも「手にしている権力」が強大だからだ。恐らくKの部下達も今回の「侵入事件」に関わっているだろう。そうでなくては、DBを警備員が取り逃がすはずが無い。Kと言う「強大な壁」が私を踏み潰しに動いている。そう認識した今、私は音を立てて血の気が引いて行くのを感じ、底知れぬ恐怖を覚えたのだった。