limited express NANKI-1号の独り言

折々の話題や国内外の出来事・自身の過去について、語り綴ります。
たまに、写真も掲載中。本日、天気晴朗ナレドモ波高シ

ミスター  DB ㉝

2018年08月21日 08時25分28秒 | 日記
週が空けて2日目、K とX が接触を図っていた。

「X、どうだった?看護士ルートで成果はあったか?」Kはせかせかと訪ねる。「ありました!友達の友達が大学病院に勤務している事が判明しました!」Xもやや興奮気味に答えた。「よし!でかした❗それでヤツの転院先の情報は手に入りそうか?」すかさずKが誰何する。「ええ、でも1つ問題がありまして、壁に突き当たってるんです」Xの声が急にトーンダウンした。「なるほど、そうか、お前揺すられたな?看護士に。実弾をよこせか?」Kは鼻で笑う。「その通りです。情報が欲しければ15万円を出せ‼️と言うのです。足下を見られまして。申し訳ありません」Xは悔しさを隠さない。「安心しろ!X、俺は15万円を払う!何としても情報を手に入れるんだ!」Kは即断した。Xは腰を抜かさんばかりに驚いた!Kは実弾を用意すると言うのだ。「X、何の当てもなく探し回ったとすればだ、同じ位のカネは当たり前にかかるよ。それでヤツの所在がわからなかったとすれば、ドブに財布を捨てるに等しい。今、実弾を用意してヤツの所在が確実に分かるなら、カネと時間と手間が省ける以上の効果がある!看護士だって危ない橋を渡るのだから、この位は吹っ掛けてくるさ。俺は20万円と踏んでいた。処が15万円で済むんだろう?上出来だ!」Kはほくそ笑みながらXをなだめた。ついに手掛かりを掴んだのだ。後は偵察と実行計画を練ればいい。「実弾の送金は私がやります。口座も確認してありますから」Xが言うと「分かってるじゃないか❗俺はあくまで黒子でなけりゃならん。だから記録に残るのは避ける必要がある!実弾の送金はお前に任す。指定日は何時だ?」Kはまだ気付いてもいなかったが、用心する気配は見せた。「明後日です」とXが答えると「明日の帰りに俺の家へ来い、実弾と別の新兵器を渡す!それでだな、X、お前を見込んでもう一つ任務を実行して貰いたい!かなり難しいが、俺の新兵器があれば充分に実行可能だ!」Xは「何をするんです?」とKに聞いた。「ヤツの最近の病状を知りたい。どの程度息を吹き返しているか?だ。それが分かれば、こちらも打つ手が広くなる。恐らく、Y副社長は定期的にヤツの病状を確認しているはずだ。そのコピーは、工場に送られて総合保全課のi が保管しているだろう。情報を共有するためにな。そいつを盗み出すんだ!」「しかし、総務への侵入は余程の理由がなくては、困難です。ましてや、書類を持ち出すとすれば、人目を避ける事や鍵をこじ開ける策略がなくては、実行出来ません。それとも何か手があるんですか?」X は凍る思いで問い返した。工場の心臓へ侵入する術などあると言うのか?「俺の新兵器さえあれば何処へでも侵入可能だ!お前、T を知ってるな?今日も納期について詰めをしただろう?T を操ればいいんだ。俺はT を操る操縦装置をお前に渡す。T が見れば何も言わずして、こちらの言うことを聞くはずだ!」Kは自信満々であった。それもそのはず、「操縦装置」とは個人の弱みや失敗や弱点を纏めた「揺すり教本」であった。Kはこれらを駆使して人にタカり、脅し、屈服させてのしあがって行ったのだ。こうした「ネタ」が今、X の手に渡ろうとしているのだ。悪用すれば、X がK2世となり、悪行が蔓延る恐ろしい事態になる。X は「分かりました。T を操って任務を果たして御覧に入れましょう❗お任せ下さい!」と静かに答えた。「よし!任せたぞ!本当ならDB が受け継ぐモノだったが、今となっては後継者はX お前しかおらん!俺の新兵器を駆使して天下を取るがいい!そして我らの復権を図れ‼️」Kは高揚しながら吠えた。X は電話の向こうでガッツポーズを取っていた。「さて、明日、必要なモノを渡す。分かってるだろうが、背中にはくれぐれも気をつけて来い!2週間以内に俺の必要なモノを揃えろ!詳しくは来た時に補足する。ではX 待っているぞ!」「はっ、心得ました!」X は電話を切ると同時に大きなため息を着いた。「何処まで悪事に手を染めればいいんだ?何だかんだ言っても俺はKの駒からは抜けられない。だが、他の仲間達はこれ以上深入りさせないで、手を引かせよう。犠牲者は少ないに越した事はないからな」X の偽らざる本音だった。

K は庭の池のほとりで携帯を操って、DB に知らせようと躍起になっていた。「吉報だ。早く知らせて置かねば!」だが、いくらやってもDB に通じない。「海外へ飛んだか?DB も気の毒だ。だが、それも間もなく終わる!我らが再び栄光を取り戻し、全てが思うがままになる日は目前に見えたのだ!最後に笑うのは俺たちだ‼️」K は勝った事を確信し、1人感慨にふけり、余韻に酔っていた。

それから3日後、工場の最も奥にある「所長専用応接室」に、複数のメンバーが集まっていた。電話会議システムを通じてY副社長も参加していた。初めにK とX の会話が流れて、最新のK の動向を確認した上でi 氏がX に話しかけた。「看護士ルートは、振り込みをしたのか?それとK がよこした新兵器とやらは?」X は神妙に「振り込みはやってません。大学病院の看護士さんとも連絡は取ってないんです。あれは私の出任せでハッタリを掛けただけです。K がよこした実弾と新兵器なるものは、ここにあります」そう言ってX はテーブルの上にK から受け取った物品を並べ、i 氏に差し出した。「そうか、また証拠が増えたな。X よくやった!悪事の片棒を担がせて済まなかったが、君が我慢してくれたお陰で殲滅への歩みが進んだのだよ。感謝する!」電話の向こうからY副社長がX を称え労った。「しかし、2つの文書をK に渡さなくてはなりません。Y副社長、どうやって切り抜けるおつもりですか?」X が不安げに言葉を絞りだした。「ミスターJ 、X へ説明を」i 氏が促した。「X 、君に手渡す予定の文書は、ある意味、本物だ。ただし、作成は私達の仲間が請け負う。Y副社長、A に話は通しました。看護士から手に入れる彼の転院先の情報は、横浜市のZ 病院に関するメモ、総務から手に入れる彼の病状に関する情報は、Z 病院精神科医師からの報告書に決まりました。どちらも法的根拠とはなり得ない、非公式なスタイルにします」ミスターJ はさらりと答えた。「Z 病院か?あそこはよくしっている。毎年、人間ドックを受診しているからな。ミスターJ 、仲間がいるのか?」「ええ、A のご主人が内科部長、ご子息が精神科医として、勤務しています。病棟も閉鎖病棟ですから、申し分なく策を練れます」ミスターJ はさらりと言う。Y 副社長も唸るしかなかった。策略を巡らすには最適な病院だったし、医師2名が協力者である。「ミスターJ 、後は私のさじ加減と言う事だな?」「その通りです。舞台は揃えましたから、存分にされて構いません。A 達も今回に賭けてますから、彼らも全力でサポートしてくれるでしょう」「ミスターJ 、チャンスをありがとう。最高の千秋楽を迎えられそうだ❗その為にはX 、もう一肌脱いで欲しい。K とDB をZ 病院へ向かわせるのだ!これは正義の為の役割だ。さりげなくでいい。K に情報を渡すんだ」Y副社長が改めてX に念を押した。「これが最後だよ。もう、苦しい思いは消えるだろう。お前の手で苦しみを振り払いに行くんだ!後はY 副社長やミスターJ 、私が引き受ける」i氏がX に諭すように 言った。「私と他10名の仲間達は、解放して貰えるんですね?本当に許されるんですね?」X は真剣に聞いた。「今回の働きに免じて、過去は不問にする。地位も回復させる。私が嘘は付かないのは知ってるな?X 安心しろ」Y 副社長が電話の向こうから保証した。「ミスターJ 、K の追跡を頼む。恐らくX から情報を受け取った後はK は単独行動に移るだろう。要所を抑えて私に知らせて欲しい。DB は間もなく帰国させ、休暇を与えて泳がせる。DB の監視はこちらでやるが、K と接触する時期は判断出来ない。そちらからの情報が頼りだ!」「既に鉄のタガを張り巡らしてあります。そちらへ向かった場合は、直ぐに通報しましょう。ヤツは用心はするでしょうが、こちらに包囲されているのは気付いていません。隙は山ほどあります」ミスターJ に続いてi 氏にも指示が飛んだ「K の実弾と新兵器なるモノを届けて貰いたい。週末、横浜へ来れるか?」「用賀に出向く用がありますから、先に伺います。その際に今後のご指示もお聞きしましょう!」「諸君、いよいよ決着の時が来た!ヤツらを殲滅する日は近い!細心の注意を忘れずに、任務を遂行してくれ!勝利は我らの手にある!これが最後の闘いだ‼️」Y 副社長が高らかに宣言し「イエス、サー!」と応接室の皆が応じた。矢は弦を離れた。突き刺さる先には、K 、DB が居る。これが決戦前の最後の謀議だった。