ニュージーランド移住記録「西蘭花通信」

人生の折り返しで選んだ地はニュージーランドでした

十年彗星:楊貴妃になる夏

2002-07-10 | 移住まで
空前の化粧ブームだというのに、最近、化粧を止めました。メークはかれこれ20年間、ずっと続けてきたことなので私にとっては一大事です。正確には基礎化粧を止めたので、アイシャドウやアイラインなどは若干しますが、それもしたりしなかったりでスッピンに眉を描いて、マスカラと口紅だけ塗って出勤することも珍しくなくなりました。

化粧は好きでした。仕事へ行く前の慌しい中、化粧水から始まって最後に香水の一振で終わる一連の作業は、儀式のように毎日欠かさず繰り返されてきました。鏡の中でケからハレへと変わっていく顔は平坦な日々の中でのささやかなメリハリであり、女を感じる時でもあり、家庭から外へと出て行くのに気合いを入れる瞬間でもありました。子どもたちは小さかった頃、鏡に向かっている私を見て平日と週末を区別していたほどです。

でもその儀式を止めました。朝、洗顔したら化粧水もつけずにクリームを塗るだけ。これだったら着替えてもファンデーションが服につくことはないし、午後になって化粧崩れすることもありません。化粧ポーチも持ち歩かないし、化粧をしていた時間で出勤前にパソコンでメールやニュースのチェックができるようになりました。今のように暑ければ好きな時に思いきり顔を洗ってスッキリすることもできます。これはみんな化粧をしないことがなせる業です。そして毎月かなりの出費だった化粧品代が激減しました。

すべては10年に1度、とんでもない贈り物をしてくれる彗星のような友人からのメールで始まりました。
「漢方の化粧品に切り替えたら肌がどんどん白くなり始め、もう気持ち悪くてファンデなんて塗れなくなってしまった」
ということが唐突に書いてあり、化粧をしないで会社に行くなど想像もできなかった私には、何のことやらさっぱりわかりませんでした。でも「肌がどんどん白くなる」という一言には、子どもを出産して以来のシミに悩まされていただけに、大いに心惹かれ何度かメールをやり取りしてみました。

その結果、シンガポール在住の台湾人エステシャンのリリー・ウォンさんが独自に開発した、漢方化粧品がすべての発端だということがわかりました。自身も化粧焼けで悩んでいたリリーさんは中国人の間では最も美人で誉れの高い楊貴妃が使っていた化粧品の研究に取り組み、美肌で知られた彼女が使っていたものを古典文献を基に漢方医と再現したのだそうです。
「そんなバカな~!」
正直言って半信半疑だった私を見透かしたように、友人は前回の猫同様、天空を通り過ぎながらリリーさんの化粧品一式を送り届けてくれました。

友人に全幅の信頼を寄せる私は試してみることに。化粧を落とし、全く泡立たないカレー粉と亀ゼリーを足して2で割ったような匂いがする洗顔粉でスクラブするように洗顔した後は、かなりまったりした専用クリームを塗るだけ。あとは日焼け止め、下地、ファンデを除くどんな化粧品も使っていいそうです。夜は虫干し前の着物のような匂いがする真緑色の水溶き粉パックを毎晩する以外、やはり洗顔+同じクリームのみの超カンタンさ。全部で洗顔、クリーム、パックの3ステップしかないのです。

私は妊娠以降ホルモンバランスの変調で、頬に横に広がる形で薄く広くシミができてしまいました。色といい、場所といい、日焼け止めを塗らないで日焼けした感じにそっくりで結構健康的に見えたりもし、知らない人には、
「アレ?ゴルフでも行って来たの?」
と言われます。陽に当たると濃くなるし、2人目の妊娠+出産で更に広がって色も一段と濃くなってしまいました。カバー力のあるファンデで隠し、プチ整形以外のほとんどのことを試してもいたのですが目立った効果はなく、かれこれ8年の付き合いでもあり半分諦めかけていた矢先でした。ですから「どんどん白くなる」の一言に賭けてみることにしました。

結果はビックリするくらい良好です。シミはもちろんわかりますが、スッピンでも生きられるようになりました。回りの人からも、
「ずい分薄くなったね。」
と驚かれるほどです。何よりも化粧をしない気持ち良さを知ってしまい、ファンデの息苦しさには戻れません。リリーさんと友人に心から感謝しながら、今日も鏡に向かい、「人を幸せにしたい」というリリーさんの心意気に心底感服しています。今年は楊貴妃が大好きだったというライチが空前の豊作で驚くほど安く出回っていますが、その甘酸っぱさに舌鼓を打ちながら"楊貴妃になる夏"本番です。


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「マヨネーズ」 私の"十年彗星"ことシンガポール在住(当時)の久保優子は、確かちょっと前に、
「"本書いたんだ~”と言ってたような?」
と思って、名前を検索してみると、ヒットするする(笑)

親しいはずの友人の近況を検索して知る昨今。しかし、私たちの間柄は十年一日。相変わらずの猫談義に花が咲き、仕事だの夢だのの話はほとんどなし。
「NZに移住しようと思ってるの。」
と言うと、
「あそこにはイチジク農園をやってる友人がいる。」
と明後日の方向からの返事が届く始末で、天晴、天晴。


後日談「ふたこと、みこと」(2021年1月):
リリーさんのリリアンナはいまだに愛用していて、肌の調子は使い始めた20年前より、冗談ではなく今の方が断然好調で、目の下の日焼け風のシミもなくなりました。リリーさんは一生の恩人ですが、いまだにお会いしたことがなく、化粧品を紹介した友人たちの方がアメリカだの、香港だのから会いに行っています(笑)

紹介された頃のパッケージ。
パッケージと値段の格差にも
効果を確信する思いでした。


十年彗星からは、その10年後になんとフリーランスの仕事も紹介されましたが、ちょうどセミリタイアして投資に力を入れ始めるタイミングだったので、贈り物を受け取る機会がありませんでした。

そう言っているうちに、来年は4回目の10年目。雲の合間から何か落ちて来るかな