先日の将棋の藤井聡太七段の活躍や、昨日のラグビー 福岡堅樹選手の話は、このコロナ禍の気持ちを元気づけてくれます。
さて、本日のコラムは、その福岡堅樹選手の話であります。心打たれます。
(本文)
◆近代文学に知らない字句を教わることが多い。詩人・萩原朔太郎の名高い随筆『冬の情緒』では1行目から辞書のお世話になった。
◆冬を<人間の果敢ない孤独さを思はせる>と書き出すのだが、寡聞にして<果敢ない>を「かかんない」と読んでしまった。どこか変なので調べてみると、「はかない」と読むことを知った。
◆なるほど人は果敢さを失うから、はかない思いをするのかな。と、勝手に解釈したのを思い出しつつ、ラグビーの福岡堅樹選手(27)の進路の報を聞いた。果敢な挑戦だろう。来春の医学部進学を決意したという。
◆現役は続けるも五輪の7人制代表は断念する。少し残念だが、ラグビーも夢、医師となりケガをした人に寄り添うのも夢と、ひたむきに目標に向かう姿勢にうたれる。ここ何年もプロとしてリーグ出場や練習を続けながら、受験勉強にも手を抜かなかったそうだ。秋のW杯で見せたトライのように、大股でぐいぐいと突き進んでもらいたい。
◆「はかない」にはあろうことか、人と夢を並んで立たせる<儚い>もある。この人のまっすぐな思いは語意を逆さまにしてくれそうな気がする。
【読売新聞 編集手帳 2020年(令和2年)6月16日】より