ギャンジャン

人は独りでは生きてゆけないのに人は独りで死んでゆく。刹那い一瞬に人は何を求める?

競馬を教えた罪な奴

2006-01-12 05:55:55 | 競馬ジャングル

私に競馬を教えてくれたOくん。
2つ上の先輩だけどそう呼んでいた。
Oくんはテニスでインターハイの出場経験もあり、大学でキャプテンをやってたスポーツ万能の人。
一流企業の高給取りで、当時馬券もかなりうまかった。
あのころの競馬は岡部を中心に回っていた。
Oくんは「来る岡部」と「来ない岡部」の使い分けが上手にできていた。
Oくんがいらないと言った断然人気の岡部はよく馬群に沈んでいた。
Oくんは給料と競馬とでしっかり貯めこんでリッチな生活を送っていた。
当時世田谷で一軒家を借りていた。
競馬を知らない私はOくんの言うとおりに買っていた。
私は競馬を始めたその日に50万も勝ってしまった。
今思えばそんな間違いはなかったほうがよかった。

そして時は流れた。 

好調期間が2年くらい続いたOくんにも反動の影が忍び寄る。
Oくんは会社を辞めていた。
ナリタブライアンのころになるとOくんはすっかり馬券が下手になっていた。
時として馬券には経験や知識は関係ない。
要らぬ経験と要らぬ知識が馬券検討の邪魔をする。

そしてふたたび Time goes by.

ノミ屋に支払うお金を知り合いの金融業者に立て替えてもらってからというものOくんはプツリと競馬をやめた。
アグネスタキオンのころだっただろうか。
予想はしても馬券は買わなくなったらしい。
ずるいよOくん、人に競馬を教えておきながら自分だけ競馬から足を洗って。

武豊なんて知らなくてもよかった。
ディープインパクトなんて知らなくてもよかった。
その時間を違うことに使うことができたなら…
そのお金を違うことに使うことができたなら…

ここでお話は終わらない。

現在Oくんは塀の中にいる。
大久保で外国人からクスリを買っているところを現行犯逮捕された。
初犯ではなかったらしい。
そういえばあのころの妙なテンション、今思えばなるほど。
競馬をやめた代わりに違うレールへと走り出していた。
もうOくんとは2年以上も連絡が取れていない。

一度覚えたものを削除するのは難しい。
私はOくんが教えてくれた競馬を今も続けている。
競馬…
時に悲痛、悲哀、挫折、失望…
そこにはロマンはない。

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