藤沢という男はゼンノロブロイに冷たい。
3歳神戸新聞杯まではシンボリクリスエスと同じような使い方をされていたのに、その後のローテーションが違う。
シンボリクリスエスは天皇賞秋へ。ゼンノロブロイは菊花賞へ。
藤沢は菊花賞や天皇賞春のような長距離レースを特に嫌う。
菊花賞の距離短縮を特に訴えているのが藤沢だ。
それなのにクリスエスと振り分けるためにロブロイは菊花賞にまわされたのだ。
「ロブロイは長距離適正がある」と言い訳を放ちながら。
クリスエスが天皇賞秋1着、JC3着のあとの有馬記念で「国内に敵なし」と見るやロブロイを同レースで対戦させる。
藤沢はクリスエスに勝たせたかったことは容易に理解できる。
クリスエス鞍上はJC雪辱に燃える世界のペリエ、ロブロイ鞍上はG1では存在感もない柴田善臣。
藤沢が望む最高の結末が用意されるのは周知のとおりである。
クリスエスは有馬記念で有終の美を飾って引退する。
藤沢の看板となったロブロイは古馬になって春は迷走を続ける。
初戦の日経賞を断然人気で落とし、2戦目天皇賞春はイングランディーレに大逃げを決められる。
続く宝塚記念では鞍上はG1連敗トンネルから抜け出せない田中勝ハルウララとコロコロ替わって、ロブロイのハートをつかめない。
ロブロイのハートをしっかりとつかまえたのは世界のペリエだ。
秋のG1、3連勝は彼の手腕によるところが大きい。
それにしてもロブロイは一流馬なのによく鞍上が替わる。
藤沢のG1馬のなかで一番賞金を稼いでるのに一番使われ方が雑だ。
藤沢という男はゼンノロブロイに冷たい。
ちなみに藤沢の牡馬G1馬の鞍上を調べてみると、
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バブルガムフェロー(95朝日杯、96天皇賞秋)
岡部、蛯名
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タイキシャトル(97,98マイルCS、97スプリンターズS、98安田記念)
岡部、横山典
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シンボリクリスエス(02,03天皇賞秋、02,03有馬記念)
岡部、横山典、武豊、ペリエ、デザーモ
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ゼンノロブロイ(04天皇賞秋、JC、有馬記念)
横山典、デザーモ、ペリエ、柴田善、オリヴァ、田中勝、岡部、武豊
一流馬はひとりの一流騎手に一貫して育てられるのにこの馬には当てはまらない。
やっとペリエという最高のパートナーを得たのにその手を離れてしまう。
同一年の古馬王道G1、3連勝などそうそうお目にかかれない。
ロブロイはクリスエスが勝てなかった、そして藤沢が一番勝ちたいと公言しているJCも勝ったのだ。
藤沢はよく「最高の状態で繁殖にあげてやりたい」と言っている。
だが有馬で有終の美を飾ったクリスエスがたどった道はロブロイには許されなかった。
藤沢の言葉とは矛盾して現役を続行するのである。
藤沢の牡馬G1馬で5歳まで現役を続けた馬は他にはいない。
藤沢という男はゼンノロブロイに冷たい。
春の宝塚記念をデザーモで落としてから転落のシナリオに黄色信号が点った。
一度錆び付いた歯車はなかなか修理がきかない。
最高の運転手を失って、タイヤも磨り減り、エンジンの機能も低下したロブロイに最高のパフォーマンスは望めない。
もはや引退のときを間違った。
有馬記念で復活でもしない限り、ロブロイの物語は尻すぼみになるだろう。