いよいよ裏街道に入ります。
第2 公共事業を増やす本当の理由(裏街道)
1 破綻したケインズ理論
「景気が悪いから公共事業」といえば,それだけで議会もスルーパスで事業予算が付く傾向にあります。
しかし,果たしてケインズ理論は本当に景気浮揚策の万能薬でしょうか。
実は,経済学者の中から「ケインズ理論はもはや通用しない」という見解が出始めています。
その理由はいろいろあるので詳細は省略しますが,簡単に言えば「市場に注入できるお金には限界がある」ことと,「借金は数年ですべて返済できる前提の理論である」こと,「雇用は維持されて失業者減少が継続することが前提にある」などといわれています。
ケインズ理論の真偽についてはここではテーマ違いなのであえて突っ込みませんが,少なくとも言えること,それは「なんでもかんでも公共事業をやれば景気が良くなる」という考え方はもはや過去の遺物であるということです。
2 不景気にお金がほしいのは業者の方
では,実際不景気の時に一番困っているのはどこでしょうか。これは紛れもなく業者です。公共事業以外の投資が冷え込む以上,特に建築土木関係は大幅に受注が減りますので,会社の資金繰りが苦しくなります。
するとどこからお金をもらうかといえば,「税金」しかないのです。
また,「夢のキャッシュバックシステム」により,業者の資金繰りが苦しくなれば,議員らの取り分も当然減り,自分達の資金繰りも困ってしまいます。だからこそ,「景気対策」を冠にして公共事業を増やすのです。そうして,税金から資金を得るのです。
彼らが臨むことは,「日本経済の回復」ではなく,「自分経済の回復」に過ぎないのです。
3 地元企業保護政策の功罪
地方自治体の事業の場合は,景気対策にプラスして「地元企業の振興」がありますが,これが本当に地元企業振興ということで地域の活性化になるのでしょうか。
結論から言えば,これこそまさに今までの「夢のキャッシュバックシステム」を寄り強く押し進めるための方便にすぎません。言うなれば,「役所公認談合」なのです。
なぜでしょうか。理由は単純で,「一部の企業しか儲からない」,「一部の業種しか儲からない」ということと,「実際に税金として戻ってくるお金はほとんどなく,むしろ流出するだけ」だからです。
地元企業振興であれば,ある程度くまなく事業を行うべきであるところ,実際は建築土木関係に限られてしまいます。のみならず,先に説明した入札制度(しかも地元振興目的の場合は指名入札になる)ため,完全に「息のかかった業者」しか事業に参加できないのです。当然儲かるのはその企業だけ。さらに,その企業が儲かった位で町全体の景気を良くすることは無理です。なぜなら,その企業が払うお金の大半は「人件費」と「材料費」であるところ,労働者が全員同じ町に在住しているわけではなく,また材料も町内だけですべて調達することは難しいからです。つまり,お金は「流出」するだけなのです。
事業税についても,確かに町に戻る部分もありますが,割合としては僅かです。少なくとも「実質安い」と豪語するほどの納税額にはならないのです。
以上のように,地域振興策としての地元企業保護政策は,実際は「首長を応援すれば儲かるよ」というアドバルーンと反対派に対する脅し材料に過ぎないのです。
4 孫請け企業の悲惨さ
一方で,孫請け企業たる小さな会社や個人経営の場合はどうでしょうか。逆に,これはかなり悲惨です。簡単に言えば,「親会社のパシリ」になってしまい,しかもそれを断れない構造になっているのです。
まず,以前説明したとおり「ピンハネ」があるため,会社の儲けはほとんどありません。しかし,「もっとお金をくれ」と下請け企業や大手企業に言おうものなら,「もう仕事あげない」の一言で終わってしまいます。その瞬間,会社は倒産です。
「え,他の仕事探せば」と言うのは簡単ですが,実はそれもできない事情があります。続にいう「爆弾手形」を振り出しているからです。ここの構造を説明するのは難しいので,ごく簡単に言えば,「期限までにキャッシュを銀行に払わないと手形が不渡りになり倒産」という手形を下請け企業等に振り出しているのです。いわば「手形を人質」にされているため,何も言えないのです。ひどい事例としては,「金額白地手形」まで振り出させることもあるようです。これは「無制限保証」をしたようなものです。
したがって,安いお金で働くだけではなく,親会社の言いなりにいろいろと活動せざるを得ないのです。もちろん,親会社の支持している首長や議員がこけると,自分達の生活も一気に破綻してしまうため,必要に迫られて選挙の時の桃太郎の動員に応じるなどして,実質的実働部隊を買って出るのです。
それだけやっても,いざとなればトカゲのしっぽ切りの対象になるだけです。
このような「負のスパイラル」を抱えている以上,この部分を何とか救済してもっと自由な経済活動を確保する道を考えない限り,この大きな裏街道はなくならないのです。
第3 本日のまとめ
ケインズ理論を理由に公共事業を増やしますが,実際は景気対策としての効果は薄く,結局は自分達だけが儲かるための構造になっているに過ぎません。
景気対策事業という冠を付けた場合,果たして本当にそれで景気が良くなるのか,客観的な資料に基づいて具体的な説明を議会等に行い,議会もそれを真剣に吟味するという態勢が求められます。
同様に,地元企業振興策についても,それによる経済効果がどの程度あるのか,ある程度まんべんなく振興することができるのかなどについてしっかり説明する必要があります。
「景気対策」の言葉にだまされてはいけません。あくまでもつりです。
一方で,セーフティーネットとして,中小企業の「より自由な活動」を支援できるため施策(例えば低利融資や小規模事業の入札など)を検討する必要もあります。
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第2 公共事業を増やす本当の理由(裏街道)
1 破綻したケインズ理論
「景気が悪いから公共事業」といえば,それだけで議会もスルーパスで事業予算が付く傾向にあります。
しかし,果たしてケインズ理論は本当に景気浮揚策の万能薬でしょうか。
実は,経済学者の中から「ケインズ理論はもはや通用しない」という見解が出始めています。
その理由はいろいろあるので詳細は省略しますが,簡単に言えば「市場に注入できるお金には限界がある」ことと,「借金は数年ですべて返済できる前提の理論である」こと,「雇用は維持されて失業者減少が継続することが前提にある」などといわれています。
ケインズ理論の真偽についてはここではテーマ違いなのであえて突っ込みませんが,少なくとも言えること,それは「なんでもかんでも公共事業をやれば景気が良くなる」という考え方はもはや過去の遺物であるということです。
2 不景気にお金がほしいのは業者の方
では,実際不景気の時に一番困っているのはどこでしょうか。これは紛れもなく業者です。公共事業以外の投資が冷え込む以上,特に建築土木関係は大幅に受注が減りますので,会社の資金繰りが苦しくなります。
するとどこからお金をもらうかといえば,「税金」しかないのです。
また,「夢のキャッシュバックシステム」により,業者の資金繰りが苦しくなれば,議員らの取り分も当然減り,自分達の資金繰りも困ってしまいます。だからこそ,「景気対策」を冠にして公共事業を増やすのです。そうして,税金から資金を得るのです。
彼らが臨むことは,「日本経済の回復」ではなく,「自分経済の回復」に過ぎないのです。
3 地元企業保護政策の功罪
地方自治体の事業の場合は,景気対策にプラスして「地元企業の振興」がありますが,これが本当に地元企業振興ということで地域の活性化になるのでしょうか。
結論から言えば,これこそまさに今までの「夢のキャッシュバックシステム」を寄り強く押し進めるための方便にすぎません。言うなれば,「役所公認談合」なのです。
なぜでしょうか。理由は単純で,「一部の企業しか儲からない」,「一部の業種しか儲からない」ということと,「実際に税金として戻ってくるお金はほとんどなく,むしろ流出するだけ」だからです。
地元企業振興であれば,ある程度くまなく事業を行うべきであるところ,実際は建築土木関係に限られてしまいます。のみならず,先に説明した入札制度(しかも地元振興目的の場合は指名入札になる)ため,完全に「息のかかった業者」しか事業に参加できないのです。当然儲かるのはその企業だけ。さらに,その企業が儲かった位で町全体の景気を良くすることは無理です。なぜなら,その企業が払うお金の大半は「人件費」と「材料費」であるところ,労働者が全員同じ町に在住しているわけではなく,また材料も町内だけですべて調達することは難しいからです。つまり,お金は「流出」するだけなのです。
事業税についても,確かに町に戻る部分もありますが,割合としては僅かです。少なくとも「実質安い」と豪語するほどの納税額にはならないのです。
以上のように,地域振興策としての地元企業保護政策は,実際は「首長を応援すれば儲かるよ」というアドバルーンと反対派に対する脅し材料に過ぎないのです。
4 孫請け企業の悲惨さ
一方で,孫請け企業たる小さな会社や個人経営の場合はどうでしょうか。逆に,これはかなり悲惨です。簡単に言えば,「親会社のパシリ」になってしまい,しかもそれを断れない構造になっているのです。
まず,以前説明したとおり「ピンハネ」があるため,会社の儲けはほとんどありません。しかし,「もっとお金をくれ」と下請け企業や大手企業に言おうものなら,「もう仕事あげない」の一言で終わってしまいます。その瞬間,会社は倒産です。
「え,他の仕事探せば」と言うのは簡単ですが,実はそれもできない事情があります。続にいう「爆弾手形」を振り出しているからです。ここの構造を説明するのは難しいので,ごく簡単に言えば,「期限までにキャッシュを銀行に払わないと手形が不渡りになり倒産」という手形を下請け企業等に振り出しているのです。いわば「手形を人質」にされているため,何も言えないのです。ひどい事例としては,「金額白地手形」まで振り出させることもあるようです。これは「無制限保証」をしたようなものです。
したがって,安いお金で働くだけではなく,親会社の言いなりにいろいろと活動せざるを得ないのです。もちろん,親会社の支持している首長や議員がこけると,自分達の生活も一気に破綻してしまうため,必要に迫られて選挙の時の桃太郎の動員に応じるなどして,実質的実働部隊を買って出るのです。
それだけやっても,いざとなればトカゲのしっぽ切りの対象になるだけです。
このような「負のスパイラル」を抱えている以上,この部分を何とか救済してもっと自由な経済活動を確保する道を考えない限り,この大きな裏街道はなくならないのです。
第3 本日のまとめ
ケインズ理論を理由に公共事業を増やしますが,実際は景気対策としての効果は薄く,結局は自分達だけが儲かるための構造になっているに過ぎません。
景気対策事業という冠を付けた場合,果たして本当にそれで景気が良くなるのか,客観的な資料に基づいて具体的な説明を議会等に行い,議会もそれを真剣に吟味するという態勢が求められます。
同様に,地元企業振興策についても,それによる経済効果がどの程度あるのか,ある程度まんべんなく振興することができるのかなどについてしっかり説明する必要があります。
「景気対策」の言葉にだまされてはいけません。あくまでもつりです。
一方で,セーフティーネットとして,中小企業の「より自由な活動」を支援できるため施策(例えば低利融資や小規模事業の入札など)を検討する必要もあります。
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民間企業だって,普通は「需要がどの程度あるかどうか」という基本調査をした上で商品化するわけですから,公共事業だって同じ理屈になるはずです。景気対策だからなんでもあり,というのは完全にまやかしです。
グルーグマンは,パパ・ブッシュ時代に「反ブッシュ」として経済政策批判を繰り広げていましたね。
また、レーガン=サッチャー改革時代からすでに、海外ではケインジアンが影響力を落としていました。
だからこそグルーグマンなんかがいろいろと一般市民向けに社会主義的な政策が巻き返せるようにという方向性の一般向け本を出したりして必死になっている、という現実があるわけです。
日本では化石の宇沢弘文が「新古典派絶対阻止」をとなえて組織的に妨害工作をしたため遅れましたが。