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第2 新規参入を困難にしていること
1 現状の問題点
(1) 供託金制度
現在,立候補するためには,供託金が必要です。金額は選挙ごとに異なり,市議会議員では30万円であるが,衆議院議員では300万円が必要となります。しかも,法定得票数(有効投票数の1割程度ですが,正しくは細かく定められています)を得なければ,この金額は没収されてしまいます。
したがって,仮に自分が衆議院議員に立候補したいと思った場合,まず無条件に300万円は必要となります。逆に言うと,
このお金が用意できない人は,被選挙権は奪われたに等しいことになります。
(2) 選挙運動と政治活動と事前運動の境界
前回も書きましたが,選挙の公正を図るため,事前運動は禁止されています。でも,今毎日テレビで各党候補者が出ていますね。
実は,これは事前運動ではなく「政治活動」なんです。
そして,現職の議員であれば,政治活動とは日常の活動とほぼ一致するため,選挙公示直前までかなり自由にできます(もちろん,投票よろしくとか次も立候補しますとか言うことは事前運動になりますが。)。
一方,新人候補者の場合,政党に所属していればまだ政党の活動という名目で政治活動ができます。しかし,
完全な無所属の場合,政治活動と事前運動の境界線が極めてシビアになってきます。例えば,たすきに名前を書いて演説すれば,売名行為となり「事前運動」となり得ます。また,演説やビラの中でも「今度立候補します」とか「選挙の時はよろしく」などといっても,それは「事前運動」です。
つまり,
新人候補の場合,政策(自分の信念)だけを淡々と書いたビラを配り,駅前などでその思いを淡々と語ることぐらいしかできません。組織がためだって,立候補しますといえない以上,かなり難しいことになります。
(3) 政党本位制選挙
これは,国政選挙のみの話ですが,国会議員が5人以上所属している政治団体は「政党」となり,選挙区と比例区との重複立候補(衆議院のみ),マニフェスト等ビラ配布枠の拡大,政見放送が候補者と政党のそれぞれ行えることなど政党にとって大変有利な状況になります(だから,最近は新党ブームになっていると思われます。)。つまり,
政党所属議員と無所属議員とでは,選挙の公正という土俵には既に乗っていないことになります。
2 なぜこのような制度になっているのか
(1)については,
冷やかし候補の防止にあると説明しています。つまり,立候補者に対する選挙費用の公費負担や,選挙事務にかかる費用が膨大であることから,冷やかしを防ぐことでそれらの費用や手間を最小限にするという狙いがあるそうです。
しかし,公費負担については,一定得票に満たない,または一定の活動をしていない者には助成しないなどとすることで対応可能です。また,
候補者増大による事務量の増加は,役所の論理であって,それがために立候補の自由が制約されるのは本末転倒です。
ちなみに,シュワちゃんが立候補したカリフォルニア州知事選挙では特に制約がないことから,200人以上も立候補者が出ました。これをどう評価するかはいろいろ意見があるところですが,少なくともカリフォルニア州は,この事務もしっかりこなしています。
(2)については,
事前運動を認めると選挙のための費用がかかり,金のある候補者が有利になるという選挙の公正という問題にあると説明されています。
確かに,無条件に事前運動を認めると,実弾(資金)のある候補者が絶対的に有利になります。20年位前までの選挙では,まさに事実上の事前運動がかなり容認されていたことから,実弾戦が普通に行われており,問題となりました。
しかし,実弾戦をおそれるがために,新人候補者の参入を抑制するようなことがあっては,まさに新規参入を阻害することになりかねません。
弊害を考慮しつつ,やはり新規参入の道を設ける必要があるでしょう。
そもそも,
事前運動と政治活動の境界線が今かなり曖昧です。もし事前運動を禁止するのであれば,
この境界線をより明確かつ画一的なものとするべきです(今,両者の判断基準は,選挙管理委員会に委ねられているところが多いです。)。
(3)については,
最高裁では,重複立候補制度は選挙制度を決める立法府の裁量に委ねられるとしてこれを合憲としています。
確かに,小選挙区の問題として死票(当選した人の票より,他の人を支持した票の合計数の方が多いことがある)があることから,その欠点を補うために比例制度を導入しているため,これ自体にはまあ意見はあるものの,一応制度として認められるのかなあと思います。
しかし,重複立候補の場合,その選挙区から信任を得られなかったのに,国民の代表になってしまうというものです。
これが本当に国民の代表といえるのか,疑問があります。
また,政党本位選挙についても,今日の国会は政党政治になっていることから,必然的に政党本位選挙になるようですが,そうであるとしても,
無所属または政党に満たないような政治団体所属議員が,国会に新規参入したいということは当然考えられるし,有権者も既存政党ではなく,そのような者を選ぼうという発想だって当然あり得るわけです。
とすれば,少なくとも土俵は同じにするべきではないでしょうか。
3 どうしたらよいか
私はこのように考えます。
(1) 供託金制度は廃止する。その代わり,選挙運動費用の公費負担基準を現状以上に厳しくする。
(2) 選挙公示6ヶ月前に限り,事前運動を原則として認める。ただし,運動の内容は,演説,ビラ配り(インターネットを含む),集会に限るものとする。
(3) 重複立候補制度を廃止する。また,政党以外でも,マニフェストなどビラの配布を自由にする。
4 理由
(1)については,
立候補の自由をある程度保証するべきであると考えたからです。その代わり,冷やかし候補に対する制裁として,選挙運動費用を公費負担しなければ,無駄な税金は支払わなくて済みます。
(2)については,事前運動と政治活動のボーダーが曖昧になっている状況下においては,これを明確にしてもたいした意味はなく、むしろ
事前運動を正当化した方がよいと考えたからです。ただし,これにより選挙運動のためにお金がかかるという問題点があることは事実なので,
政治活動と同視できるような内容のものに限定することにします。
(3)については,
政党所属の有無に関係なく,同じ土俵で選挙が戦えるようにするために,条件を統一化するべきと考えました。
以上になります。長々と書きましたが,当然ですが,これが絶対正しいとはいえませんし,他の意見をお持ちの方ももちろん沢山いらっしゃると思います。様々なご意見ご批判などをお待ちいたします。
ただ,
少なくとも,公職選挙法(選挙制度)が今のままでよいとはいえないぞ,ということだけでも認識していただければ幸いです。
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