製紙業界全体でのいわゆる「再生紙偽装問題」については,案の定というか予想どおり,様々な反応が出始めました。そして,最も多い反応が,やはり予想どおり「
再生紙は実は環境に悪い」というものでした。
私は,今回の問題については,以前の記事でも書いたとおり,
別に「再生紙が絶対的にすばらしいもの」とも「再生紙が環境に優しい」とも全く思っていません。今回の問題は,あくまでも「
看板のすげ替えという行為が卑劣でけしからん」と考えているだけです。しかし,懸念したとおり,この問題と環境問題をごっちゃにして賛否を考える方々が多いように感じました。
そこで,ここでは製紙業界に関係なく,いわゆる環境ビジネス自体に問題点を絞って,事故の見解を述べたいと思います。
なお,大前提ですが,私は
「地球環境のためにリサイクルを行う」ということそれ自体は賛成です。決して,環境ビジネスすべてを全否定するつもりは全くありませんので,その点はご了承下さい。
1 環境ビジネスはコストがかかる
基本的に,リサイクル産業はどうしてもコストがかかります。それは,大量生産ができないことと,0から作るのではなく,-から作るからです。
例えば,再生紙の場合,パルプから作るのであれば,パルプを溶かせば良いのですが,再生紙の場合,紙を溶かしてからインクなどの汚れを洗浄するという工程を経て初めてスターとラインに乗るため,単純にその分のコストが増えます。
2 良いものは新品に限る
高くても良いものになれば売れますが,当然のことながら,リサイクル商品の方が質が落ちます。汚れなどが絶対的に残ってしまうからです。
つまり,
リサイクル商品や再生品のほとんどが,「高くて質が悪いもの」にならざるを得ないのです。
3 一昔前までは「行政のお仕事」,もちろん例外もあった
つまり
リサイクル産業とは「儲からない仕事」なのです。だから,少し前までは,「行政主体」だったのです。しかも,行政としても,本音は「リサイクルは税金が回収できない赤字事業」であったため,あまりやる気はなかったのです。したがって,分別回収を本格的に始めたのは資源リサイクル法ができた平成12年以降という地域が多いのです。
ただし,
例外的に行政が絡まないリサイクルとしては,「飲料水の瓶」がありました。ビールやコーラなどの飲料水が瓶主体だったこと,酒屋に瓶を持っていくと10円もらえるという時代があったと思います。あれは,
「瓶自体を再利用」だったため,瓶を0から作るよりお得だったという事情があったために,一応ビジネスモデルとして成立していたものでした。特にビールの場合,他のメーカーの瓶を平気で再利用するという協定もできていたため,瓶回収はビジネスサイクルとして成立していたのです。
しかし,瓶の需要が減ったことや瓶自体の単価が安くなったことから,このビジネスサイクルに歪みが発生し,現在ではかなり小さな市場になっています。
4 エコブームから法規制へ
バブル崩壊の頃から,「エコブーム」が始まりました。この動機自体は「地球環境を守る」ということで,非常にすばらしいものでした。
ところが,前述のとおり,
「やればやるほど赤字になる」事業なので,かけ声だけで抜本的取り組みは進みませんでした。ただでさえリストラを進めなければならない経済状態だったために,「地球のことより自分の会社」と考える企業がほとんどだったのです。
そこで,政府は「
資源リサイクル法」を作り,資源の分別回収を義務づけました。さらに,「
グリーン調達法」を制定し,
国や地方自治体に対して納品するものは,「環境に優しいもの」に限るという足かせを作りました。
この足かせ,かなりしんどいもので,これまでの流れで説明すれば
「高くて質の悪い中古品」を役所に納入しなければならず,役所もそれを使用しなければならないということになりました(もちろん,物自体は新品ですし,性能は新品と同じレベルにありますので,そういう意味では中古品という表現は正しいものではありません。)。
5 ビジネスにするために
こうして環境を否が応でもビジネスとして成立させる必要が出てきました。
もちろん,まじめに真剣に取り組んでいる企業が多いことは事実です。
しかし,残念ながら,このような実例が出てきてしまいました。
(1) なんちゃってリサイクル
とある大規模都市では,表面的には「ごみ行政の一環として,徹底したリサイクルを図る体制づくり」をうたい文句ににしながら,
回収段階でせっかく分別したゴミをまとめて回収してしまい,その挙げ句に「そのまま焼却」ということを行っていることが内部告発で暴露されました。
役所としては「経費節減」になるのですが・・。
(2) 不法廃棄
産業廃棄物のリサイクルをうたい文句にしている企業なのに,回収した産廃を野積みにしたり,一般ごみに混ぜて処分するなどの不法投棄が明るみに出たということがありました。
(3) 謎の新組織
リサイクルが事業化しないネックであった「大量生産」を可能にするため,
資源ゴミ回収のための財団法人が相次いでできました。
しかし,
その多くが「お飾り法人」となってしまい,むしろ逆に「中間マージンだけとる」という結果となり,末端業者の収益が逆に減ってしまうという弊害も発生しているようです。そもそも,お飾り法人の場合,天下り先になっている場合も多く,いわば「リサイクルを食い物にしている」という実情にあります。
7 本当に「地球」のため?
環境ビジネスの多くは,コスト面を別にすれば,地球環境に貢献しているといえるでしょう。
しかし,
本当に「地球環境に優しい」といえるか怪しい事業も実は結構あります。
例えば,今話題の「再生紙」などは,コスト以外にも,製造過程での二酸化炭素排出量が多いとか,インク洗浄の際の水や薬品を大量に使う,さらにその排水を処理しなければならないなどから,トータルでどっちが地球環境に優しいのか疑問を呈している方がかなりいます。
また,ペットボトルも同様に,新品の方がトータル的には石油を使わないという見解を発表した方もいます。
他にもいくつかありますが,
環境リサイクルがすべて「地球のため」になっているのかは疑問があると言わざるを得ません。
一方で,
「もっと国あげて環境リサイクルに取り組むべき」という意見もあります。ドイツのゴミ再利用システムがビジネスとしても成立している以上,そのレベルまでは日本でも可能ということのようです。
しかし,ここでは「コスト」を理由に消極的であるというところが本音のところのようです。
結局のところ,
「何が本当に地球を守るか」という議論よりも,「どうすればペイできるか」の議論がメインになっているのが実情です。でも,それは当然かもしれません。企業はボランティア活動ではなく営利活動だからです。また,行政も,コストばかりかかる仕事をすると,「無駄な税金」と揶揄されてしまうため,どうしてもコストを追いかけざるを得なくなります。
「地球環境を守る」と「儲かる」が両立すること,これが本当の「環境ビジネス」になるといえるでしょう。
8 まとめ
私見ですが,
「リサイクルで金儲け」が逆に描けるような構造になればよいのです。
ただ,そこで考えるべきことは,
「環境に優しいといえる客観的データ」に基づくリサイクル方法の確立と,「形式ではなく実質を重視した法規制」が求められると言えるでしょう。
残念ながら,
現状では,「見た目リサイクル」を重視して,実質面が軽視されています。グリーン調達法も形式重視です。ゴミの分別も入口は一生懸命やっていますが,その後がどうなっているのかを真剣に報告している市町村はほとんどないでしょう。
また,
「環境で儲けてはいけない」はナンセンスです。ただし,今の儲け方は,
一部ですが「ハイエナ」がいることが否定できません。これが大きな足かせにもなっています。
こうしたブラックボックスを排除して,「どうどうと環境で儲ける」企業が増えればよいのです。環境ビジネスはまだまだ未知数です。また,これこそベンチャーが参入しやすいエリアです。
まず,門戸を開放することで,「適正な環境ビジネス」が確立されればよいのではないでしょうか。
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