あれは,あれで良いのかなPART2

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気を付けよう,近くに歩くお年寄り

2006年06月18日 19時38分54秒 | 裁判・犯罪
25歳の女性が93歳の女性とがお互い歩行中に出会い頭で衝突して老女が転倒し,それによって股関節骨折の障害を負ったなどを理由にして総額2000万円の損害賠償請求をした訴訟で,東京地裁はこの老女の請求を一部認め,総額780万円を支払う旨判決をしました。

歩行者転倒事故:相手女性に780万円賠償命令 東京地裁-事件:MSN毎日インタラクティブ


これからは歩くときも常に気を付けないとならないなあ

今回の判決では,老女の直接の治療費だけではなく,その後の休業損害や骨折に伴う自宅改造費なども算定の基準としました。一方で,老女側にも歩行時に過失があったということで,3割の過失相殺をして,結果780万円としました。

この判決については,賛否両論があります。もちろん,今後控訴することも予想されることから,確実に確定ではありませんが,一応この地裁判決を前提に検討したいと思います。
まず,この判決に賛成する人は,「交通弱者の救済範囲が拡がる」と専ら被害者の救済を主眼においています。一方,この判決に否定的な人は,「損害の範囲が拡がりすぎたのではないか。」として,治療費など直接の損害に限定するべきであると主張しています。
この議論をする前提として,通常の交通事故,すなわち自動車が歩行者をはねたというケースで考えてみましょう。この場合,現在の損害保険及び裁判実務では,被害者の損害範囲として,直接の治療費はもちろんのこと,休業補償,後遺障害,さらには損害の規模によっては自宅改造費などもすべて損害賠償の範囲内に含みます。そして,これはバリバリのサラリーマンでも,専業主婦でも,さらには余命幾ばくもない老人でも同じです(もちろん,算定基準は違いますが。)。
そして,今回の裁判では,損害の範囲は自動車事故の事例とほとんど同じパターンで認定したことになります。
とすると,この裁判例では,自動車事故も歩行者どおしの事故も基本は同じ,という考え方にあるといえます。もっといえば,「被害者にとっては,何がぶつかってきたのかは関係ない。とにかく被害者救済が第一」という発想に基づいていると言えるでしょう。

この判決,高裁に行った場合はどうなる代わりませんが,少なくとも自転車事故の場合も数千万円の賠償例があること,民法(不法行為法)は被害者救済を主眼においていること等を考えると,大きく代わる可能性は低いのではないかと思います。

したがって,今後私たちが注意しなければならないこと,それは,「自転車はもちろん,歩いているときも人にぶつからないようにしよう」という点です。
駅前で女子高生が走ってきてそのままサラリーマンにぶつかって2人そろって転んでいる光景をたまに見かけますが,これだって,場合によっては女子高生が訴えられる可能性も出てきます。また,メール見ながら歩いていて前の人にぶつかって転ばせてしまった場合も同様の問題が出てきます。もっというと,そういう人をターゲットにした新たな当たり屋が出没しないとも限りません。
とにかく,「歩いているから大丈夫」と油断せず,歩くときもすべてに注意を払うようにしておきましょう。また,こういう場合の損害賠償対策として,損害保険に加入することも必要かもしれません。

しかし,世の中,本当に安全な場所って一体どこなのでしょうか?

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