「じゃあ行ってくるね」
電車通りの左端に車を停めて、妻と二人の子供を降ろした。
コンクリートの路面と線路に灼熱の太陽が降り注いでいた。
日曜日。朝から2キロほど先の門司港にある山城屋デパートまで買い物に出かけた帰りである。
「明日、マージャンやろう」
と先輩の田岡が切り出したのは昨夜のことだった。薬河も大高も賛成した。
田岡と薬河は2つ、大高はひとつ上だった。
「明日は家族と約束がある」
と渋ったが許してもらえるはずがなかった。家族でデパートに買い物に出かける事になっていた。
妻の由布子の顔を思い浮かべた。せめてと夕方からにすることだけは認めさせた。
両手にショッピングした大きな品物を下げて坂道を重たげに上る妻の手に次女の小さな手がすがりつく。長女は妻の荷物に手を添えているが、邪魔になりこそすれ助けにはならない。
照りつける夏の太陽の下を黙々と由布子の後姿に車を降りて、自宅まで一緒に行こうかと迷った。
止めた。
ごまかしのやさしが何になる。自分に腹が立った。
思いっきりアクセルを踏んだ。
涙が停まらなかった。
明世が五歳、智美が二歳の夏であった。
きょうのような青く澄んだ空を見るたびに目頭が熱くなる.
もう数十年も前のことなのに、いつも想い出しては取り返しの日々を後悔する。
電車通りの左端に車を停めて、妻と二人の子供を降ろした。
コンクリートの路面と線路に灼熱の太陽が降り注いでいた。
日曜日。朝から2キロほど先の門司港にある山城屋デパートまで買い物に出かけた帰りである。
「明日、マージャンやろう」
と先輩の田岡が切り出したのは昨夜のことだった。薬河も大高も賛成した。
田岡と薬河は2つ、大高はひとつ上だった。
「明日は家族と約束がある」
と渋ったが許してもらえるはずがなかった。家族でデパートに買い物に出かける事になっていた。
妻の由布子の顔を思い浮かべた。せめてと夕方からにすることだけは認めさせた。
両手にショッピングした大きな品物を下げて坂道を重たげに上る妻の手に次女の小さな手がすがりつく。長女は妻の荷物に手を添えているが、邪魔になりこそすれ助けにはならない。
照りつける夏の太陽の下を黙々と由布子の後姿に車を降りて、自宅まで一緒に行こうかと迷った。
止めた。
ごまかしのやさしが何になる。自分に腹が立った。
思いっきりアクセルを踏んだ。
涙が停まらなかった。
明世が五歳、智美が二歳の夏であった。
きょうのような青く澄んだ空を見るたびに目頭が熱くなる.
もう数十年も前のことなのに、いつも想い出しては取り返しの日々を後悔する。
