おかあさんのうた

どこをどう歩いてきたんだろう。
おかあさん、子供たちよ。
あのぬくもりはもう帰っては来ないのだろうか。

幸せだった。

2011-10-21 00:52:44 | 随筆


コン!コン!

誰?

おれ。

また呑んでる。

うん。

からだこわすわよ。

うん。

明日は早いの?

いつもの時間さ。


子供達は寝た?

何時だと思ってるの。

うん。

ごはん食べる。

お茶漬けがいいや。


し~としたダイニング。

ガスのスイッチを入れる。

カチッ!

テレビのスイッチを入れる。

コマーシャルが流れている。


由布子の後姿が頼りない。

由布子、

どうしているかなあ。



海の光

2011-10-13 09:45:34 | 随筆


「行ってきます!」

裏木戸から義母がモコを抱いて手を振る。

「いってらっしゃーい!」

義母の裾を掴んでアコが手を振る。

由布子とわたしは急ぎ足で坂道を下る。


関門海峡の朝の輝きが目を射る。

小さな谷川の土手に桜の並木の若葉が足元が暗く、ひんやりとした。


右に折れて、小さな橋を渡るとき、もう一度振り返る。

義母の腕の中でモコはてを振っていた。

突然、

アコが身を翻して、裏木戸の中に駆け込んでいくのがみえた。

「アコ、泣いている」

由布子はぽつんとつぶやいた。

おれは何も言わなかった。


ふたりは黙ったままバス停に急いだ。

巌流島が今にも波に呑まれそうに薄く見えていた。

遠い遠い日になってしまった。