みどりきみどり空色

草花とそれにまつわるetc.

デンダ!

2008-11-27 22:24:28 | Weblog
 オシャクジデンダというシダがある。初めて名前を聞いたのは、近頃だ。
えっお尺寺田ダ?摩訶不思議な名前だ。 おしゃく寺という寺のそばで発見されたのかなあなどと貧弱な想像が働くが、突飛な名前のおかげですぐ覚えられた。お社貢寺連朶。
 デンダの名前は字のごとく、連なって垂れる、しだれる。栃とかブナの巨木の苔むした軒先を好んで着生。邪魔しないから住まわせてね。ノキシノブより奥ゆかしいぞ。
 葉っぱのわっさわっさ茂れる頃は十重二十重のゆりかご育ち、そして、冬緑で落葉後、その姿は露見する。巨木の高みで、しっかり貴重な太陽を浴びて光合成。だけど冬は木枯らしもある。分布は北海道~九州中部までといわれるから、ブリザードにも豪雪にも耐えていくのだ。
 思いを巡らせば巡らすほど不思議な思いにとらわれる。一本の植物がここを見つけて育つという簡単そうに見えて実は大変なのではないかとか、何万年も掛けてよりよき繁栄を求めて勝ち取ってきたのであろう今の姿、そして今後、楢枯れや鹿の食害を見るに付け、生育環境が脅かされないだろうかとか、11月のある日、ある登山道で、このオシャクジデンダと出会った私は、ひととき、答えのないはてなにとらわれ、たたずんでしまった。考える人にかこつけて、実は休んでいる私。そして、同行者に促されるのだ。秋はつるべ落としだと。ばれたか

サンシチソウだった。

2008-11-10 22:35:19 | Weblog
 植物に興味を持ってから、ところどころでふと止まる癖がついた。私の後ろを歩く人は要注意。人間(ジンカン)距離を十分にとってほしい。ぶち当たるかもしれないから。このあいだは国道沿いでバックミラーをみつつブレーキ。原因は黄色の花。あれは一体何の花?今頃咲く黄色は、わが家の石蕗とセイタカアワダチソウか菊だなあ。タンポポのしおれたのかボロギクのような形の花を付けている。キク科だ。
切り口は変なにおいがする。図鑑を調べいろいろ迷って、結論。サンシチソウかな。初めて見た植物だ。中国から渡来したという。葉っぱが羽根みたいで3~7に裂けているから三七草。いろんなところから名前が生まれておもしろいでござる。
 田舎の国道で見つけたのだが、ノゲシのようにぎっしり詰まった子供たちはやがて、ふんわりはらはらと風に飛ばされてどこまでも飛ばされておまけに車などにも乗ってしっかり勢力を広げていくにちがいない。


ビナンカズラ

2008-11-08 11:07:24 | Weblog
 しだいに色づいてきたビナンカズラ(さねかずら)。蝋を塗ったような皮質の緑の葉に小豆のような突起を付けて朱が濃くなっていく様は目に鮮やかで心惹かれる。
 
名にし負はば 逢坂山の さねかずら 人に知られで くるよしもがな 百人一首より
 
 里山で見つけたサネカズラなど思いきし引っ張ってみたら、ズルズルと6mくらいたぐり寄せらられてきた。結構丈夫そうな葛だ。これで愛しい人をひっぱるという歌を詠んだいにしえのひと。
 薬草や整髪としても用いられていたというから有用植物として、京の都でも生け垣などに絡ませて普通に生えていたのであろう。そして人恋しくなる秋の頃、ものみなすがれ、枯れていく頃、緑葉繁き中にくっきり濃い赤実をつけるビナンカズラは生命力あふれ、人の揺れる思いをひそかに燃え立たせていくような蠱惑的な存在だったのでは?

見ぃつけた! マメヅタ君☆

2008-11-02 19:58:59 | Weblog
とうとう我が県でも見つけちゃった。マメヅタちゃん。大好きなのだマメヅタ。県外では普通に見られるのだが、こちらではあまり見かけたことがなかった。しかし意外に近くにあるということで、ある秋晴れの昼下がり探しに行くこととなった。
 滝のそばだという。道行く人に尋ね、向かう。腰掛けて鮎を次から次へとどんどん焼いて日干ししているおっちゃんにも聞いた。なんとか滝どこですか?う~ん、香ばしき香り。あまりの鮎の干物の多さに気を取られ、右に回るとか、左に向かうとか忘れてしまった。しかし、田舎の一本道どうにかこうにか目的地を発見。一級河川を挟んで鬱蒼とした所に滝出現。それほど広くないところだが、不動明王と刻んである苔むした石柱。小さな祠とか首無し地蔵とか傍らにあり、あらたかな場所のようだ。首無し地蔵で思い出す。枝雀の恐怖感と滑稽とないまぜになった落語。あの地蔵さんもこんなんだったのかのう。まずは手を合わせて南無阿弥陀仏。私は神様でもどこでも南無阿弥陀仏。そして、あった滝のほとばしるしぶきを受けてマメヅタが葉緑素いっぱいためて青々と生えていた。並んで生えていた。向こう側のせりだしている樹の上にも点々と緑が見える。ゆであげた枝豆のように美味しそう。まわりを木々に囲まれ鬱蒼とした中のそれほど高くない滝だが、見上げるとわずかなこもれびを受けて小さな虹の鳥居が出現。そして、マメヅタはこの一角にだけあちこちに生えている。他のシダもある。イブキシダ、カナワラビ(鋼のような触り心地と照り)、オニヤブソテツ、オクマシダ、チャセンシダ。少し植物探索。しばらく歩いてみるとアレチウリに覆われた斜面。実ができている。ウリとは名ばかりの多面体のひっつきたいひっつきたい長めのトゲトゲでおおわれた種。雄花と雌花が別れている。径1㎝ほどの雌花の花、まるで小さなミニチュア花手鞠、名人の根付を彷彿とさせるような緻密な華麗さ。脳みそがひっくり返るような喜びを与えてくれる自然の造形美だ。アレチウリの売りは雌花と実だ。しかし人間世界では嫌われ者かも・・・。