土佐のくじら

土佐の高知から、日本と世界の歴史と未来を語ろう。

平家物語は、アンチ清盛キャンペーン。

2013-08-28 10:20:54 | 歴史のミステリー

土佐のくじらです。

歴史は史実です。
つまり文章を研究するのが歴史です。

ですので、書こうと思えばいくらでも書けるし、事実ではないことも書くことができるのが歴史です。
平安末期の政治権力者平清盛は、悪者のイメージで日本人には定着しているようです。

しかし、日本人の平清盛観の根源にあるのは、「平家物語」ですよね。
平家物語は、後の鎌倉期に、琵琶法師と呼ばれる盲目の人たちが、全国を行脚して、琵琶という楽器を鳴らしながら歌って広めたものです。

現代で言えば、街角で歌うストリートミュージシャンのような感じでしょうか。
一見すると自然発祥的・・・に、見えなくもないですが、同じ様相、同じ楽器、同じ歌を、ほぼ同時に全国で展開するストリートミュージシャンがいたとすれば、それはどこかのプロダクションが、ある一定の企画と予算のもとで行う、何かのキャンペーンであることは間違いないですよね。

そう、後の鎌倉幕府が、亡くなった平清盛に対して行った、全国アンチキャンペーンが、我々が知っている「平家物語」の真相だと私は考えています。

琵琶法師が対象にしていたのは、皇族や公家ではなく、一般庶民です。
ですから、この幕府キャンペーンが意味するものは、「平清盛という権力者は、一般庶民レベルで人気があった。」ということですね。
一般庶民レベルで恨まれている権力者であれば、わざわざ予算を使って、アンチキャンペーンをする意味などないからです。

この平家物語に代表される、歴史のイメージ戦略は、戦前日本悪玉論も同じだと思ってください。
あれだけ執拗なプロパガンタには、それが必要とされる、逆の何かがあるのです。
それが歴史の読み方です。

さて、この当時の武士は農家ですが、天皇一族から武士になった、由緒正しき一族もおります。
それが平氏(桓武系)や、源氏(清和系)ですね。

これらの名家は、皇族や公家たちや、それらの所領を警護をしていたと思われます。
今で言うなら、国家公安みたいな感じでしょうかね。

平氏や源氏は、平安時代末期には、勢力争いのための軍事行動を行います。
1156年の保元の乱と、1159年の平治の乱です。
今で言うところの、党内の権力抗争みたいなものですし、新党ブームみたいなものでしょうかね。

そして最終的に、その権力抗争に勝ち抜いたのが平氏であり、その統領が平清盛です。

平清盛は武士ですので、元来の貴族出身ではありません。
(天皇由来の由緒正しき武士ですので、ギリギリ下級貴族とも言えますが。)

当時の朝廷内の政治は、貴族でなければできなかったので、平清盛は貴族になろうとしたのですね。
それは結構大変だったようです。
朝廷内では、教養やシキタリがものを言いますのでね。

清盛は歌や踊り、その他、高級官僚接待や、経済面での抱きこみ工作・・・様々な政治的手腕を駆使し、太政大臣(今の総理大臣)にまで上り詰めます。

そして、遣唐使を廃止して以降、日本は鎖国状態に入っていたのですが、宋との貿易を再開し、平氏は巨万の富を蓄えます。
当時の多くの人たちの富の元は、農地から収穫される農作物ですが、平家は貿易による富(銭)を、主な収入としていました。
今の神戸港のもととなる、福原の港を造りましたが、これらは今の貿易立国日本の原型とも言えます。

平清盛の政治は、後の源氏の政策より進んでいたところもありますし、
清盛の造った広島の厳島神社などを見ても、彼の芸術的なセンスが、とても優れていることが分かります。

平清盛は、とても信仰心が篤かったのですね。
信仰心のない政治家には、芸術センスの高い遺物を残せません。
ソ連時代のロシア、そして現代の中朝に、芸術性がないのと同じです。

平清盛は、現代にも通じる開明的な政治思想を持った、とても優れた政治家ではなかったかと思いますね。

後の源平合戦などでは、源氏が対する平家は巨大な全国組織ですが、平家時代というのは20年ほどなのですね。
たった20年余りで清盛は、全国をほぼ平家一色で塗りつぶしたのですから、ものすごい政治力です。

私は平清盛を政治家として、とても尊敬しております。

源頼朝も政敵の子ながら、結局命を助けていますし、義経などは義理の子として、一時期養育までしています。
これなどは、清盛の慈悲深い一面なのではないでしょうか?

源頼朝はその後、挙兵しますけど、決して源氏の再興を掲げての挙兵ではありませんし、
驚くべきことに、打倒平氏を掲げての挙兵でもありません。平氏討伐も結局、清盛の死後に行っています。

頼朝も義経も、清盛には義理を感じていたのではないでしょうか?
ということで、平清盛はとてもいい人だったと、私は考えています。

                                               (続く)