(行け!!)
そんな命令を野々野足軽は飛ばす。けど実際、あの力の巨人は別に自立して動く……とかじゃない。流石にいまさっき思いついて実行してみただけの使い方なのだ。それにいきなり自立するような事を出来るほどに野々野足軽は器用ではない。なので『行け』とか思いながら、ちゃんと野々野足軽が逐一命令して巨人の体を動かしてる。殴って、蹴って、首を持ってグルグルと回して投げ飛ばす。それを追いかけてさらに追撃――しようとしたけど、力の巨人はびたっと止まった。
(これ以上はまだ……)
野々野足軽はこれ以上は無理だと感じた。この穴の向こうの空間……その全てに野々野足軽の力を満たすことが出来たのなら、この巨人をどこまでも走らせることだってできるだろう。けど今の野々野足軽の状態ではそれは無理で、それが無理だからこそ、これ以上は……という判断を野々野足軽はした。
(苦しい……痛い……なんで……どうしてこんなこと……)
何やらビシビシとそんな叫び、慟哭ともいえるような声が聞こえる。そして小さく見えるドラゴンのその力が一気に膨らんだ。
(やばい!?)
そう感じた野々野足軽は力の巨人の腕を前方でクロスさせた。次の瞬間、クロスした腕と共に力の巨人の胴体が別れた。
(食われた訳じゃない……けど……)
次の瞬間、力の巨人を維持することが出来なくなった。野々野足軽の力が拡散してしまってる。集められない。ある程度離れてそうなところに視界を出す。けど……みえない。とりあえず穴から出してる手に狙いが行かないように、遠い場所に力をためる。すると――
「はあ!?」
一瞬でその力が消えた。今度は拡散したんじゃない。消えた。もう集められない。
(食べられた? いや、やつはどこだ?)
力が流れるのを野々野足軽は感じてた。それはきっとあのドラゴンの移動の余波……だと思われる。それから何回か、力をためていると、一瞬で消された。そしてその力をためてる場所を見るように視界を出して頑張ってみるようにしてた。いや、力で強化すればいいんだが、あまりにも力をそこに集中するとそっちを狙われる。
だから今の状態でなんとか何が起きてるのか、それを知ろうと頑張る。一か所じゃなく何個も視界を出して、カバーしようと野々野足軽はした。それで何とか見えたのは、ドラゴンがめっちゃ早く動いてるってことだった。