「よし!」
ヤマ勘が当たったことによる声……それがでた。なにせ、ドラゴンがどこに出るのかそれは実際わからない。風になって右にでるのか左に出るのか……それか上やら下、さらには背後って選択肢だってあった。そこで上に出たドラゴン。別にそれは本当に偶然で何か誘導してたとかもない。それに力の巨人は一瞬で出せる……という感じじゃない。
もちろん全身を出すよりも今は部位だけ出してるから素早く構築出来てると思うが、それでも……だ。それでも一瞬では無理だ。これがこっち側。もともとの世界――地球なら一瞬で出せると野々野足軽は考えてる。試してはないが、たぶんできるだろう。なにせ時間がかかってるのはこっちの空間。この穴の先の空間には何もないからだ。何もないから野々野足軽は自身の力を流して、それを元に力を使えるようにしてるんだ。
でも今の野々野足軽にはこの空間のすべてを力で満たすことが出来ない。そもそもがこの空間はどこまであるのかもわかんない。それに今はこのドラゴンとやりあってるところに集めておきたいってのがある。そしてそれを遂次集めては力の巨人にしたりしてるのだ。なので一瞬ってことはできない。全ての方向に事前においておく……というのも難しい。だからこそヤマ勘で用意してたところに来てくれたのは嬉しかったみたいだ。
そしてそのまま殴りつける。拳を叩きつけるようにドラゴンの頭部を砕く。そして力を流し込む。癒しの力だ。壊して治す……ある意味でマッチポンプみたいだな……とか野々野足軽と思った。奥へ奥へ……けどこの奥というのは別にドラゴンの体内のどこか……とかじゃないみたいな? どこを進んでるのかも野々野足軽にさえ、よくわかってない。ただ深く……そう思って進めてるんだ。
パリン――
癒しの力を守ってた力の膜……それが砕けた。これまでの経験で経て、どうやったら奥で泣き続けてる風の少女へと届くのか……それを考えた結果がこれだっだ。野々野足軽は何回も色々な事を試した。けどこれが一番いいと判断した。力を力で守る。いうのは簡単だ。けどやるのはそこそこ難しかった。それに……だ。
パリン――
さらにもう一つの層が壊れた。そう、癒しの力を包んでた力は一つじゃなかった。そして二つでもない。三層だ。三重の力の層で守ってる。
「届け……たの――うお!?」
癒しの力を届けてる間もドラゴンは動いてる。既に傷口はふさがってるが、層のおかげで野々野足軽の意識は二つに分断されてるようになってた。つまりは風の少女へと届ける力を操る意識と、ドラゴンへと対応しないといけない意識……その分割思考で野々野足軽の頭は悲鳴を上げつつあった。