(誰か……助け……なに、これ? あったかい……誰か……いるの?)
ドラゴンの動きがおかしい。実際癒やしの力は届いたのか……なんとかほんのちょっとだけ、ほんのちょっとだけは届けられたと思う野々野足軽。それの影響か? ドラゴンがなんだか苦しそうにぐるぐるとその場で回ってる。でもこれは……チャンスだ! 野々野足軽はそう思った。
「行くぞ!」
もう一度野々野足軽は力の巨人を完全権限させる。ここで決める気だろう。苦しんでるドラゴンをその大きな両手でガッチリと抑え込んだ。そして目……のような部分がカッと光り、顎が外れたように口を開く。そしてそのままドラゴンの長い首にかぶりついた。これで癒やしの力を流し込むつもりだ。
「いけ! いけ! 助けに来たって伝えるんだ!!」
ここが勝負どころだと野々野足軽はありったけの力を流し込むことに決めた。一気に大量の力がドラゴンの内部へと侵入する。
「道はもうわかってる」
一度たどり着いたから、最短でいける。もう迷うことはない。確実に届くとわかってる。ドラゴンが激しく抵抗するが、それでも力の巨人を意地で維持する野々野足軽。大量の力を使ってるからか、タラっと野々野足軽の鼻から血が流れ出す。けど、そんなことには野々野足軽自身は気づいてない。
(気の所為? 誰か……誰かいるの? 応えて!)
…………
(やっぱり誰も……いないよね。こんな場所に、誰かいるなんて……そんなこと……そんなことなんてあるわけ)
……そんなふうに風の少女は上げた顔を再び膝小僧に埋めようとしてた。けど、そのとき、ほんの小さな光が彼女の側に来た。小さな小さな風で簡単に飛びそうな光……けど、それが彼女の手に触れると、聞こえてきた。
『助けに来た!』
そんな声。それは気の所為なんかじゃない。思わず彼女は顔をあげる。そして気づいた。周囲にはさっきの光がいっぱいあった。さっきまで真っ暗だった……何もなかった。けど……今は確かにある。そしてその光が言ってる。
『助けに来たよ。さあ、行こう』
――と。風の少女は立ち上がった。そして、光の中へと飛び出す。
(うん!!)
そんなふうに言って手をのばす風の少女。その手に光が一気に集まっていく。そして……次の瞬間、風の少女は懐かしい風を感じてた。
(ここは……)
「うお!? びっくりした……」
なんと風の少女は野々野足軽の手を掴んで元の空間……つまりは通常の地球へと戻ってきてた。これには野々野足軽もびっくりだった。