足軽はすぐに力を使って四体の猿の力を上回ることができた。それは目論見通りだ。これまで訓練を続けてきて、よかったと思った。
(これであとは、力を落ち着かせれば……)
そんな風に思った矢先だ。野々野足軽の頭に響く音があった。それはまるで除夜の鐘のように「ゴーン・ゴーン」と鳴ってる。それが何なのか足軽にもわからない。
「足軽? どうしたの?」
おばあちゃんが足軽の背中にそんな声をかける。けど、それに反応できない。でもおかげで足軽は「はっ」としてすで動き出してた。ただおばあちゃんに返す声を掛ける暇がなかっただけだ。
何も動いてない用に見えるが、足軽は力を操ってるのだ。
(これは……なんだ? 形が……それに……流れてる?)
足軽は異変を如実に感じてた。力の流れ……そして4つの猿の力の行方。その組まれた様。それを今や掌握してる足軽は感じれる。でも、理解はできない。そういう知識はないから。でも感覚で有ることはわかる。
(何かが、来る!?)
その瞬間だった。黒い入道雲みたいになってた暗雲。夜空だからはっきりとは視認できないが、その雲から何かが落ちてくる。
「危ない!」
足軽は慌てておばあちゃんを抱えて飛んだ。足軽たちが居た所にズドオオオオオオオオオン!! ――と大きな音と山全体……いやこの地域を震わせるようにして「それ」は落ちた。山にめり込むように斜めに刺さったそれ……
「なに? 扉?」
そんな風に足軽に抱えられたおばあちゃんが言う。足軽はあの場から離れるために背を向けてたが、おばあちゃんは足軽の肩口から背後を見れたんだ。それで足軽よりも先に、それを確認できた。
「大きな扉が落ちて来たわ足軽。あの子達は……」
「きっとあのサルたちは形を保てなくなっただけと思う。けどきっとその扉と結びついてる」
それを足軽は感じることができる。
「あれを呼び出したのはあの子達なの? あれは一体……」
巨大な扉……あれが何なのか足軽もおばあちゃんだってわからない。
「いえ、待ってあれ……」
「なにかわかるの?」
「うん、なにかあの扉のようなの見たこと有るような……」
何やらおばあちゃんは心当たりがありそうだ。けどどこで見たかまでは思い出せてない。とりあえずこれ以上距離を取ることはやめた。いつの間にか暗雲はきえて……いや、空はとても澄んでる。雲一つない。月明かりが眩しいほどになってた。さっきまでとはまるで別だ。さっきまでの暗雲が晴れた影響だろうか?
すると落ちて刺さって斜めになってるでかい扉から――「ドクン・ドクン」――という心音みたいなのが響き出す。
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