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ある日、超能力に目覚めた件 第二章 第三十話Part1

2025-01-05 18:38:30 | 日記
「あの夜……」
 
 そんな風におばあちゃんが紡ぐ。あの夜の事。
 
「足軽!!」
「えっと……なんで――」
 
 足軽はおばあちゃんがかばってたサルたちの一匹、一番近くの奴に触れた。触れる瞬間、ビクッとサルがなった。その様子にちょっと戸惑った野々野足軽だが、どうやらサルは逃げるとかはしなかった。だから意を決してサルに触れた。そして目を閉じてサルを探る。足軽が感じれない力。それをサルたちは持ってると考えてた。なにせおばあちゃんが言ってる力の規模と足軽が感じてる力には乖離がある。だから触れて物理的に探って感じることにしてみたんだ。
 
 そして触れて色々な角度で力を探ることで、足軽は新たな力を感じることが出来るようになった。でもその時だった。わずかに足軽が触れた。それは物理的にサル……に触れたわけじゃない。いや触れてるが、もっと奥。物理じゃなく、力……そう力で、サルの内部の力に触れた。それがきっときっかけだった。
 
「あがああああああああああ!!」
「ががががあああああああああああ!!」
「ぎゃあああああああああああああああああ!?」
「むぎゃあああああああああああああああああ!?」
 
 足軽は一体にしか触れてない。けど、そんな絶叫を同時に四体のサルが起こした。流石に足軽も焦った。だって別に特別なことはしてない。ただちょっと力に触れただけ。なのに……
 
「なんだ……これ?」
 
 足軽はなんとか引っ張ってた。それは自分の力を……だ。サル達からあふれる力が夜空へと延びて暗雲を作ってる。そしてそれに野々野足軽の力も加えられてる。足軽だって引きはがそうとしてる。けど……まるで絡み合ったかのように、無理矢理力が使われてる感覚。
 
「どうしたの足軽? やめて! その子たちは!!」
 
 足軽だってやめたい。おばあちゃんの言葉に応えてあげたいと思ってる。けど……力をほどくことが出来ない。勝手に自分の力を使われる感覚。それは不愉快で不快で仕方ない。
 
(剥がすのは無理か……どうしてかわかんないけど……なら!)
 
 足軽はこのままじゃまずいと思った。暗雲は雷を伴ってゴロゴロとなりだしてる。それに見たこともないような厚み……何が起きようとしてるかわからないが、何かが起きようとしてるという事は繋がってるからかわかる。それをさせちゃだめだ――と思ったのだ。でも引き剥がれない。ならば……
 
「内側から壊す! おばあちゃんは離れてて!!」
 
 そういって足軽は逆に力を注ぎこむことにした。これしかない。今は八割がたあのサルたちの力だから、主導権はサルたちにある。けど、サルたちの力の総量よりも、足軽の力の総量が大きい。ならば、奪えるはずだと思った。そうなったら、落ち着かせることだって出来るだろうという目論見だ。

転生したらロボットの中でした(ただし、出ることはできません)盤上の迷宮航路にご招待 149

2025-01-05 18:33:07 | 日記
 聖剣はなく、拳にも血が滲む。肌には青あざが無数に浮かんできて、見た目はボロボロになっている。
 
「はあはあはあ……」
 
 腕が重い……肺も呼吸のたびに痛む。けど……そんなのは幻想だ。今の自分に肺なんて……ない。この体は機械の身体だ。もう自分の肉体は生身じゃない。この体は自分が人間だと思うために、それを再現してくれてるに過ぎない。だからこんなのは違う。
 
「もっと……自分が……」
 
 向かってくる拳。それに合わせるようにこっちも拳を向ける。本当ならこの腕に正面から向き合うのは駄目だ。そんなのわかってたのに、判断力が鈍ってたのか、思いっきり拳に拳に重ねた。次の瞬間――
 
ボンッ!!
 
 ――と自身の腕が肘ぐらいまで一気に弾けた。吹き飛んで粉々になった……わけじゃないが、まるで骨が内側から飛び出して来たような状態になった。それでも……まだ動く。
 
(アニキ! このままじゃまずいっすよ!)
 
 そんなノアの言葉がうるさい。聖剣のリーチ……それに自分がどれだけ助けられたのか……それがわかる。
 
(痛くない……痛くなんか……ない。痛覚を遮断するんだ)
 
 体の怠さも、痛みも、それらを全てシャットダウンすれば、まだまだ戦える。でも……不思議なことに、それをやっていくと、戦闘に対する思い……熱ともいうべき物がなくなっていく気もする。
 
 確かに効率とか、合理性? を考えると痛みなんて無い方がいいだろう。体の苦しさだって不利になるのは当たり前。けど……それらを全てなくしてしまうと、まるで自分自身が死体になったかのような……そんな気がする。それに……
 
(聖剣……どこに……)
 
 戦いの最中、聖剣は壊れてしまった。それは紛れもない事実だ。けど、聖剣は自分の中で修復に努めてる。だから壊れたけど「ある」んだ。その繋がりは確かにあったし、感じれた。
 
 でも……自分が痛みを……そして体の苦しさをと遠ざけると同時に、自分のなかにいるはずの「聖剣」まで、遠くなっていくような……そんな気がした。そしてそれはきっと気の所為じゃない。
 
 痛みと苦しさを遠ざけることは人ではなくなるということだったのかもしれない。いや、それをわかってたから、自分はそれを受け入れてた。苦しくて、痛いこと……それが生きてる事を実感させてくれてたから。
 でも今は追い詰められてそれを遠ざけた。今の僕は聖剣的にはもう生きてないのかもしれない。だから遠ざかった。
 
(これじゃあ駄目だ)
 
 天秤にかけるまでもないだろう。人を辞めるか、人で有り続けて聖剣を取り戻すかの選択肢。それの回答は一つ。痛みや苦しさは怖い。もしかしたら耐えられないかもしれない。
 だって今の傷は重症だ。それは間違いない無い。ここで痛みを戻す。地獄だろう。でも、やっぱり自分は人なんだ。一時でもそれを忘れちゃいけなかった。