「また……」
「またって?」
「ここには前に一度来たことがあって、その時にもこれが……」
「そっか……」
そういって鬼女は再び周囲のコケシをみる。そして一歩前にでる。すると、沢山出てきてたコケシたちがその分後ろに下がる。そしてそれを確認したら鬼女は肩をすくめてこういった。
「私は求められてないみたい。怯えられちゃった」
別に何も残念そうでもないが、鬼女はそんなことをいってる。たしかに鬼女の事はコケシたちはおびえてるように見える。そこで小頭は気づいた。
「彼らの心がわかるの?」
「そんな訳ないじゃない。ただなんとなくね。私達じゃないのかなって。だって以前も出てきたんでしょ? その時は二人がいた。そしてまたこいつらは出てきた。つまりはこの変なのは二人にか、どっちかに用があるんじゃないの?」
その鬼女の考察を聞いて、小頭と幾代は顔を見合わせる。そして至った結論は……
「私?」
「おばあちゃんだよね」
そうなった。だってここはおばあちゃんである幾代の故郷。幼少期をここで過ごしてきたのは幾代しかいない。はっきり言って小頭は幾代の孫だが、それだけだ。だからこそ、この集落と関係があるなんて思えなかった。なんの繋がりもない。ということは、残りは一つ。足軽? 確かに足軽もあの時いた。でも、足軽だって小頭と同じようなモノだろう。それに今は足軽はいないのにコケシたちは出てきてる。つまりは……
「私に、何かようなの?」
幾代はそうコケシたちに語り掛ける。ものすごく静かな時が流れた。小頭には自身の心音が頭に響くような感覚がしてた。小頭達は動かない。だって下手に動いたら、コケシたちが下がってしまうかもしれない。だから今ここで動いていいのは幾代しかいない。それを悟った幾代は警戒しつつ一歩を踏んだ。すると……
(下がらない)
そう、コケシたちはさがらない。幾代か近づいてもそこに佇んでる。まるで幾代を待ってる見たいだ。
(つまりはあの時もこのコケシたちはおばあちゃんを求めてた?)
そんな事を思いつつ、幾代をみる。こけしに近づいた幾代は恐る恐る手を伸ばす。すると……だ。するとコケシの姿が一瞬ブクブクと沸き立って、姿を変える。その姿は……長い胴体を持った蛇? になった。
「おばあ!」
その時、鬼男に小頭は制された。危険を察して思わず体が動こうとしたけど、それは不要……ということだろう。実際、よく見ると、姿かたちは変わっても、幾代に攻撃するような事はしてないようだ。
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