文明は農業で動く
この本はへえ~が多い面白い本でした!!
しかし、知らない知識が多かったため、つどネット検索で読むのに時間がかかるのが玉に傷…(^^;)
日本から見ると辺境といえるようなアマゾンやインカの伝統農業…非近代的非科学的として捨て去られた方法…
が地元の人々の食料自給に役立った例が紹介されています。
背後に流れる思想を 要約すると
生産性より持続性
農業で言うと 収量が上がることよりも 持続的に生産性を維持できること を重視します。
今の収量拡大だけを目差す農法は略奪的農法といわれたりもしますが、ではなくて、地力を維持し
何年もそこから生活するにたるだけの食料を得る農法です。
”持続可能な(サステイナブル)社会”というのは、環境用語ですが、農業においても近代農業が、
全体的総合的に見た場合持、持続可能ではなかったようでその反省から伝統農法が見直されているという
ことです。
成功例としてあがっているのが予想外の(笑)秘境&古代文明の農法。アグロエコロジーというそうです。
ということから、現代的問題の解決に過去の農業遺産が生かせるのではないか?世界各国で見直されているよ
という示唆です。
山梨では信玄つづみがイラクの灌漑&緑化に役立った例(ペシャワール会)があるのと似ています。
私が海外で大まかに聞いた話では海外の第三世界支援では、すでに先進国の手法を海外にもっていくというのは
時代遅れで、ハイテクが飢餓や貧困解決には役立たないということは常識。その地の段階に沿った
ローテク手段(例えば手動の井戸掘り)などが歓迎されるそうです。で最近学生に人気がある
そうした学部(国際貢献など)ではローテク手段を知識として教えているそう。
紹介されている農法をかいつまんで紹介すると(リンクがはってあります)
・チナンパ(ス)農法 水路の上に浮島を作る農法
・ケスングル農法 → 樹木を切り倒さない、不耕起、混植農法 ハリケーン被害少ない
・カメリョーネス農法 → プレ・コロンビア時代の農法。盛土と水路からなる。洪水被害少ない
・マウンド農法 → 霜害が減らせる 実例はこちら東京農工大の先生の面白そうなサイトです
・テラ・プラタ アマゾンの肥沃な土のこと。炭の含有率が高い。
熱帯雨林というのは不毛な地なのだそうです。
・ヴリクシャ・アーユルヴェーダ →インドの伝統農法を記したヴェーダ(聖典)
現代社会の行きすぎ → 伝統回帰。
行き過ぎの例として、キーワード(持続可能ではない例)として以下のようなものがあろうかと思います。
平たく言うと悪者ですね(笑)
・多国籍企業(モンサント社、シンジェンタ社、カーギル社)
・モノカルチャー農業(単一作物生産)
・F1種
・緑の革命
・トリクル理論
・世界銀行
・フォード財団、ロックフェラー財団
例えば、このように用語が登場します…インドなどの貧困国で トリクル理論を根拠にした経済
分析により、「現行作物より輸出作物を栽培して現金を得るべし」と、世界銀行の後押で、高収量品種として多国籍企業からF1種が販売された結果、収量はアップしないばかりか生産コストがアップし、農民は借金で首が回らなくなり、自殺者多発No1地区になってしまい、結局儲けたのは多国籍企業と周辺を後押しした財団のみで、在来種は途絶え、後には不毛の地と過疎、家族崩壊が残された・・・、などです。
ふむ。程度の差こそあれどこかで聞いた話…日本も近い状況ですね。日本の農業”も” 食い物にされたのでしょうか? それともわれわれは逃げ切ったのでしょうか?
これらは富の偏在・局在を推し進める推進力として働く力です。
今も昔もうまい話には裏がある、という感じですが、現代先進国では、集団催眠的詐欺かもしれませんね、
近代科学の多国籍企業的利用法は。
私はいったいどうしてこういう極端な偏在が誰の制止も受けず歴史的に可能になったのか、
そういう意味から歴史背景が知りたいのですが、この本では、農業においてはそれは緑の革命を
きっかけにしたものであることが分かります。
■ ゲーム理論 & パレートの法則
農業にとどまらず、世界全体の平衡と成長の理論としてゲーム理論による成長モデルが解説されますが
それによると、富と言うのは、パレートの法則のとおり(うっかり失念していましたがパレートさんは
なんと家庭菜園!をしていてかの有名な8:2の法則を発見したそうです。そういえば…えんどう豆…^^)
偏るものなのです。
で最新のゲーム理論でのコンピュータシミュレーションによると偏りは、ハブ理論により
重要となる2割のハブを集中的に破壊されると容易に壊れ、しかし、その他を攻撃されても
平気という特徴をもっているんだそうな。
【気になるキーワード】
・キーストーン種 生態系で大きな影響力のある生物種
熱帯雨林ではイチジクらしい。ラッコもキーストーン種らしい。
・窒素固定樹木 日本では肥料木ともいうらしい。
ニセアカシア、 ハンノキ、 ヤマモモ、 ハギ
ただニセアカシア、ハリエンジョは北米産で外来種らしい。イヌエンジョが正しい日本古来の窒素固定樹木?
豆科植物が窒素固定するのは知っていたが樹木にもそういう種があるとは知らなかったけれど、そういえば
あぜにはよくアカシアを見ますね。
そして、伝統的に「聖なるもの」として保護されていた動植物にはこのようなキーストーン種が
多いのだそうな。 地元に残る仏教の教えなど、慈愛の心が多様性を保全していたとか。そうなのか!
伝統ってただ”伝統”の一言で説明されると納得もいきませんし非合理的・非科学のように
なりますが、伝統にもあるいは宗教の教えにも実は科学の裏づけがあるってことが科学によって明らかになると
これがまた人類の叡智に感嘆せざるを得なくなりますよね。
科学の用い方は裏づけ捜査的なのがいいのかしら…分かりませんが、木を見て森を判断する
ような用い方は気をつけなければなりませんね。
すごいのはこの作者がネットで得た知識のみでこの本を構成していることです。すごい情報収集力ですね。
ここが作者のブログ。これはアグロエコロジーブログ
伝統農法は日本のはやっぱり稲作なんでしょうかね…
日本は潅水するから連作障害無く毎年米が作れるのだと聞いたことがありますが、米が作れない山岳地方
ではどうやって地力を維持する農法をおこなっていたのでしょうか…