セーラー服の歌人鳥居は、自死しようとして、
海に飛び込んだことがある。
さいわい、人に見つけられ、助け出された。
その時の歌。
……
助けられぼんやりと見る灯台はひとりで冬の夜に立ちおり
助け出され、寝かされている。
あたりには、人がいる。
灯台をじっと見ながら、鳥居は何をしたらいいのかわからないでいる。
……
入水後に助けてくれた人たちは「寒い」と話す夜の浜辺で
自殺未遂に終わったが、
孤独感はかわらない。
話している人々と同じ人間だ、という感じがしないのである。
……
病室は豆腐のような静けさで割れない窓がひとつだけある
自殺未遂後に精神病院に入ったのだろう。
夜は、ひっそりとある豆腐と同じようなやわらかさ、静けさの中にある。
これから、どう生きていけばよいのか、そのことさえわからずに呆然としているのである。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます