も息子のマンションに固定電話を届けてからの帰り道、用事があって車を走らせていたら、いつまで経っても目的地につかなかった。
何度トライしてもダメ。
諦めて帰ろうとした時に、田中一村終焉の地というところへ辿り着いた。
田中一村さんは、日本画家で、亜熱帯の動植物を描いたので有名だが、私はまだ一度もこの場所に行った事がなかった。
家自体は閉まっていて、中を見る事は出来なかったが、その佇まいが幻想的で驚いた。
こんな穏やかで美しいところに住んでいらっしゃったのかと。
微かに良い香りもして、
ああ、歓迎されているな?と思った。
裏手の小道を登ると、紬の泥染をやっている場所へ出て、泥に足がハマり取れなくなった。
側で作業をしていたおじさんに、水道があるから、今場所を教えるよと言われた。
実は私、地元民なのに、泥染作業を見るのははじめて。
興味深かった。
そうしているうちに、ヘルメットを被った中年女性が現れた。
バイクに乗っての一人旅の観光客だった。
上へ登るとこうなりますよ、と泥だらけの足を見せたら、戸惑ったように、
私は今、泥染体験をして来たばかりなんですと言う。
地元生まれの私でも、泥染なんぞした事がないのに、観光客の方がなんでも知ってるな〜と思った。
4日間掛けて、島をバイクで回るそうだ。
今が一番いい季節なので、気持ちいいだろう。
楽しいです、とおっしゃっていた。
まあ、昨日は一村さんに呼ばれたのだろう。
ここでの生活もいいよと。
でも、一村さん、私はあなたのようにはなりませんよ。
私は生きて、自分の仕事の成果を受け取るつもりです。
南海のゴッホなんかにはなりませんよ。
生きて、報酬を受け取るつもりですから。
けれど、真摯に自分の作品に向き合う姿勢には頭が下がりますが。
☆それでは今日も良い一日を。
感謝します。