ちょっと前から、今日は誰かが残業する事が決まっていました
誰が残業するか…が、決まっておりませんでした。
…
通常、この残業は鳩のオッサンが立候補してやります
そして、残業手当をもらうために
更に、ちょっと時間を誤魔化して遅くまで働いたように見せて
残業代を少しでも増やすように…
そういうセコイ根性だけでやっておりました。
今朝、専務が倉庫に来ました
『今日の残業…誰ですか?』
鳩のオッサンの
『俺で!』って声が出るのを聞く準備をしていたのです、誰もが。
しかし今日は違いました
『私、やります!!』
スッと手を上げてアンガスが言うのです
『!!!!!』
声には出さなかったものの
アンガス以外、みんな驚きです。
…
しかし、アンガスはまだこの仕事の勝手が分からないと言う事で
『もう一人、誰?』
って専務が言う。
完全に俺の方を見ている。
いや、言わなくても分かるよ。うん。
鳩のオッサンと組ませたらアンガスが可哀想だからって思ってるんでしょ?
『…うん。じゃあ、俺で。』
急な残業が決定した。
本当は残業したかった鳩のオッサンは
俺がいなくなってからアンガスに
『よし、今日は5時で帰れるぞ!』と聞こえるように独り言を言ったそうだ。
残業したかったのに、残念ね。
この残業、実を言うと楽なのです
ちょっと残っている程度の事なのです。
たまに力仕事を言いつけられることもあるけれど
ほぼ、簡単な事で終了。
残業代も稼げるし、時間を誤魔化して申告できるし
鳩のオッサンにとっては有難い残業なのです。
…
しかし、正義感の強いアンガスは
それを許さない。
だったら私がやります!!と、立候補したのだ。
で、気づけば俺も道連れに。
『何だか私が立候補して、にゃびさんまで残業させてごめんなさい…』
『いいのいいの。アンガスさんの正義感の強さ、最高です!!』
俺は正直な気持ちを伝えた。
彼女は何かまた思い出したように熱く語り出した。
残業と言う名の愚痴大会が始まった。
会社から物が無くなって
それを鳩さんが売ってお金にしている
その仲間と思われたくない。
倉庫の備品の管理表を作って、在庫管理をします!!
アンガスは本気だった。
この正義感の強さ、凶に転ばないといいなと…。
気持ちはわかるけど、衝突する原因にならないといいなと…。
でも、衝突したとしても
俺はアンガスの肩を持つのだけれど。絶対的に。
『こんなに遅く帰っても、夕ご飯を作るんですか?』
と、聞かれた
我が家の料理担当は俺だと言う事を、すでに女子トークで話している。
『うん。なるべくは作るようにしてるよ。大したものは作れないけどね~』
『いや~もう「作る」ってだけで尊敬ですよ!』
『そんな事ないよ…いやいや、恥ずかしいものですよ』
『ちなみに今夜は何を作るんですか??』
『待機で飲めないし…。豚肉があるから、焼肉丼みたいなのにしようかな…』
『え~っ!!そんなのも作れるんですか??』
…
アンガスは料理をしないそうだ
全然しないそうだ
酢キャベツの話をしたときに
『今朝、急いで千切りにして酢漬けにしてきたんだけど上手く行くかな…』
って言ったら
『急いで千切り出来るんですか??』
そこかよ!!
…
アンガスがとても気にしていた焼肉丼はこんな感じ
エバラ焼肉のたれで味付けした豚肉を
ご飯に海苔を散らしてから乗っけただけ
汁物とこんにゃくの炒め物をテケトーに作って
漬物は買ったヤツ。
…アンガス、あなたでも余裕で出来ますよ。
難しいのは何もありませんよ。こんなもの。
そして
エバラ焼肉のたれは裏切らないね(だろうね
それよりも真っ直ぐすぎるアンガスの正義感の強さ
すこしブレーキをかける事もしてあげないと
このまま行くと
鳩と事故る。
気を付けて見てあげなくちゃね。