墨の香り漂う教室で、小学生のころ習っていた書道の記憶がよみがえってきます。あの頃は何も考えずに先生のお手本を真似して、そして上手に書けていれば丸をもらって喜んでいました。
デザイン書道は、自分の感性を大切にして書く。どんな線で、どんな形でどんな大きさどんな文字で、と自由度がとても高く、初めはそこがとても面白そうと思って始めました。
ただ、自分がイメージする線にはなかなかならなかったり、形も思うものではないような歯がゆさが頭の中に残っていました。自分の作品をもって先生のところに指導してもらいに行くと、先生はよいところをほめつつ、先生が素晴らしいお手本を書いてくれるのです。その時の「うわー!素晴らしいわ!ステキ!」という感動が大きかったです。
自分で書道の用品を売っている店に行って、紙や筆を買うことも楽しみでした。新しい世界を見ることができて、好奇心旺盛な私の心はワクワクしていました。
デザイン書道のコンクールがあり、先生から誰でも出せるからと言われ、出してみようかと思いました。初めはやってみるつもりでした。どんな字を書こう?どんなデザインで・・・?
ただ、そんなことを考えている私はあまり心が躍らない。なぜだろう?
そして先生が、今度私はイタリアで展示会をやります、という話なんかにはとても興味がわく。先生はどうしてデザイン書道を始めることになったんだろうか?書道を普通にやっていたんだろうか?どういう転機でデザイン書道を始めることになったんだろうか?
私はデザイン書道に興味があるというよりは、アーティストとしての先生に興味があることにはっきりと気づきました。
そういえば今までにも、絵がかけたらいいな、とか何か創造的な趣味があるといいなと思っていましたが、自分が作るというよりはその創作者の人に興味があったことに気が付きました。
人間に興味がある。人生に興味がある。どんな転機があったんだろうか?
そこに私は一番興味を持っていたことにはっきりと気づきました。
その視点から見ると、映画や小説が好きなのは、自分の人生ではない人の人生のストーリーを疑似体験できるからなんです。疑似体験しながらいろいろな感情を体験することが楽しさでもあります。
そして人の話、特に人生の大きな体験をした話を聞くのが好きなんです。だから今のがんの人の話を聞くボランティアが好きで、やめらない。目の前の方と同じ体験の中に入り込み、その方が気づいていない解決の糸口をお伝えし、その方が笑顔になられるのが好きなんです。こちらのボランティアは、やればやるほど、もっと深めていきたい感情が湧いてきます。
自分の心の中にわく小さな違和感をしっかり見ていくと、本当に自分がやりたいことがわかってくると思います。
自分が本当にやりたいことをやる、それが幸せに生きること、だから自分を知ることが大切です。そてそのために頭の中で考えるだけではなく、実際に動いてみることが大事だと思う今日この頃です。
最近の自粛で、自分と向き合う時間が増え、やりたいこと、やりたくないことがいつもよりはっきりと分かるようになった人も多いのではないかと思います。私もよりはっきりと見つけることができました。