エッセイと虚構と+α

日記やエッセイや小説などをたまに更新しています。随時リニューアルしています。拙文ですが暇つぶしになれば幸いです。

御徒町探訪

2013-03-13 21:50:01 | 小説
アメ横の大きな人の賑わう通りから右の細い路地に入る。サンクスが偶然あったので入る。ATMを探し出して見つけると誰も利用者がいないためすぐに画面操作することができた。そういえば携帯電話がスマートフォンへ移行しようとしているいま、タッチパネルというものは毎日触るものになった。といってもタッチパネル式のスマートフォン利用者にとってなのだが。以前私が高校生のときに図書館に行くとたいていその館内の為の書籍検索のタッチパネル式のパソコンが置いて有ったのを思い出した。
そんな郷愁に囚われていてはアメ横に流れる時間軸に押し流されてしまうため、そんな無駄な想念は捨ててさっそくサンクスのコンビニATMの操作に取りかかった。利用開始という大きめのアイコンを右手の人差し指でタッチすると「お使いの銀行のキャッシュカードを差し込み口に」という電子文字による案内が画面に表示される。私は財布のカード入れからいつも使うキャッシュカードを取り出しATMに差し込んだ。数千円を引き出すとサンクスを後にした。
上野から御徒町にだいぶ近づいた。御徒町を抜ければすぐに秋葉原である。秋葉原は最近とても人が多く疲労してしまうために私は御徒町近辺をうろうろと歩くことにした。
右側に見えたドラッグストアそして左側は高架の御徒町駅のコンクリートの壁。東京は何処へ行ってもコンクリートと鉄筋にいつのまにか囲まれて息が苦しくなってくることがさっきの郷愁の感情とは裏腹に私を不安にさせた。
駅前はやはり人が多くて交差点に立ち止まり高架下に止めてある緑色の車体に黄色いラインが入ったタクシーを見つめていた。信号機が青にかわると動き出した歩行者と共に道路を渡る。
渡ったさきは漫画喫茶やビデオルームやカプセルホテルやビデオショップがひしめく都会の中庸地点であった。何度か訪れたビデオショップに入ることも考えたのだが、体力もなく歩くのが苦手な私は左手に見えたDoutorにすぐに入った。
アイスコーヒーのSサイズを迷うことなく注文すると2階の席へ上がり、座るとバッグに入れて持ち歩いていたスマートフォンと文庫本を出した。200円での30分のリラックスをしたあと喫茶店を出て向かいにあるさっき入ろうか逡巡したビデオショップに貼ってあるタイタニックのポスターが太陽の光でだいぶ妬けてしまっているのをなんだか寂しい気持ちで通り過ぎて左へと向かいまた歩くことにした。御徒町には何もないと言われたりもするがとても狭い地域面積の中に有象無象がひしめき合っている。上野駅で降りてから浪費してしまったのはまだ200円であることに安心した。しかし雑踏にいる混乱のうちにさっきサンクスで降ろした数千円を使ってしまないようにただ歩かねばならないと思った。まっすぐに前を見るともう秋葉原の端が見えている。背筋を伸ばし服装を整えて歩いていく。毒々しい看板には夜になると光が灯りそれが遠目にはネオンとして東京を彩るのかと思うと全ての事象は繋がっている。私は200円の浪費への後悔の念に背中を押されながら歩行スピードを早めた。