映画食い倒れ。

~映画は人生のデザートです~

個人的覚え書きのため、たまにネタばれありです。

「アバター ~Avatar~」

2010年05月15日 | 映画~あ~
今更なんですけど…『アバター』です。
日本でも大ヒットだったようですね。映画の配給会社が、広告にものすごく力を入れたという記事を読みました。ほかの国では出来るだけ公開前の露出を控え、内容を秘密にすることで話題づくりをしていたとのことですが、日本では逆に公開前の露出を大きくしたそうです。とにかく登場人物たちの肌の青さに目を慣れさせるために、テレビでも長めのCMを頻繁に流し、「免疫」を作ると言う方法をとったそう。「青い」と言う見た目のために、映画の内容以前に拒否反応を起こす人が多いと言う考えからだそうです。それが見事に的中した、ということでしょう。

実際私も、全く興味を持っていなかった一人で…だって青いんですもの、登場人物たちが。ただでさえSFがあまり好きではないので、青い登場人物たちの存在がさらに足を遠のかせてくれました。ええ、あたくし心のそこから日本人です。

それが、映画を見て大絶賛の旦那と義父。「きっとおゆりも好きだと思うから」と半ば強引に旦那に連れて行かれて観てまいりました。これが2月だったと思います(うろ覚え)。しかも旦那は鑑賞2回目。


さて、やっとこさ映画についてですが…いや、実はね。映画を見ている間はそれなりに楽しめたんです。でも感想をといわれると、1行で終わってしまう。なので、その感想は最後にとっておいて、とりあえずよかった点を挙げてみましょうか(強引なのはわかっていますが、こうでもしないとSFに対しての「やっぱり苦手」感が文章全体に出てしまうので)。

まず、映像と言うか作られた世界のなかの「自然界」(わかります?)がものすごく美しかった。この映画の世界って、ものすごく現代の地球に似ているけど同じものではもちろん無いわけで、ある種仮想世界なんですけど、その仮想世界の中で描かれている「手付かずの自然」がやたら美しいんです。想像でここまで現実味を帯びた美しさが作り出せるのか、とため息が出るほど。

それから、ミシェル・ロドリゲスが主要キャストの一人として出ているのですが、彼女がこれまで演じてきた役の中で、これが一番はまっているように思いました。これまでも肉体勝負(ガテン系の部)で活躍してきましたが、ハワイの女子サーファーの役やSWATよりも、今回の反体制+良心を持ったヘリコプターの操縦士役が一番しっくりでした。長い台詞のときよりも、一言つぶやくような時に彼女のもともとの雰囲気と役柄が合致しているように思いました。


さて、そろそろ映画自体の感想といかせていただきましょう。一言で言いますと、

「ガンダム版もののけ姫」


ガンダム好きな人から「ガンダムはこんなものじゃない」と言われそうですが、例えです、例え。軍人たちが乗っていたあのロボットも、私には「モビルスーツ」にしか見えなくて。引っ張った割りにそのまますぎて申し訳ないんですが、この一言に尽きます。実は旦那(イギリス人)も、「もののけ姫みたいな物語だから、おゆりも楽しめると思うよ」と言っていたんです。ほんと、その通り。ほかの友人(フィリピン人)にはなしたところ、「実は僕ももののけ姫みたいだと思っていた!」とこちらも賛同。

なので、もののけ姫を見たことのある観客にとっては、物語自体は全く新しさの無いものだったんじゃないでしょうか。まぁ、そんなこと言ったら映画の大半はそうですけど。むしろ、もののけ姫をベースに設定を変えて作ったんじゃないかと思うほど。実はそうです、といわれても驚きません。

あ、そうそう、今思い出したけど、でかい鳥とか馬に乗るときに自分の髪の毛の先端から出てるなんかよくわからない体の部位(本当になんと説明していいのか…なにかいい説明のしかたありません?)と動物の尻尾とかとさかの先端にある同じような部位(…。)を結合させるんですけど、なんか、あれがすごく見るに耐えなかったわ。ほかの人の感想にも同じようなことが書いてあるのを見て「ああ、私だけじゃないんだ」と妙な仲間意識を覚えました。

あと、空中に浮いている土地?島??が『天空の城らぴゅた』を思い起こさせました(また!)。こんなこと言うの、私が日本人だからでしょうか。だからといって、別に『~ラピュタ』のファンではないんですけど(あたくしのお気に入りはトトロ!)。


映画としては、楽しめました。断然映画館向きの作品ですよね。どらえもん映画以来の3D体験だったし。今後3D作品増えそうですけど、あたくしとしては基本的に映画は2Dで十分です。というか、この映画見た後頭痛が酷くて夫婦ともどもバファリンのお世話になりました。目も疲れるし、脳みそもいろいろ疲れるのかしら。


おすすめ度:☆☆★ (ただし映画館に限る)

「ラブリー・ボーン ~The Lovely Bones~」

2010年04月12日 | 映画~ら~
2009年 アメリカ映画

もう数ヶ月前になりますが、映画館で見てきました。前回の予告にも入っていない映画の感想のアップですが、気にしない気にしない。

14歳のスージー(シアーシャ・ローナン)は学校帰りのある日、近所に住むジョージ(スタンリー・トゥッチ)に殺害される。しかし警察の捜査にもかかわらず見つからない犯人。家族は苦悩にさいなまれ、それぞれがストレスを抱えながらの生活を余儀なくされる。スージーは天国への道すがら、自分が亡くなったということを少しずつ受け入れつつ、この世に残された家族や犯人たちの生き様を見つめ続ける。

ベストセラー小説の映画化だそうです。この映画の批評が新聞に載っていたのですが、イギリスでは大方「原作のファンにはがっかりな仕上がり」ということでかなり酷評されておりました。あたくしは原作読んでいませんし(毎度のことですが)、予告編を見たときから面白そうだったので見にいったのでした。

ものすごく独特なつくりの映画です。監督は『ロード・オブ・ザ・リング』(未見です、あたくし。何度かチャレンジしたけど、あたくしにはファンタジー過ぎて)のピーター・ジャクソン。特にスージーが天国?(それとも天国への途中の世界?)にいるシーンは、ファンタジー全開!同じファンタジーと言っても、ティム・バートンよりも毒味がなくて、もう少しガーリーな雰囲気が漂っています。それは14歳のスージーの世界に合わせたつくりなのでしょうが、映画の中のスージーの持つ優しくて、透明感があってかわいらしさを持ち合わせているイメージにぴったりなのです。そのファンタジーの中ではとにかく楽しそうで、むごい殺され方だったのだからせめてあの世ではこのくらい楽しいことが待っていてくれないと、スージーのみならず見ているこっちも救われないわ…とその表現に妙な納得をしてしまったり。

かなりファンタジーの要素が入った映画であると言えると思うのですが、何せ基盤となっているのは14歳の少女の殺害、そして家族の苦しみ。のうのうと生きている犯人の姿。正直かなりキッツいのです。犯人役のスタンリー・トゥッチの憎たらしさ、気持ち悪さといったら!もちろん彼の演技力の高さ、キャラクターデザインやメイクによる功績ですが、本気で胸糞悪くなるくらいこの犯人のキャラクターが立っています。彼のおかげで、2時間の映画、見ているのがかなり辛かったです。苦痛を感じるほど。映画としてよかったと思うのですが、また見たいかといわれたら、無理です。どんなに色合いを明るく、天国の様子を楽しげに描いていても、心躍る物語ではないのです。

主人公スージーを演じるシアーシャ・ローナン、ものすごくよかったです。演技がうまいと言うのはもちろんなのですが、独特の存在感と同時に透明感があり、さらにかわいらしい。容姿もとってもかわいいのだけど、視覚的なかわいさのみならず、内側からにじみ出るかわいらしさがあるのです。彼女が主人公を演じたからこそ、私はこの映画を見るのを苦痛に感じたのかもしれません。もちろん、よい意味で。こんな素敵なスージーが殺されなければならないなんて、という憤りによるものです。調べてみたら、彼女まだ15歳ですが、すでにアカデミー賞助演女優賞にノミネート(『つぐない』にて。当時13歳だったそう!未見)された経験があるのですね。存在感や演技力の高さに納得です。

また、脇を固める俳優陣が個性豊かで、父親にマーク・ウォールバーグ。父親役ができるまでになったのね、マーキー・マークが!母親役がレイチェル・ワイズ。私は彼女がものすごく好きなのですが、実は映画を見ている間ずっと、ローズ・バーン(テレビドラマ『ダメージ』や映画『サンシャイン』に出てた女優)だと思い込んでいました。だって、暗そうな感じが似てたんだもの。祖母役がスーザン・サランドン。スーザンのビッチな派手好きなおばあちゃん役、意外に合っていてびっくり。全く違和感が無い。これまでスーザンのビッチな感じの役ってあまり記憶が無いのですが、さすがです。

ほかにも、スージーが天国で出会う女の子たちがやたら個性的で、あまりの個性の強さに「なぜこの子をキャスティングしたんだろう」と疑問にさえ思ったりもしたのですが、映画のなかである種のアクセントになっていて、見終わってみると「あれも有りだわ」と感じたりもしました。

面白いつくりの映画だったけど、二度と見たくないです。見ているのが辛すぎるんだもの。
でも見ていない方はぜひ。


おすすめ度:☆☆☆☆


全然更新していませんが・・・。

2010年04月05日 | Weblog
生きてます、あたくし。

本数は少ないものの、それなりに面白い映画も見たのですが、全然更新せずに今に至ります。そのうち、気が向いたら更新いたします(ホント?)。

とりあえず、更新したいなぁと思っている映画は以下↓

・Proposal (あんたは私の婿になる)…なんちゅう邦題だろう。
・Hurt Locker
・アバター
・UP (カールおじさんと空とぶ家)
・Alice in Wonderland
・Waiting
・Sunshine Cleaning
・Sherlock Holmes
・This is It
・崖の家のぽにょ

さて、更新はいつのことになるやらですが…。

更新の無い間にもサイトにお越しくださっている皆様、本当にありがとうございます。期待せずに次回の更新をお待ちいただければ幸いでございます。

「ラーメンガール ~The Ramen Girl~」

2010年01月30日 | 映画~ら~
2008年 アメリカ映画


ブリタニー・マーフィー主演のコメディです。ポーランド人の友人からDVDを借り、鑑賞しました。なぜなぜポーランド人の彼女がこの映画を選んだのかは謎ですが、この映画なかなかよくできていました。


アビー(ブリタニー・マーフィー)は日本で仕事をしている恋人を追って来日するが、あっさり振られてしまう。傷心の彼女を癒したのは、アパート近くにあったラーメン屋さんのラーメン。初めてのラーメンはスープまで飲み干し、翌日から毎日通うように。食べた人が笑顔になるこのラーメンに魅せられ、日本語が全くできないのにそのラーメン屋に弟子入りを志願。ラーメン屋主人のマエズミ(西田敏行)の厳しい修行を受けることになる。

まず感心したのが、スタッフに日本人が大勢いるとはいえ、アメリカ資本でアメリカ人監督の作品であるにもかかわらず、描き方が日本人目線であるということ。アパートから見たラーメン屋の光景は、強風にやたらにごみが舞っていたりして不自然な感じはあるけど、それ以外はほとんど違和感を感じられないほど日本を自然に描いていて驚かされました。ラーメン屋主人が日本料理の料理人並に様々な包丁を持っていて手入れをしているシーンもあったけれど、そのくらい。

タイトルも『ラーメンガール』って、なんのひねりも無くそのままだし、思い切りB級の匂いがするし、どうなのよ…と思っていたのだけど、映画を見てこのひねりの無いタイトルがぴったりだと思いました。だって本当にそのままなんだもん。ストーリー展開も、結構ベタだし。それでもこの映画、ダレてないのよ。コメディー映画として面白いのね。

それはひとえに出演している俳優たちの演技力によるものだと思います。とにかくブリタニー・マーフィーが抜群にかわいい。彼女のイメージというと『8マイル』が一番強いのだけど、コメディーにも強いなぁと感心させられます。これまでも『アップタウン・ガールズ』や『ジャスト・マリッジ』などのコメディにも出演していたけど、彼女の出演しているコメディの中では、この映画がダントツで1番です。アビーの能天気な面、頑固な面、素直な面を一人の人間の様々な魅力としてしっかりと表現していて、さらにちょっとした間のとり方や表情の変化のつけ方にいちいち唸らされます。彼女のほかにも外国人出演者はいるのだけど、(主演女優と比べるのは間違っているけど)根本的な演技力の違いが歴然です。さらに、脇を固めている日本人俳優たちが豪華。西田敏行の頑固親父ぶりは文句なしだし、お店のお客たちの個性的な顔ぶれも抜群。

タバコをすいながらウィスキーを飲み交わすアビーと師匠のエンディング、日本人同士なら絶対にありえないんだろうけど、そこに「異文化」だから許されるというエッセンスが入っていて印象深いです。

ニューヨークでラーメン屋というのも実際にありえる話で(確か一風堂はニューヨークに出店してますよね?)、ラーメンに見せられたアビーが頭にタオルを巻いて起業するのも応援したくなっちゃいます。

この映画の後、確実にラーメン食べたくなります。はあ、インスタントラーメンでも食べようかな…。

ブリタニーといえば、昨年末に32歳で亡くなってしまいましたね。もともと糖尿病を患っていたそうで。個人的に好きな女優さんだったので、本当に残念です。



おすすめ度:☆☆☆☆

ブリタニーが抜群にいい!

「ジュリー&ジュリア ~Julie & Julia~」

2010年01月11日 | 映画~さ~
2009年 アメリカ映画

実話を映画化したコメディー・ドラマです。フランス料理のレシピ本と彼女のフランスでの生活を綴った本を出版し、アメリカで人気を博した料理家ジュリア・チャイルドと、1年間で500以上ある彼女のレシピにある料理を作りブログに綴ったジュリー・パウウェルという別の時代に生活する2人の女性の生活を描いている。特に料理好きな人には興味深い映画なんじゃないかと思う。私もその1人で、この映画を見たいと思っていた。結局公開中に映画館に足を運ぶことはできず、今回飛行機の中で見ることができた。

率直に言うと、「がっかり」感が大きかった。全体的にというよりは、あるシーンによりものすごくがっかりさせられたと言う方が妥当なのだけど。

映画はジュリア・チャイルドが夫の仕事に伴いフランスに移住。そこでフランス料理に感化され、料理学校に通い、アメリカでフランス料理本を出版するまでが描かれている。また、ジュリーは現代のニューヨークに住む料理好きの女性。仕事に行き詰まりを感じていたところ、ボーイフレンドから彼女の趣味である料理を通じて自分を表現し、自信を取り戻しては?と言うアドバイスから、ジュリア・チャイルドの本にある524のレシピをすべて作ってみることに。さらにそれをブログでアップし、期限を1年と決めた。映画自体はジュリーのブログが軸になっており、映画の全体のリズムをつかさどるのもジュリー側。ジュリアはある種伝記のような感じで映画の中で紹介されているように感じた。

ジュリアの料理に対する情熱、、彼女の持つかわいらしさは彼女を演じるメリル・ストリープにより存分に表現され、所々にジュリアの人生の中の苦悩なども垣間見ることができる。また料理好きな人にとっては、映画に登場する料理の数々も見所。見ているだけで幸せな気分になる。

料理が存在感を発揮する映画と言うと、最近では『かもめ食堂』『めがね』などがあったけど、これらの映画とはまた違った存在感を料理たちが放っていて、それも印象的だった。

最初にも触れたけど、1つものすごくがっかりで、私としてはこの1シーンが映画全体を壊してしまっているといっても過言ではない部分が。それは現代のジュリーが恋人といっしょにテレビを見ているシーン。テレビではジュリア・チャイルドの真似をしたコメディアンが料理をし、誤って自分の指を切ってしまい当たり一面を血の海にするというもの。まな板に置かれた丸ごとの鶏肉も血だらけ。それを恋人と爆笑しながら見ているジュリー。

これ、面白いのか?仮にこのシーンが原作の中に盛り込まれていたとしても、必ずしも必要なシーンだとは思えなかったし、料理好きでブログをはじめたジュリーがこれに爆笑していると言うのに、ジュリーの人格を疑った。仕事に生き、成功している友達に後ろめたさを感じていたジュリーは、料理のブログを通じて自分を確立していく。彼女の料理好きは映画からよく伝わってくる。しかし、本当に料理好きならあんなコメディーを笑えるどころか胸糞悪くなると思うのだけど。それを「感性の違い」と言われればそれまでなのだけど、私はこのシーンを目にしてから一気に冷めてしまった。

救いなのは、このシーンがメリル・ストリープの登場シーンではなかったこと。これまで散々苦手意識を持っていたのだけど、『マンマミーヤ』から彼女を見る目が変わった(よい意味で)ので、ここで変に彼女のイメージをまた自分の中で変えたくなかったから。


あのシーンは本当に残念だったけど、メリル・ストリープもジュリーを演じたエイミー・アダムズも、ものすごくよかった。ブログの原作者である本当の(ちょっと言い方がおかしいけど)ジュリー・パウウェルは、ジュリー役にケイト・ウィンスレットを希望していたそう。確かにケイトでもいいなぁ…と思う。でもエイミーの初々しさが、「仕事は辛いけど、料理が生きがい!」みたいな素人っぽさをうまく表現していたように思います。


個人的には、あのシーンを除いては結構楽しめました。原作も機会があれば読んでみようかと思います。それでも、どうしても私にはあのシーンが許せなくて、がっかり感が強く残ってしまいました。と言うことで、



おすすめ度:☆☆


本当に料理好きなひとは、DVDで鑑賞する時はあのシーンを飛ばした方がいいんじゃないかと本気で思います。

「アドヴェンチャーランドへようこそ ~Adventureland~」

2009年11月19日 | 映画~あ~
2009年 アメリカ映画


1980年代後半、アメリカはペンシルバニア州の田舎町を舞台にした青春映画です。主人公ジェイムズは、コロンビア大学に進学しジャーナリズムを専攻することを楽しみにしていた矢先、両親から金銭的な援助は出来ないと告げられる。挫折感を感じながらも、夏休みの時間をアルバイトをしてすごすことにした彼が見つけたのは、アドベンチャーランドというものすごくしょっぼい、地元の遊園地。そこで個性豊かな同僚たちと出会い、同じゲームコーナーに勤務しているエムに恋心を抱くようになる。


新聞の映画批評のページ(英:デイリー・テレグラフ紙)で5つ星で紹介されていたので見に行ってきました。名前も内容も全く聞いたことが無かったのですが、何となく見てみたい衝動に駆られ2ヶ月ほど前に映画館で見ました。


80年代、アメリカ、青春映画…というと咽返るような青臭さに、見ているこっちが恥ずかしくなる、と言うようなイメージを持っているのですが、この作品はとにかくいろんな意味でバランスがよく一味違います。

まず、主人公のジェイムズのキャラクターが、抜群にいいのです。全然目立つタイプではないが、頭の回転が速く言葉選びがうまくて笑いが取れる。更に年齢の割りに冷静だけど冷めているわけではない。10代の若者が主人公の青春映画というと、目を覆いたくなるような情熱の強さと若気の至りとしか言いようがなくとにかく勢いだけで突き進む、と言うのが定説でそれが「こっ恥ずかしさ」の原因でもあると思うのだけど、この作品ではうまい具合に中和されています。だからと言って若者らしさが無いと言うのではなく、過剰すぎないのです。

映画の中に引き込まれて登場人物に感情移入をする類の映画ではなく、「ああ、この感覚!10代ってこんな感じだったかも」と見ている側は一歩ひいて冷静に、それでいて自分の人生経験の何かと重ね合わせたりして、どこか身近に感じられるような不思議な映画です。懐かしさを感じさせるような。


好きになったエムに隠し事があり、それに気づいたジェイムズ。エムの持つ闇の部分も、ジェイムズの若さゆえの不器用さも、過剰な演出をせず、しかしながら軽すぎることも無く、うまい塩梅で描かれています。


ジェイムズを演じているのは、ジェシー・アイゼンバーグ。ナイト・シャマラン監督の『ヴィレッジ』に出ていたそうですが、私の記憶の中ではあいまいです。しかし、この彼の演技力の高さは今後注目です。エムを演じているのがクリスティン・スチュアート。私は見ていませんが、『トワイライト』のシリーズに出ているそうです。また、ジョディー・フォスターの『パニック・ルーム』でジョディーの娘役を演じたのが彼女だそう。当時とは顔が違っているだろうし、ウィキペディア見るまで知りませんでした。


また、この映画の監督は、『スーパーバッド』の監督だそう。この映画も大好きで何度も見ていますが、同じく10代の若者主演の青春コメディーでもスタイルが全く異なっていると言うのが面白いです。この監督、10代の若者の心の揺れを描くのがものすごくうまいなぁと思います。しかもそれを「笑い」が中心となるはずのコメディーの中うまく描き出しているのだから驚きです。『スーパーバッド』はややグロい部分もあるので嫌う人も多い作品ですが、コメディー好きで見ていない方は是非!

そして脇を固めている俳優陣も本当に個性豊かで、最近サンドラ・ブロックと『プロポーザル』(まだ見ていないけど、ものすごく見たい)で共演していたライアン・レイノルズが重要な役どころで、遊園地の管理人は『スーパーバッド』で警官を演じていたマーティン・スタール(この読み方であってるのかしら?)。彼の存在で映画のコメディー部分が強化され、作品全体にメリハリが出ています。ほかにも、ジェイムズの幼馴染たちやエムの家族など、ちょい役なのだけれど個性がしっかりあって作品のスパイスになっているところも要チェックです。


日本での公開の予定は今のところなさそうですが、すっきりとした新しさのある青春映画でおすすめです。




おすすめ度:☆☆☆★


*日本では結局劇場公開されなかったようですが、DVDは発売されているようです。(2011年1月17日追記)

「レイチェルの結婚 ~Rachel Getting Married~」

2009年11月07日 | 映画~ら~
2008年  アメリカ映画


アン・ハザウェイ主演のドラマです。主人公キム(アン・ハザウェイ)は、薬物依存のためリハビリ施設に入所しているが、姉のレイチェル(ローズマリー・デウィット)の結婚式のために一時帰宅をする。しかし何年もリハビリ施設に入所しているキムと家族との間には溝があり、当然自分が花嫁の介添え人(メイド・オブ・オーナー)に選ばれると思っていたキムだったが、姉のレイチェルは別の友人に頼んでしまう。中毒患者である妹を信用できないのだ。


この映画の予告編を映画館で見たときの衝撃を、今でも忘れられられません。その予告編の中にいたアン・ハザウェイに、私の目は釘付けになりました。私の中のアン・ハザウェイのイメージが一瞬にして崩れ去ったほど。個人的にアン・ハザウェイはあまり好きな女優ではなかったのです。どの映画を見ても華やかで優等生で、何を見てもどんな役柄も同じ。きれいだけどそれだけ。そのうち消えていくだろうと思っていました。『プラダを着た悪魔』でも、頭がいい役のはずなのに、全然賢そうに見えなかったし(映画自体はそれなりにすきなのだけど)、「これは演技力による配役ではないだろう」と。それと前後して彼女の実生活でも彼氏が詐欺行為で逮捕とか、「やっぱり頭悪いんか…」と妙に納得したりして。女優としての奥深さを全く感じなかったのです(ああ、私ボロクソに言ってるわ…でも正直な感想です)。

それが、この『レイチェルの結婚』のなかのアン・ハザウェイはこれまでの役柄とは180度違う。同一人物とは思えないほど全く違う表情の彼女がそこにいました。私の中ではこの役が今までの彼女の映画の中で一番合っていると思います。華やかさの全く無い、むしろ汚れ役。ヤク中でセックス依存症に虚言癖まで併せ持つ最強の汚れ役です。そしてどの映画の中でも、「あたし、きれいでしょ?」とキラキラと輝いていたのに、この映画の中ではそんな星が瞬くようなキラキラ感は皆無。誰も触れられないような深い過去を背負った陰のある役に徹底的に徹していて、彼女のこの役にかける女優魂をまざまざと見せ付けられました。もう、文句のつけようが無い。各映画賞の主演女優賞ノミネート、文句なしです。


話が進むにつれ、キムの薬物中毒だけでは収まりきらない、もっと根深い問題がこの家族には潜んでいることが見えてきます。ヤク中であることが原因で起こしてしまった出来事が家族をどん底へ突き落とし、それから10年経っても彼女はリハビリ施設に入ったまま。自分を責めるけれども、ヤク中を克服することができない自分の弱さへの憤りとそれでもどうにもならないことへの無力感。もしかしたらその出来事を防げたかもしれないと自分を責め、家族から距離を置くようになった母親(デボラ・ウィンカー)。嘘だらけの妹を信用できず、責めたてる姉。それをどうにもできない父親(ビル・アーウィン)。誰もがその出来事に罪悪感と悲しみと、そして表立って触れられない後ろめたさを感じている家族の姿を、本当に丁寧に描いています。

すごく地味な作品で、暗くて、見るタイミングを間違えると落ち込みすぎてしまうんじゃないかと思うほどの作品ですが、とても丁寧に、そして実はなかなか分かち合えないけれど愛に溢れていて、いつまでも心に残る作品です。

この映画を見ながら、『普通の人々』(アメリカ映画1980年)を思い出しました。


とにかく、アン・ハザウェイの演技がすばらしいです。そして脇を固めている俳優たちもすばらしく、すべてがぴったりとパズルのようにはまった配役です。
そしてこの映画の監督はジョナサン・デミ。『羊たちの沈黙』の監督です。この映画の批評で「(監督作品の中で)『羊たちの沈黙』以来の最高傑作」評されたそうなのですが、異議なし!です。



おすすめ度:☆☆☆☆☆    抜群です。『愛を読む人』以来の衝撃です。

『40男のバージンロード ~I Love You, Man~』

2009年10月11日 | 映画~あ~
2009年 アメリカ映画


友人が映画館にこの映画を見にいって、お奨めされたので観てみました。恋人との結婚が決まり、その準備を始めるカップル。婚約者のゾーイには大勢の女友達がいるのに、自分には親友と呼べる男友達がいないことに気が付いたピーター。ベストマンを探し出すべく、あの手この手で「男友達探し」をすることに。

ベストマンというのは、英語圏の結婚式で新郎側の一番の親友が務める役割で、指輪の交換まで指輪を預かったり、結婚の準備を手伝ったり、とにかく信用されている人でないと頼まれないもの。日本にはベストマンの制度は無いけど、たとえば「仲人」を頼まれることが名誉であるように、ベストマンと言うのはものすごく名誉なこと。


さて、感想ですが、ベタベタのコメディーです。率直に感想を述べると・・・「映画館行かなくてよかった」。私としてはあまり楽しめずに終わりました。話が面白くないわけでもないし、テンポが悪いわけでもない。でも、楽しめない。その理由は、キャスティングなんじゃないかと思います。なんかね、映画の中のどのキャラクターにも気持ちが入らないのよ、観ていて。じゃあ人物像がうまく描かれていなくて印象が薄いのか、と言うとそういうわけでもない。ただ、俳優たちの演技を見ていて、気持ちが乗ってこない。

内容がベタベタなので、キャスティングもものすごくベタな方が私としてはよかったんじゃないかと思います。ベタなコメディーだからこそ、「ここ、笑うところです!」と言うところで笑えないと、観ている方が辛い。その笑いどころをしっかり作ってくれる俳優が、この映画の中には存在しなかったと思う。主役のピーター(ポール・ラッド)に、男友達をなんとしても探さなくては!という必死さがあまり伝わってこないし、ひょんなことから出会ったシドニー(ジェーソン・セゲル)と友情を育んでいくことになるのだけど、どうしてこの2人がうまくいくのか納得がいかなかったり。気が合うようには見えないのよ。シドニーも映画の中ではちょっと風変わりな性格なんだけど、それがうまく表現しきれていなかったようにも思う。ただ失礼なやつなのか風変わりなのか、その違いもよくわからなかった。ベン・スティラーとオーウェン・ウィルソンとか、もうものすごくわかりやすいコンビの方が、こちらも安心して笑える。


主役のピーターを演じたポール・ラッドの経歴を見てみると、これまでに数々のコメディー映画に出演している様子(『ナイト・ミュージアム』『40歳の童貞男』、最近では『Year One』)。そして親友候補のシドニーのジェーソン・セゲルも数々のコメディー歴あり。さらにこの2人は過去数年間でコメディ映画で何度も共演している。監督は、『ポリーに首ったけ(Come along Polly)』の人らしい。ベンを以前に使っているのね…。

ただ、もうこうなると、趣味の問題なんだと思う。友人は代絶賛。私はちっとも楽しめなかった。あ、ピーターの弟役のアンディ・サンバーグはよかったです。



ということで、

おすすめ度:無星   

だめ、私にはお奨めできない。



* 邦題が『40男のバージンロード』となったようですね。もちろん劇場未公開ですが(公開されてても行かなくて良いと思いますけど)、DVDでは発売されているのかしら?ということで、題名部分に邦題を追加しました。(2011年1月22日 追記)

「パブリック・エネミーズ ~Public Enemies~」

2009年08月23日 | 映画~は~
2009年  アメリカ映画


ジョニー・デップ、クリスチャン・ベイル主演のクライム・フィルムです。監督はマイケル・マン。

舞台は1930年代のシカゴ。ジョニー演じるマフィアのボス、ジョン・ディリンジャーとベイル演じるFBI捜査官の攻防を中心に、当時のシカゴで横行していたマフィアによる犯罪、しかし大衆からは支持を得ていたと言う彼らの存在を描いた作品です。ベースになっているのはノンフィクションの書籍。映画の登場人物も実際に存在した人々です。


私の感想を単刀直入に言いますと・・・長い。とにかく、長い。2時間以上の作品なんです。まぁ、面白ければ長さなんか関係なく楽しめるんだけど、正直途中で飽きてしまったのよ。実在の人物の物語を映画化することの難しさは十分承知しているけど(例えば『レイ~Ray』とか)、今回もほかの例に漏れず、でした。

この映画見たのは6月なんですが、もうほとんど内容を覚えてないくらい。そのくらい印象に残ってないんです。Wikipediaで確認するまで、クリスチャン・ベイルが出ていたこと自体もすっかり忘れていましたもの。それにしても最近のクリスチャン・ベイルはよく出てますね。もうすべての映画に出てるんじゃないかと思うほど、「またかよっ!」と突っ込みたくなるくらいに出てる。この前に感想を挙げた『ターミネーター4』にも出てるし。

映画の冒頭から引っかかっていたのだけど、配役もどうなんだろう…と。クリスチャン・ベイルがマフィア役だったらまた違った面白さがあったんじゃないかと思いました。クリスチャン・ベイルってこれまであまり悪役のイメージがないし、禁酒法時代の陰のあるマフィア役なら新鮮なんじゃないかと思う。ただ、確かにジョン・ディリンジャー本人の写真を見てみると、ジョニデが演じた彼と見た目が似ていると言えば似ているんだけどさ。


ジョニー・デップは、どのシーンを見ても「ジョニー・デップ」。マフィアなんだけど、なんだか悪そうにも強そうにも見えなくて、マフィアのボスとしての威圧感や存在感が薄いように感じました。娘が生まれてから『パイレーツ…』のような大作に出るようになったけど、個人的には昔のように小規模な癖のある映画の方がジョニー・デップにはあっているような気がします。彼の個性や存在感って独特で、正直なところなぜ彼が大衆受けするのか私には不思議でしょうがないんです。彼のことが嫌いとかそういうことではなくて、もっとわかりやすい男前とかかっこよさを持った俳優っていっぱいいるのに、なぜ彼がもてはやされるんだろう、と。それこそ好みなんて人それぞれ、と言われればそれまでなんですけど。彼の色を如何なく出せるのは、大衆作品よりも万人受けしそうに無い偏りのあるようなものの法があっているんじゃないかと個人的には思っています。前にジョン・キューザック主演の『1408号室』の感想を書いたとき、この映画はジョニー・デップ主演で見たかったと書いたら、「お前はただのジョニデ好き」という批判コメントが届いたことがあったけど、ああいうちょっとマイナー向けの、ちょっと変わった職業(まぁ、マフィアも十分普通ではないんだけど)や性格の人物を演じるのは抜群にうまいと思うのです。『シザー・ハンズ』や『ギルバート・グレイプ』とか。ここ数年だと、シャーリーズ・セロンと共演した『ノイズ』とか。


と言うことで、あんまり映画の内容には触れて無いので感想にもなっていませんが、私はあまり楽しめなかったと言うことです。会えて印象に残っている点を上げるとするなら、ジョニー・デップの相手役の女性はものすごく美しかったでと言うことでしょうか。ジョニー・デップは現在製作中で、お得意ティム・バートンとコンビを組んでいる『不思議の国のアリス』に期待しています。(『不思議の…』の中のジョニデの特殊メイク見た方いらっしゃいますか?期待が膨らまないわけが無い抜群のメイクで、絶対彼も楽しんでるはず)


パブリック・エネミーズの日本での公開は、2009年12月からだそうです。



おすすめ度:★


追記:2009年8月24日に一部文章を変更

「ターミネーター4 ~Terminator Salvation~」

2009年06月24日 | 映画~た~
2009年  アメリカ映画


SFが苦手の私ですが、『ターミネーター』『ターミネーター2』は別です。2なんて、弟がビデオを持っていたので、20回以上観てるんじゃないかと思います。しかし3は未だに未見。なんだか・・・観るのが恐ろしくて。前評判がよくなかったので、がっかりしたくなくて。ということで、3を飛ばしていきなり4です。


ジョン・コナー。大人になったんですね。ジョンを演じたのはクリスチャン・ベイル。さすが、期待を一身に背負う大役ですが、そつなくこなしていました。それでも映画を見ている最中、どうしても頭から離れなかったことが1つ。それはエドワード・ファーロングのこと。T2でのデビューから18年。現在31歳の彼なら、4で描かれているジョン・コナーを十分に演じられる年齢なわけですよね。確かにその後の彼はあまりぱっとした作品には出ていなかったけど、その作品からしばらく経ってから久しぶりに姿を見た『アメリカン・ヒストリーX』での演技は申し分なかった。ただ若さだけでキラキラと輝くような魅力ではなく、陰りのある彼の表情や抑えた演技はほかの同年代の俳優たちに比べてもずば抜けていたと思う。どうも前作の『ターミネーター3』でもキャスティングはされていた様子。いろいろな問題があり降板せざるを得なかったと言うのはなんとも悲しいなぁ、と。順調にいっていれば、間違いなく彼が今回の主役だったわけだし、やっぱりエドワード・ファーロングのジョン・コナー、観たかったです。


映画の所々に、『2』を髣髴とさせるシーンが何箇所か。おまけ映像と言うわけではないけど、サービスショット的な。でもどうしても私には「わざとらしく」見えてしまい、ちょっとしらけたり。話の内容は期待を裏切ることなく、まぁ満足の仕上がり。

この映画のキーとなっている役柄を、サム・ワーシントンと言うオーストラリア出身の俳優が演じています。この映画ではじめてみる俳優なのですが、もう初っ端から、何処と無く「ベン・アフレック」に雰囲気が似ていて(私には、よ)もうそれだけで映画に集中するのが難しくなりました。ええ、ベンが苦手なんです。

ジョンの奥さんの女優さん(ブライス・ダラス。ハワード)が、なんとなくイメージと合わないように思ったのだけど、本来はこの役、シャルロット・ゲンズブールが予定されていたらしいです。シャルロットのほうが、間違いなく合ってるわ。なんだか所々残念だったわ。ブライスさん、どっかで観たことあるような…と思ったら、M・ナイト・シャマランの『ヴィレッジ』『レディー・イン・ザ・ウォーター』のあの方だったのね。独特の雰囲気のある方なのよ、この人。うまく説明できないんだけど、地面から1センチほど宙に浮いてそうな(わかります?この意味合いを共感してくださる方、いらっしゃるかしら?)。そう、そういう独特さがある人だからこそ、もっと癖のある役のほうが合っていると思うのよね。


重要な役どころのアジア系の女性(ムーン・ブラッドグッド)の、戦闘時のメイクが“REM”を思い起こさせたり、みんな生きるか死ぬかの戦時中だというのに、ジョンの奥さんは出てくるたびにファッションが違ってたり。シュワちゃん、別に無くてもよかったんじゃないか、とか。面白いことは面白かったけど、作品に集中できたかと言うと実はそうでもなかったと言うのが実のところです。まぁ、1や2がものすごく好きだったので、それと比べてみてしまうと言うのは仕方が無いし、否応無くその作品への期待値やハードルは高くしてしまっていたと思いますが。

でも、観て損は無い作品です。5も予定されているとのことなので、このシリーズのファンの方はぜひ。


写真はまた後ほど。

おすすめ度:☆☆☆