映画食い倒れ。

~映画は人生のデザートです~

個人的覚え書きのため、たまにネタばれありです。

「ドリームガールズ ~Dreamgirls~」

2009年05月18日 | 映画~た~
2006年  アメリカ映画


やっと観ました。劇場で公開されていた時からずっと見たかったのだけど、今まで機会を逃してきたのよね。

モータウン・ミュージックの創成期から音楽のスタイルを少しずつ変えていく時代の流れを、3人の女性歌手を中心にその業界の当時の様子を描いた作品。


登場人物の役柄は、実在のモータウン音楽の歌手やプロデューサーたちがモデルになっているそうで、思い浮かぶ人物像がチラホラ。ミュージカル映画なのだけど、ミュージカル映画が苦手な人でも音楽好きなら楽しめる作品だと思います。そういうあたくしも、実はミュージカル映画苦手。確かにこの映画を見ているときも、「いや、今歌わんでも」と思うところは数箇所あったんだけど、それはしょうがないよね。だってミュージカル映画なんだから。それでも、ケイト・ハドソンやビヨンセ・ノウルズの歌とステージが盛りだくさんで、見ごたえ十分。エディー・マーフィーの器用さには、本当に驚かされます。なんか、この映画の中の役柄、いろんな意味で彼にぴったりで言いキャスティングだなぁと妙に納得です。ほら、メルB(スパイス・ガールズね)との間に子供いるし。


自分たちの成功のために、ケイト演じるエフィーを「あんたが私たちが抱える問題のガンなのよ!」と皆でよってたかって彼女をなじるシーン。ものすごくアメリカだなぁと感心したわ。確かに彼女の意思の強さは誰もが受け入れられるものではなくて、時に反発を招くと言うのもわかるんだけど、より華やかな外見を求めるために切った、歌のうまさよりも誰もが受け入れやすい歌声を、という彼らの「成功」のために理不尽な選択を迫られた彼女の気持ちや、彼女が強い態度を取ってしまう理由は無視。まぁ少しは考えたんだろうけど、彼女を囲んでなじる(しかもべらぼうにうまい歌声で!)のは、うーん、日本人とは違うかも。イギリス人とも違うような気がする。「ショウビズの世界だから」と言われたらそれまでなんだけどさ。

でもただ華やかなだけでこの映画は終わらなくて、映画が進むにつれて登場人物たちの考え方や性格が変わっていく様も描いているところはいいなぁ、と思います。

はじめはただ3人のうちの1人だったビヨンセが、どんどん磨かれて美しくなっていくのね。本当にこの人、美しい!驚きの美しさです。ケイト・ハドソンの歌唱力の高さは、誰もが納得で、そしてこの映画の中の楽曲もすばらしい。ある友達は、この映画を劇場で見た後、その足でサントラを買いに行ったといっていたけど、その気持ち今ならわかります。

ケイトのお兄さんCC役の彼(キース・ロビンソンと言うらしい)、うまかったなぁ。



おすすめ:☆☆☆☆

「アメリカン・ヒストリーX ~American History X」

2009年05月18日 | 映画~あ~
1998年  アメリカ映画


10年位前に見て、今回2度目。とにかくエンディングが衝撃的で、いつかもう一度見てみようと思っていた作品。2回目ということもあって物語の概要は大体覚えていたし、今回は俳優たちの細かな演技を堪能できました。


物語の舞台はアメリカ。高校生だったデレクは、黒人に父親を殺されたことをきっかけに、異常なまでに人種差別主義に傾倒していく。ある日自分の車を盗もうとした黒人を殺害し、刑務所に3年間服役。その間弟のダニーは、デレクが所属していた白人至上主義集団に属し、ヒトラーを敬愛。兄の姿を追い求め、尊敬していたからこそ彼を真似たはずだったが、出所したデレクは全くの別人になっていた。


主演はエドワード・ノートン。弟役にエドワード・ファーロング。エドワード・ノートンを初めて見たのは、リチャード・ギアと共演した『真実の行方』。このときの役も衝撃だったわ。そして抜群に演技がうまくて、役柄の特徴を演じ分けられるのよね。演じられる役柄が幅広いだけでなく、同じ人物の中のいろんな側面を明確に表現できる。調べてみてわかったけど、この『真実の行方』が彼の映画デビュー作で、アカデミー賞助演男優賞にノミネートされたそう。あの演技なら、納得よ。演技力の高さから、芸歴長いんだろうなと思っていたけど、映画デビューが1996年。この『アメリカン・ヒストリーX』が1998年だから、デビュー2年目であの存在感と演技力かぁ。あそこまで様々な役を演じきれる俳優って、なかなかいないわ。

彼本人の顔の作りは「優男」だと思うのだけど、それこそ今回のアメリカン・ヒストリーXで演じたDerekのような優男とは正反対の男も演じているし、それに違和感が全く無い。この映画の中だけでも1人の人物の3つの表情を、もう見事としか言いようの無いほどに演じ分けていて、その怪物振りには脱帽です。服役前・出所後、そしてデレクの高校生時代もエドワード・ノートン自身が演じているんだけど、そのシーンを初めて見たときは「似てるけど、いやー、若い俳優を使ってるんだな」と思ったほど。高校生役さえも違和感が無いの。なんかすごすぎて、すごい以外の言葉が出てこないくらい。黒人を殺害した後の彼の瞳孔の開いた「イッちゃってる」表情の恐ろしいこと!!!


そしてエドワード・ファーロング!最近見ないわよね。ターミネーター2で一気に知名度を上げて、当時は日本の女子中高生の間でもアイドルとして大人気だったのを覚えてるわ。彼がカップヌードルだったかインスタント・ラーメンの日本のCM(ホットヌードルでした)に出てたのを覚えてる方、います?それに、日本語でCDなんかも出しちゃったりして。同じクラスの同級生の女の子、買ってたもん。私はなんか恐ろしくて聴けなかったけど。ターミネーター2のあとしばらくして彼の姿を見たのが、今回のこの作品。彼も、ただ見てくれがいいというだけではなくて、演技がうまいし雰囲気があるというのを再確認しました。10代の男の子なんだけど、若さや初々しさではなく何処と無く陰りがあり、それと同時に透明感もある。アイドルはアイドルなんだけど、独特だったなぁと思う。最近は映画に出てるのかしら?最近の彼を見たことがないので今はどうなのかわからないけど、子役として本当にうまかったなぁ、としみじみ思うわ。


この映画を見ながら、思い出した映画が2本。『This is England』そして『クラッシュ』。10代の子供をある種「洗脳する」と言う意味で、ダニーが白人至上主義に傾倒していく様が、『This is…』の少年・・・に。『クラッシュ』はこのブログに感想をあげていないけど、こちらもアメリカの人種差別の負の連鎖を描いた作品です。これもものすごく衝撃的な映画で、私の感想を一言で言うなら「Helpless」。救いようが無い。映画が悪いとかそういうことではなくて、描いている内容がね。映画としてはいい作品です。でも何度も見たくはない。


話を今回の作品に戻して…。デレクがあれほどまでに人種差別主義に傾倒していったきっかけは彼の父親の死なのだけど、そうなっていったのは家族の中で彼だけなのね。そこにはやっぱり理由があるのね。アメリカの人種差別問題の根深さ。映画の中ではさらっと触れられているんだけど、その「さらっ」とほんの短いシーンの中に、その根深さがしっかりと描かれていて印象的です。刑務所の中の人間関係、「ああ、どの世界も一緒なんだ」と妙に納得させられたり。デレクは素直で、利害関係のためにその主義に走ったわけではないからこそ、深く深くそこにはまり込んでしまった。3年間も待っていたデレクの彼女の、彼に対する態度の豹変振り(理由はデレクが変ってしまったからなんだけど)は、その主義を主張する集団の「浅はかさ」がよく表現されているように思います。

そうそう、同じ集団に属しているふとっちょがいるんだけど、彼って『タイタンズを忘れない』に出てた彼かしら?どうやらEthan Suplee(イーサン・サプリー)と言う俳優さんだそう。タイタンズでは黒人差別が当たり前の時代に、誰よりも早く黒人チームメイト(アメフト)と打ち解ける役柄なのよね。間逆の役どころで面白いです。



おすすめ:☆☆☆☆★

ネット不調。

2009年03月24日 | Weblog
家からネットに接続できなくなってしまいました。おそらく使用しているルーターに問題があると思うのですが、復旧のめどが立ちません・・・ええ、イギリスですから。何もかもがスムーズにはまいりません。

今後の感想文の予定は

カレンダー・ガールズ
ジュノ
俺たちのフィギュアスケート
フライド・グリーン・トマト
パプリカ
・・・

「ヴェラ・ドレイク ~Vera Drake~」

2009年03月11日 | 映画~は~
2005年 イギリス映画


50年代のロンドンが舞台。夫と2人の子供たちと慎ましやかに生活する労働者階級の女性ヴィラ。働き者で穏やかな性格から誰にでも好かれ、信頼される彼女。そんな彼女が突然逮捕される。金儲けでもなんでもなく、ただ困っている若い女性を助けてあげたいがために行っていた中絶行為だが、医師免許を持っているわけでもなく、法に触れたのだ。



公開当時、イギリスで賛否両論を引き起こしたと言うこの映画。被告となったヴィラの有罪が確定したところで映画は終わります。この映画に心が救われるような要素は皆無です。どこまでも暗い。でも闇雲に見ている側を落ち込ませようとしているのではなく、これが当時の労働者階級の人々の生活。わざと明るく描いたり、過剰に暗く描いているのではなく、淡々と、当時の空気や彼らの生活、人生の辛さを描いた作品。…と解説してくれたのは、一緒にこの映画を見ていたイギリス人。私もこの映画を一人で見てたら、「何が言いたいんだ」とその意図を汲み取れずにいたと思います。


中絶を選んだ若い女性たちというのもいろいろで、快楽のためにセックスをし子供を宿して、中絶なんかいとも簡単に考えている中産階級の娘もいれば、生活のための売春が原因だったり、男性に強制されたと言う男尊女卑時代を象徴した背景も。ヴィラは、彼女らから一銭たりともお金を受け取ることなく、ただ「困っている若い女性を助けてあげたい」という一心で、誰もやりたがらないこの「仕事」を始める。


決して裕福ではなく、日々の生活だって余裕があるわけでは全くない。一生懸命働き、その日その日を生きる彼らの生活。息子は仕立て屋として腕が立ち、娘の結婚が決まったところだった。家族がその幸せをかみ締めている最中に、突然警察が現れる。

調べの中で友人だった女性が、彼女が中絶を施した女性やその家族から金銭を受け取っていたことも発覚した。彼女には一銭だって入ってはこなかったのに。押収された証拠品の中には、チーズおろしとピンク色の石鹸(殺菌効果が高いと言われる当時特有のものらしい)。若い女性たちに優しく親身になって行った結果が逮捕、そして有罪。



公開当時の論争の様子を知る由はないが、金儲けでも何かやましい理由があるわけでもなく、ただ女性たちを助けたいと言う思い、そして実際に救われた女性たちが大勢いたこと、それなのに判決は全く容赦のないもので救いようのない話の展開に賛否が分かれたのではないかと思う。


ヴィラを演じた女優(イメルダ・スタウトン)の演技もすばらしく彼女が演じたヴィラの「人柄」が更に見ている側を落ち込ませる。「どうにかしてヴェラを救うことはできないわけっ?」と言葉にできないほどのやきもきとした感情に襲われます。このやるせなさ。救いのなさ。でもこれが、当時の労働者階級の人々の現実。この女優さん、たくさんのイギリス映画に出演している方なのだそうですが名前を知りませんでした。『恋におちたシェイクスピア』に出ていたと聞いて「ああ、あの人っ!」と衝撃です。ほかにも『チキン・ラン』で声優としての出演や、『ハリー・ポッター』とものすごく出演作が多いです。


たった今ウィキペディアを見るまで知りませんでしたが、この映画、マイク・リーの監督作品だったのですね!この映画は、マイク・リーの子供のころの記憶や思い出と結びついているのだそう。実は最近、マイク・リーの作品で気になってるものがあってDVDを買おうかどうか迷っていたところだったのです。彼の作品は『秘密と嘘』しか観たことが無いのですが、何せ中学生、高校生の時だったので楽しめた記憶も物語の内容もさっぱり覚えていません。もう一度観てみたいなぁ。そしてさらに驚いたのが、この映画が日本で公開されていたと言うこと!マイク・リーの作品なら、小さい映画館で上映されていたのでしょうね。たまたまテレビでやっていたので見たのだけど、この映画の名前も全然きいたことありませんでしたわ、あたくし。



見ていて楽しい映画ではないし、見るタイミングを選ばないと気持ちが落ち込んで大変なことになるような作品。それでもこの映画がいいと思うのは、イギリスの社会に生きる人々の生活の一編を、飾り立てることなく正面から見据えた作品であると思うから。私たちが普段テレビで目にする、おしゃれなロンドンの街並み、王室の生活とはかけ離れた、しかしこれも本当のイギリスの一面であることを認識するのに役立つ一本だと思います。



おすすめ度:☆☆☆★


「スラムドッグ$ミリオネア ~Slumdog Millionaire~」

2009年03月06日 | 映画~さ~
2008年 イギリス映画


インド・ムンバイのスラムに生まれ生活していた2人の兄弟と1人の幼馴染の成長を軸に、主人公が「クイズ・ミリオネア」に出演し大金を得るまでを描いた物語。


本当はベンジャミン・バトンを観に行ったのだけど、この日は「オレンジ・ウェンズデー」。イギリスではオレンジと言う会社の携帯を使用している人は、系列映画館で半額で映画を見ることが出来るのね。さらにアカデミー賞の後と言うこともあるのかないのか、チケット売り場は長蛇の列。結局映画の時間までにチケットは買えず、もう1つ見たかった映画『スラムドッグ・ミリオネア』がその15分後からだったのでこちらに変更。



クイズ・ミリオネアは全世界で放送されていて、スタジオのセットも音楽も、司会者の番組の進行の仕方も全く一緒。もともとイギリスの番組だったのね。へ~、知らなかったわ。インドでも放送されてるのね~。主人公のジャマールはこのクイズの回答者。もう少しで全問正解で賞金に手が届く。彼の足を引っ張ろうとするトリックにもめげず、彼は全問正解を果たす。「事前に問題と答えを知っていたのでは」と言う疑惑も湧くが、もちろんそんなわけはなく、すべてのこたえは彼がたどってきた人生の中にあった。



とにかく、違う。



監督はダニー・ボイル。『トレインスポッティング』のひとね。あの後ディカプリオの『ビーチ』やここ数年だと『28日後』とかで有名な監督。まぁ、『28日後』は見てないんだけど。今回の映画は彼のカメラワークの面白さ、疾走感がすばらしい。冒頭の子供たちが走り回るシーン(いや、映画全体で走り回ってるけど、特に冒頭)は最高。そしてインド独特の色使い。洋服や洗濯物の色だったり、街の風景だったり,埃っぽかったり、原色が押し寄せてきたり。「ビーチ」を見たときは、ディカプリオの名前と存在が大きすぎて、なんだか旨やけになった記憶があるんだけど、トレスポも今回のスラムドッグも、まだそこまで有名でない、もしくは全くの無名の新人たちを起用して思いきった演技をさせるのがものすごくうまい監督なんじゃないかと思う。



そう、俳優たちがものすごくものすごくいいの。子供時代から始まって現在に至るまでの時間、1人を3人の俳優が演じているのね。子供時代、青年期、そして現代。ジャマールとおにいちゃんのサリム、幼馴染のラティカも当然だけどそれぞれ3人が演じているんだけど、そのすべての俳優たちが、誰一人色あせることなく、見事にすばらしいのね!これって奇跡に近いと思うのよ。どんなにいい映画でも、脇役を含めてどこかにがっかりな誰かがいるものなのよ。それが全然ないの。お兄ちゃんは、青年期にジャクソンファイブ時代のマイケルに、そして現在に至ってはサミュエル・L・ジャクソンになっちゃうのね(謎・・・いや、私にはそう見えただけ)。良くぞ見つけてきたわね、とため息混じりにボイルにつぶやきたいくらい(何様?)。


主役のジャマールを演じたデイブ・デパールはイギリス人らしいわ。イギリスの『スキンズ』と言うドラマに出ていて人気があったとのこと・・・『スキンズ』は10代向けのドラマなのね。ブリストルと言う街が舞台で毎年やってるんだけど、見たことなかったわ。2008年の『スキンズ』には、『アバウト・ア・ボーイ』の子が出てたのは覚えてるんだけど。


この映画は構成上、時代が前後するのね。現在と過去を言ったり来たりするのだけど、それぞれの時軸がしっかりしているからか、全く話がぶれたりしないのね。


まさか「クイズ・ミリオネア」があんなに大々的に映画のテーマになるとは思っていなかったわよ。映画の名前からの憶測(スラム出身の人がお金持ちになる)以上の情報は全くなしだったから、いやーびっくりしたわ。



何となく『フォレスト・ガンプ』を思い出したのよ。映画の構成が。いや、全然違うんだけど、『フォレスト・ガンプ』は1人の男性の人生が、アメリカの栄光に見事に沿っているわけじゃない?この映画は、ジャマールの人生の中に、ミリオネアになるべく質問のすべての答えがあるわけよ。あ、フォレスト・ガンプは好きじゃないんだけどね。


スラムにの生活の現状、問題もきちんと描いていて、観ていられなくなる場面もあります。しかしそんな中でもイギリス映画が得意とするユーモアや笑わせどころもきちんと丁寧に作られていて、とにかくテンポのいい作品。非凡です。

ラティカが美しくて、ずっと彼女を見つめていたくなります。

最後のエンドロールまで目が話せません。あの物語の後に、このエンドロールは洒落が聞いていて最高です。ボイルさん、見直しました!



日本公開は2009年4月18日から。



おすすめ度:☆☆☆☆☆


「愛を読むひと ~The Reader~」

2009年02月22日 | 映画~あ~
2008年 アメリカ・ドイツ映画


ケイト・ウィンスレットがゴールデングローブ賞で主演女優賞を獲得したことでも話題の作品です。予告編でもポスターでも、ケイトとレイフ・ファインズの名前が大きく書かれているので、2人を中心とした話かと思ったら・・・いや、まぁそうなんだけど、俳優としてはレイフ・ファインズではなく、彼の若かりしころを演じたドイツ人俳優のダフィット・クロスがメイン。

舞台はドイツ。学校帰りのマイケル(ダフィット)は体調不良で路面電車を途中下車。フラフラになっていたところを、ハンナ(ケイト)に助けられる。かなり年の離れた二人だが、これをきっかけに2人は関係を持ち始める。しかし突然ケイトは消えてしまい、否応無く2人の関係は終わってしまう。その後法律の勉強をするためにロースクールに進んだマイケルは、思いがけないことろでケイトの姿を目にし、彼女の過去を知ることとなる。


映画を見にいった時、第二次大戦のナチス・ドイツによるユダヤ人虐殺にも関係する話だと言う程度にしか知識が無い状態でした。確かに戦争が背景にはあるし、映画の骨組みとして土台になっているのだけど、映画の舞台となっているのは戦後のドイツ。予告編を見る限り、ものすごくロマンチックな印象を持っていたのだけど、実際はそれ以上の作品でした。

マイケルとハンナの年齢を超えた愛情。それはものすごく純粋だけど、ただきれいに描いているだけではなく、それぞれの感情をしっかり描いている。10代の少年のまっすぐで時に痛々しくもある、力強くも壊れやすい愛情。それに対して、過去を背負って、さらに常にコンプレックスと戦いながら生きてきた21歳も年上のハンナの、大人の女性としてのしんの強さ、つややかさ、そして不器用さ。二人の感情のゆれが映画を通して手に取るようにわかるほど、とにかく演技が卓越していてため息が出る。ケイトの主演女優賞の受賞は、この映画を見れば誰も文句は無いと思います。

そしてハンナが消えてしまった後、2人の糸は切れることなく再び引き戻されます。でもそれは恋人同士としてではなく、誰も予想しなかった形で。

ハンナの「どうして?」と見ているこちらが彼女を問い詰めたくなるようなみちを彼女は選択し、そして2人にとって幸か不幸か再び出会う日がやってくる。静かだけれど劇的に話は進み、胸を締め付けられる。どうしてそこまでして彼女は「それ」を守らなくてはならなかったのか。自分が彼女の立場だったら、たぶん「それ」よりも自分のその後の人生を確保する方が楽なように感じるけれど、彼女にとってはそうではなかったのだろう。そして月日は流れ、その愛情のカタチは変わっても、2人は強靭な何かにつながれていて、そしてお互いを大切な存在であると認識している。

ものすごく切ないのだけど、「みじめ」であるわけではない。

原題は『The Reader』。単純に考えればこれはマイケルのことなのだけど、場面によってそれはハンナともとることができる。うまいネーミングだな、と唸らされる。


ウィキペディアで調べてみたら、ハンナ役をニコール・キッドマンが演じる可能性もあったとのこと。いやー、ケイトでよかったと思うわ。ニコールだと女優としての「綺麗さ」が前面に出て、過去の苦しみを背負った影の部分をうまく表現できなかったんじゃないかと思う。あくまで私の想像だけど。そのくらいケイトはよかった。めぐりめぐってケイトに回ってきたこの役。本当にすばらしかった。彼女の女優魂を見せ付けられた思い。監督が『めぐりあう時間たち』の人(スティーブン・ダルトリー)と聞いて納得。重い話なのだけど、じっくりと話を進めながらも見ている側をどっぷりと落ち込ませてしまうことなく、だからといって軽い作りにはしない、実にうまくバランスの取れた作品だった。

マイケル役のダフィット・クロスの青臭い感じ、そして大学生になった時には青年として成長している雰囲気を演じ分けていて印象に残っている。最近のドイツ人俳優というと、『グッバイ・レーニン』に主演して、その後『ボーン・アルティメイタム』『ラベンダーの咲く庭で』など各国の映画にも出演するようになったダニエル・ブリュ-ルが印象に残っているのだけど、ダフィット・クロスも今後の活躍が楽しみです。


メロドラマっぽい展開あり、裁判ドラマあり。いろんな側面を併せ持った作品です。確かに大きな映画賞を取ってはいるけれど、明らかに大衆向け作品ではありません。派手な展開がある作品でもないし、どちらかと言うと地味にスローに話が流れていきます。イギリスでも人気があるかと言われれは、正直そうではありません。日本ではきっと大きな映画館で上映されるでしょうが、好き嫌いはかなり別れると思います。10代、20代前半くらいの年齢だとちょっと楽しめないかも。でも、私個人としてはかなりおすすめ。映画館で見れてよかったと思える作品です。


日本での公開は、2009年6月19日から。


おすすめ度:☆☆☆☆★

「マッチポイント ~Match Point~」

2009年01月30日 | 映画~ま~
2005年  イギリス映画


ウッディー・アレン監督、スカーレット・ヨハンソン主演のサスペンス。ウッディー・アレンの映画って、たぶんまともに見たことあるのって「アニーホール」のみ。主演のダイアン・キートンがキャラクターもファッションもとても魅力的で、男女が出会って別れるまでを描いた物語なんだけど、その表現法も面白くて楽しめた覚えがあります。

でもそれ以外のアレン・フィルム『ハンナとその姉妹』『世界中ガアイラブユー』は苦手で何度か手を出したけど(5年以上前)途中でギブアップだったり。アレン独特の単調なテンポに飽きてしまうのよね。好きな人は好きなんだろうけど。


で、なぜか見ることになったマッチ・ポイント。スカーレット・ヨハンソンが好きなので、彼女がアレン映画の中でどう撮られているか興味があった。映画は、まさしく「アレン映画」でスロースタート。全然テンポが上がらない。たぶんひとりで見てたらまた途中で止めてたと思います。もちろんそのゆっくりなテンポの中でだって物語は進んでいくし、いろいろな展開があるのだけど、間延び?たぶんこれがアレンのリズムなんだけど、私が楽しめるリズムではないのね。映画館で見てたら、確実に寝てた。断言できるわ。


これだけ、展開が遅いとか間延びとか言ってるけど、忘れちゃいけない。これ、サスペンスなのよ。こんなに緊張感のないサスペンスも珍しいと思うんだけど、でもサスペンスなの。私的に物語が動き始めたのは、最後の30分(遅っ)。


ああ、なんだか今になってはスカーレット・ヨハンソンの色っぽさしか覚えてないわ。クラシカルな洋服、女性らしいファッションがものすごく似合うのね、この人。若いんだけど、艶があって落ち着きがあって。そらこんな人が身近にいたら、私が男だったらメロメロになるわ。この映画の魅惑の女性としてぴったりなのね。

あ、そうそう、全然内容について触れてなかったけど、彼女の存在が男性を惑わし、彼の立場を危うくさせてしまうのね。彼女が物語の核なわけ。たまに映画の中ですごく納得のいかない「魅惑の女性(もしくは男性)」がいるんだけど、彼女はまさに!なのよ。え?具体例??ええっと、『トロイ』の中でオーランド・ブルームの彼女?運命の女?役の人。この人がいたがためにトロイの中で彼らは国を捨てて逃げることになるんだけど、まぁ納得のいかない「運命の女」なわけよ。見た目がね。いや、美人なんだけど・・・魅惑的には映っていないのよ。もう、いいんだけど。


ということで、この映画の私的見所はスカーレット・ヨハンソンの魅惑オーラでございます。若いのにすごいわ、あの人。


この映画、アメリカ映画だと思い込んでたら、イギリス映画なのね。へ~。




おすすめ度:☆


「ウォーリー ~WALL-E~」

2009年01月29日 | 映画~あ~
2008年 アメリカ映画


昨年の12月に帰国した際、日本の本屋の店頭でこの『ウォーリー』のコマーシャル映像が何度も何度も流れていたのね。「700年間ずっとひとりで掃除をし続けていたお掃除ロボット」(←記憶あいまい)みたいなフレーズが頭を駆け巡るわけ。もう、そのフレーズ聞いただけで泣きそうになったわよ。700年間って。もうさ、可哀想すぎて、映画の中とはいえそういう設定にしたアニメーター?監督?製作者??とにかく作った人に「人でなし!」と敵意を持ちそうになるほど。いじめだわよ、こんなの。酷すぎるわよ。ということで、帰りの飛行機の中で見ました。


映画の中ではなんでウォーリーだけが地球に残されていて、一人で黙々と掃除を続けなきゃ行けないのかは描かれていなくて、状況説明がちょっと足りないような気がしました(←仲間はみな壊れてしまったらしい)。映画は、うーん、なんか『モンスターズ・インク』のモンスターがキティーを連れて逃げ惑うシーンみたいな感じ。あのシーンが1つの映画になったような。それなりに楽しめるんだけど、満足度が低いのよ。

人間たちはゴミだらけの地球を捨てて、宇宙船で生活しているのね。仕事は全部ロボットの任せて、人間はリクライニングチェアに座ってるだけ。暇つぶしのテレビやゲーム、スカイプみたいなテレビ電話。その椅子からは降りることも離れることもなく、テレビ電話以外直接誰かと話をすることがないのね。食べ物も飲み物の、呼べばロボットが持ってきてくれる。異常な空間。でも、思ったわ。「映画の中の話」、「アニメ」と割り切ってみていられないから、「異常」だと言う感情が生まれるのよね。そう、なんかそのうちそういう社会が出来上がるんじゃないか、という不安を煽られたのよ。人間が「ただ」生きているだけの状態。この間の『ディファイアンス』と対極なわけよ。生き方が。動かないから、皆丸々太って骨も退化。現代社会へのアンチテーゼなのかしら。ロボット云々よりも、こっちのほうが気になって仕方なかったわ。船長がヒーローになり、人々の歓喜喝采を受け地球に戻ろうとするところは、とっても「アメリカ」。ここにもヒーローがほしかったのね。


ウォーリーが探して大切にしてきた植物の芽。『サンシャイン』を思い出しました。こちらはあまり好きではなかったけど。



この映画、残念だったのは、描こうとしているテーマはいくつかあるのだけど、どれもなんか中途半端に終わっていてどれも描ききれてないのね。子供向けだけどきちんと問題提起ができ、しかも面白く、大人が見ても楽しめる映画ってたくさんあるけど、これは表面だけをなぞらえた感じ。まぁ、問題提起をしようなんてさらさら思っていないのかもしれないけど。


ただね、ウォーリーは文句なくかわいいのよ。ロボットを「かわいい」と言うのはちょっと自分の事ながら許せないんだけど、それでもかわいいわけ。ウォーリーが悲しそうな表情をすると、胸が締め付けられるほど。だって、700年も一人で働いてきたのよ?もうこれ以上かわいそうな思いさせないでよ!と。あ、なんか私、設定に泣かされてるわね。実際機内で涙したもの(まじ)。


大人にはちょっと物足りないような気がします。子供向きかな。



おすすめ度:☆☆★

『バベル ~Babel~』

2009年01月25日 | 映画~は~
2006年 アメリカ映画


どこでこの映画の感想を読んだのか聞いたのか、その情報の出所は覚えていないけど、「絶望的な気分になる」と言っていたのがとても印象に残っていた。そういう映画の場合、あくまで私個人の場合だが、「見るタイミング」を誤ると、その後自分が落ち込んでなかなか回復できなくなったり大変なことになる。シリアスな映画や考えさせられる映画の場合、自分がすでにちょっと元気がないときだったりするともう大変。その後の生活に影響を及ぼすほど落ち込んだりする。大袈裟じゃなくて、これ、本当に。

だから、「絶望的な気分になる」という感想を聞いて、「これは気をつけねばいけない作品だ」と警戒していた。世界中で起こった、一見何の関係もないような出来事が、本人たちも気づかぬところで繋がっているという内容の映画。その中で東京も描かれていて、役所こうじと菊池凛子の演技の評判が良いとも聞く。ものすごく見たい。でも結局「うまいタイミング」が見つけられず、映画館には行かなかった。



そして先日、やっといいと思えるタイミングがめぐってきた。2年間蓄積された期待を裏切らないすばらしい映画だった。そして少なくとも「絶望的な気分になる」映画ではなかった。いくつかの物語が同時進行で進められ、皆がどこかで繋がっているという作りは『ラブ・アクチュアリー』『クラッシュ』などと同じ手法なのだけど、『バベル』ではそのつながりをお互いに認識していない。日々のちょっとした出来事が、別の国での大きな出来事に繋がっているのだけど、そのつながりが本人たちには見えていない、と言うのがものすごく皮肉で同時にものすごく現実的。


出演している俳優陣はものすごく豪華で皆主役級なのだけど、話がそれぞれに独立しているからかお互いの個性を殺しあうことなく1つの映画の中で共存しています。やっぱりお気になるのは菊池凛子さん。演じた女の子の役柄の過激さも当然あるのだけど、台詞が少ないのにどんどん彼女の世界に引き込まれていきます。10代の女の子の飾り気の無い素直な感情が、台詞が無くとも表情から存分に伝わってきました。

最近特に、日本が舞台の一つとして描かれる作品が多いですが、この映画は結構うまく描けていたんだじゃないかと思います。ただ、ファーストフード店と思われるお店で、茶碗と箸で食事をしている光景は無理やり日本らしさを埋め込んだ感が強くて「ハリウッドの中の日本」を抜け出せていないように感じましたが。

ウィキペディアでこの映画についての項目(2009年1月25日現在)を読みましたが、菊池凛子さんが聾者を演じたことに関しての反対の動きがあったんですね。ここ読むまで知りませんでした。手話と聾者の認識にマイナスの影響を与えると言う理由だそうですが。確かに凛子さんの演じたチエコはの行動はものすごくショッキングだけど、聾者全員に彼女のイメージを重ね合わせて見るかといわれると、私に関してはそういうことはありません。ただ、そういう障害を持った人が身近にいない人、もしくは少しでも偏見を持っている人にはそういう感覚を持たれる可能性が無いとは言い切れないな、と思いました。少なくとも私はこの記事を読むまで、そこまで想像できませんでしたが。ただ、彼女の演技はすばらしかったことは事実。そしてこの映画に描かれた聾者の女子高生たちの日常を見ることで、今まで考えたことの無い視点だったので考えさせられたし、そういう現状があるということに気づかされよかったと思います。


リチャードがベビーシッターの女性を電話で罵るところとか、スーザンが彼に再び心を開き始めるところとか、孤独な心を抱えた女子高生の葛藤やそれゆえの行動とか。人間の美しさや醜さや、滑稽さ。そういう素直な感情の側面をうまくえがいた作品だと思いました。

リチャードとスーザンの面倒をずっと見てくれたツアーガイドにお金を渡そうとするシーン。結局彼は受け取りませんでした。メキシコ人女性が共に迷子になったアメリカ人の子供たちを懸命に救おうとするシーン。チエコと父親が向き合うシーン。それのシーンを見たとき、確かに暗いし重いし、絶望的な面も描いた映画なのだけど、実はとても前向きなメッセージがふくまれた作品であると感じました。




おすすめ度:☆☆☆☆


『ディファイアンス ~Defiance~』

2009年01月20日 | 映画~た~
2008年・2009年  アメリカ映画



息を吐く間もない展開。まさにこの言葉がぴったりの映画だった。第二次大戦下、ナチス・ドイツがユダヤ人を虐殺、強制収容所に収容するために「ユダヤ人狩り」を行っていた時代。4人の兄弟が先頭に立ち、何とかナチスの追っ手から森へ逃げ込んだユダヤ人たちとともにコミュニティーを形成し、戦禍を生き延びる物語。実話を元にした映画です。


主演のダニエル・クレイグは007の役柄と「戦う男」という点は共通しているのですが、なんていうの?ベクトルが違うとでも言うのかしら。スマートな身のこなしのイギリス政府の孤高のスパイとは対極の、森で身を潜め仲間とともに戦う泥臭さのあるヒーローです。彼が長男トュービア。次男がザス(リーヴ・シュレイヴァ-)、三男アザエル(ジェイミー・ベル)そして四男アーロン(ジョージ・マッケイ)。まぁ、この兄弟たちの年が離れすぎているというのは目を瞑りまして。この3人がまったく兄弟には見えないのだけど、もうほんと、そんなことはどうでもよくて、それぞれのキャラクターが立っていて特に上3人の配役で映画が締まっています。


やっぱり好きなのでこの人を褒めずにはいられないのだけど、三男を演たジェイミー・ベル。『リトル・ダンサー』に始まり、テレビドラマの『バンド・オブ・ブラザーズ』、『ジャンパー』『父親たちの星条旗』とすでにキャリアも確立しているのだけど、この映画の中では若さ、あどけなさ、初々しさを見事に表現していてその演技力の高さに驚かされます。兄の後ろをついていくだけで精一杯だった少年から、兄たちの後姿を見て成長し、コミュニティーを引っ張っていけると期待できるほどにたくましく勇敢な青年に育つまでの変化。どうしたらここまで演じ分けられるのだろうと感心するくらい。

俳優たちはイギリス人、アメリカ人がほとんどなのだけど、映画の中ではナチスの脅威におびえるユダヤ人。なので基本は英語の台詞ですがドイツ語もあり。英語はドイツ訛でしたが、これってドイツ人が見たらやっぱり「・・・。」ってなるのかしら。ま、それを置いておいてもものすごい映画です。


トュービアが戦禍を生き延びるこの戦いの中で一番大切だと説いたのは、「人間らしく生き、人間らしく死ぬ」ということ。どんなに切羽詰った状況でも、理性を捨てた動物のように自分が生き延びることばかりを優先し、罵り合ったり争うのではなく、コミュニティーとして皆が共に生き伸びること、皆平等にそして助け合うこと。人間としての尊厳を決して失わないこと。

そのコミュニティにいる誰もが、親兄弟など身近な人々を殺され、いつ自分たちが殺されてもおかしくない状況にいる。その状況下で「人間の尊厳を守ること」を説き、その考えの下で共同生活をし、そして生き延びた人々。共同生活だったからこそ可能であり生まれた考え方なんじゃないかと思う。正直この兄弟なら、自分たち4人の方が動きやすいし、何百人分の食料の心配だってしなくていい、第一誰かに守ってもらわなくても戦えるし、「生きる」というか「死なないでいる」にはその方が楽だったと思う。しかしこの人たちは皆で生活し生きることを選んだ。それはどんな生活や方法でも良い訳ではなく、「人間として生活する」ことを選んだからなんじゃないかと思う。

次男は考えの違いからコミュニティーを離れ、敵(ドイツ軍)と戦う(と言うか殺しにいく)道を選ぶ。


次男を演じたリーヴ・シュレイヴァー。見たことがあるような気がするのだけど、全然どの映画なのか思い出せませんでしたが、調べてみるとかなり多くの映画に出演している様子。私は見ていませんが『スクリーム』シリーズとか。1999年にデンゼル・ワシントン主演の『ハリケーン』と言う映画があるのですが、たぶんこれで彼を見てうっすらと顔を覚えていたようです、私。しかも彼、ナオミ・ワッツの旦那さんだったのね。知らなかったわ。


このコミュニティー内で、教育や宗教といった文化面に広く従事した元編集者のアイザック役に、『イン・ハー・シューズ』でローズの恋人役だったマーク・フュ-アステイン。この人、賢そうな役似合います。


戦況に翻弄された人々の生活、想像しきれない戦況の恐怖におびえながらも生き抜いた人々の生き様、コミュニティーの難しさ、人間の尊厳、立場によって見方の変わる命の重さ、尊さ。いろんな要素が詰まっていて、状況は全く異なっていても現代に通じるテーマであり、考えさせられる映画です。移動しては住む場所を作り、また戦禍にさらされては場所を移動し。終わりの見えない旅路に耐えた人々の強さにただただ圧倒されます。映画のエンドロールで、このような生活がさらに2年間続いたと書かれていて、やりきれないと言う言葉では表現できない感情に襲われました。

こんな状況下に私は当然のことながら置かれたことが無く、「命」とか「生きるすべ」とか「生き方」とか、私がこんな言葉を使って意見を述べること自体ものすごくおこがましいことは重々承知の上なのだけど、ここは「映画の感想」としてあえて素直に思ったことを書かせて頂きました。


日本では2009年2月14日から上映予定だそうです。バレンタインですね。すばらしい映画ですが、デート向きではありません。





おすすめ度:☆☆☆☆☆


注:公開年度を2008年、2009年と書きました。この映画、ゴールデン・グローブ賞にノミネートされていた作品で、それに間に合わせるために一部のみで2008年に公開されていたとのこと。2009年に一般公開となったとのことなので、両方の年を記載しました。