名作なのに、なかなか再放送されない番組が多々あります。
CSでさえも。
ふと、いつもは見ていないチャンネルの番組表を見ていると
をやってるじゃないですか
山崎豊子原作、市川森一脚本
1984年放送の現代史作品。
時代劇が主だった大河で、異色すぎてあまり評判にはならなかった気がします。ただ、はぎおにとってはとても衝撃を受けた作品でした。
当時は存じ上げなかったのですが、「山崎豊子」という女性作家が、これだけの骨太作品を作っていたことに、後々驚いたものです。
お恥ずかしい・・・・ほとんど読書しない子だったので、結局「大地の子」まで、この作家のお名前を知ることはなかったんです
ストーリーはこちら↓
太平洋戦争前後の激動の時代を生き抜いた日系アメリカ人・天羽(あもう)家の人々の愛と苦悩を描き、国際間の相互理解の重要性と、困難に立ち向かい平和を希求する人々の勇気を訴える。また、二・二六事件、太平洋戦争、日系人の強制収容、原爆投下、東京裁判へと続く昭和史をリアルに描く。(LaLaTVより)
日曜8時のゴールデンタイムに、戦時下の日系人の困難・苦悩、そして戦争・東京裁判を、ここまでクローズアップした作品を放送していたこと。今考えると、ものすごい「挑戦」だと思います。今から30数年前、当時はまだ戦争体験者がまだ多く存命だった時代に。ただ、逆に言えばNHKでないと無理でしょうね、きっと。
日系人が強制収容されたというのは教科書でサラッと学んだ気がしましたが、ドラマを見て、いかに過酷で理不尽な差別を受けてきたか、初めて「体感」した気がしました。やはり、現代史から学んだ方がいいんではないかと。
84年当時と今では、評価もだいぶ違っていると思いますが、「東京裁判」の様子を、映画ではなくテレビで見た最初の作品だと記憶しています。教科書で歴史を学んでいた中学生にとって、とてもリアルで緊迫感のあるものでした。
いくらフィクションとはいえ、現代史は、教科書よりよっぽど、このドラマで十分学ぶことが出来ると思います。
主人公家族、友人・知人・・・太平洋戦争が始まってから、戦後まで、次々と降りかかる困難・不幸・・
戦中・戦後と大きく変化していく両国の関係、人々の感情の動きに目が離せませんでした。
やはり、一番の強烈な場面は、日米に分かれてしまった兄弟が、戦場で直接対決することになった回。
それをきっかけに、戦後を迎えてもお互い相容れない(特に弟が)仲になってしまったこと。
日系二世の兄弟が、松本幸四郎さんと西田敏行さん・・・・ちょっと似てないという違和感は、最後まで拭えなかったんですが
アメリカを選んだ兄と、日本の「武士道」を選んだ弟。誰が悪いわけでもないのに、二人が二つの『母国』のために争うことになる。本当に対照的なお二人で、結果としていい配役だったのかな。
他にも・・・
主人公と婚約者が戦争勃発の瞬間から、互いの運命が変わってしまったこと。
アメリカに残した妻が、アル中に陥ってしまうこと。
アメリカで生まれ育った友人が、母国の落とした原爆の影響で病死してしまうこと。
それ以外にも、戦争によって障害が残ったり、戦後になっても「敵国の人間」として恨まれたり。
あの戦争で、幸せになった人がいるんでしょうか。
そして、主人公は・・・東京裁判の通訳として「戦後処理」に関わったことで、裁判そのものに疑問を感じ、同時に、自分のこれまでの生き方・行動に葛藤を覚え・・・
そして、最終回。太平洋戦争に対する自らへの「判決」。あれも鳥肌が立って忘れられませんでした。
真面目で正義感の強すぎる彼にとっては、納得の結末かもしれませんが、残された人々のことを考えると・・・誰に対して怒りをぶつけていいのかわからず、言葉も出ませんでした。
ただ、今にして思うのは、この結末が、山崎さんご自身の、戦争そのもの、そして「戦争裁判」に対する痛烈な批判だったのではないかと。
総集編を見ていると、色々発見がありました。出演者です。
大原麗子、多岐川裕美、島田陽子、柏原芳恵、堤大二郎、沢田研二、津島恵子、児玉清、鶴田浩二、池辺良、三船敏郎(敬称略) 他
当時のアイドルから、かつての映画の大スター、そして人気女優たちの競演・・・それだけでも見ごたえがあります。
松本幸四郎さん。『黄金の日々』もなんとなく記憶にあるんですが、はぎおにとっては、この作品で強烈に認識した方でした。すっごくカッコよかったです。(もちろん今も素敵ですけど) 歌舞伎界の方だということはなんとなく知ってましたが、当時は歌舞伎など見た事もなかったので、お芝居の上手い二枚目俳優だなぁ~という感じで 総集編全編通して、ほぼ泣いてらっしゃいました。本当に、彼(だけではないですが)にとっては、戦争がもたらしたもの総てが、辛く悲しいことばかりだったと。真っすぐさがとてもはまっていました。
西田さんは、特に、戦後、素直になれなくて兄に辛く当たる・・・という役どころからが真骨頂だった気がします。あれがあったからこそ、このドラマの意義があったかと。
それから、当時「二枚目」の代名詞のようなジュリーこと沢田研二さんが、したたかでクールな日系二世を演じていたんですが、これがまたカッコよくてね。。その裏には、役の彼自身の哀しい生い立ちが影響しているのですが、主人公も何度も裏切られたりねたまれたり・・・
ちなみに、後に大河最高視聴率を取ることになる、渡辺謙さんがちょい役?で出てました。
映画界の大スター、三船さんと鶴田さん。他にもベテランが大勢ご出演されてましたが、やはり、戦争体験者の方々のこの作品に対する意気込みと言いますか、お芝居を超えたリアリティを感じます。
最近の、映画からでも感じることのできない「重厚感」「気迫」がヒシヒシと伝わります。
リアリティといえば、実際にアメリカや東南アジアでロケをされていたようで、今では連続ドラマでなかなか見られるものではありません。
そう言う意味では(語弊があるかもしれませんが)、豪華で贅沢な大河ドラマだったかもしれません。
原作を読んでいないので、どこまで市川さんが脚色されているかはわかりませんが、原作のタイトル
「二つの祖国」
というのは、インパクトがあります。
他県にも住んだことのないはぎおにとって、二つの国が「故郷」という状況は理解しがたいのですが その愛すべき二つの国同士が戦争をはじめてしまう・・・どんな気持ちだったか、自分たちがどう選択すれば生き残れるのか、当時の緊迫した状況を、手に汗握りながら、戦争がいかに愚かか考えさせられる、見ごたえのある作品だったと。
断片的にしか記憶になかった「山河燃ゆ」をもう一度見る機会があるなんて
中学生だった当時でも衝撃的でしたが、様々な情報や知識を得た今、もう一度見直してみると、何もかもが重くのしかかって、総集編でさえ、泣けて仕方なかったです。
全話すべて見たくなりました。どこかの局で放送していただけないかしら・・・
そういえば、「大地の子」も戦争に巻き込まれて過酷な人生を歩んだ人物を描いていました。
あの「力強い」「骨太」な作品は、女性の方が得意とするのでしょうか。
山崎さんの訃報を聞いた時、思い出した作品は「白い巨塔」と「山河燃ゆ」でした。
読むにはかなり苦労するほど一作の冊数が多いので、またまた恥ずかしながら原作は一度も手を付けていませんが 今回の様に、機会があれば「映像」で、山崎さんの魂のこもった作品をじっくり見たいと思います。