最近、何の脈略もなく昔や今の歌が頭の中で鳴り続けることがある。童謡であったり、CMのバックソングだったり、子供のころの歌謡曲だったり。きょうは、昼休みの散歩中に、石川ひとみの「まちぶせ」が響いてきた。
「夕暮れの街角、のぞいた喫茶店。微笑み見つめあう見覚えあるふたり。あのコが急になぜかキレイになったのはあなたとこんな風に会ってるからなのね」
「気のない素振りして仲間に加わった。テーブルをはさんであなたを熱く見た」
「あのコがフラれたとうわさに聞いたけど、私は自分から言い寄ったりしない。ほかの人がくれたラブレター見せたり、偶然を装い、帰り道で待つわ」
「好きだったのよ、あなた。胸の奥でずっと。必ず、わたしきっと、あなたを振り向かせる」——
昼明けにちょっとネット調べすると、彼女がこの歌を歌ったのは昭和56年だった。彼女が当時何歳だったかまでは追わなかったが、当時、とってもかわいかった。そして、彼女の歌うこの歌も好きだった。透き通った声で情感たっぷりに歌い上げていた。でも歳を経るにつれ、歌詞のすごさがわかってきた。作詞は荒井(松任谷)由実さんだという。女子高生が主役の歌に聞こえるが、オレがその世代だったころに、女のコたちはそんなこと考えてたのかと恐ろしささえ感じた。いい意味でだよ。ほかの人からもらったラブレター見せるかね? オンナの情念は暴れん坊将軍が生きた江戸時代、いやもっと昔から変わっていないのだろう。
オレが当時心配したのは、紅白歌合戦の本番で泣いてしまうのでは、ということだった。それくらい純な女のコに見えていたのだ。やはり彼女は歌唱中に泣いた。オレはそれをまちぶせてしていたのかもしれない。ここ十数年は紅白を見ていないが、歌っているときに泣いた歌手を見たのは最初で最後だった。
石川さんは、その後はヒット曲は出していないと覚えているが、国営教育テレビの「ニャンちゅうのおねえさん」役を何年も務めたりしていたね。
と、思い出にふけって、家に帰ってからもう一度ネット検索したところ、石川さんが10月1日にデビュー45周年記念コンサートをするという案内を見つけた。また、泣いちゃうんだろうな。
急にアタマに浮かんできたあの曲は、彼女が見も知らないオレをまちぶせしていたのかもしれない、と勝手に思っている。