つる植物のうち、アサガオをはじめとして茎が巻きつく植物には右巻きと左巻きがあります。右巻き(右ねじ型・Z字型)の代表はアサガオで、左巻き(左ねじ型・S字型)の代表が先日レポートしたヘクソカズラです。左巻きになる植物種は右に比べて少ないのですが、自宅の庭を調べたらスイカズラも左巻きでした。
右巻きと左巻きはどのように決まるのかが疑問でした。以前、イタズラで、右巻きのつるを左巻きに組み直してみたことあるのです。すると、翌日には全て解かれて右巻きに戻っていました。だから植物にとって巻き方はどうしても譲れないことのようです。
どのように巻きつくかを見るために、5分間隔のインターバル撮影をして動画をYouTubeにしておきました。風と光線の影響が出ないように室内で電灯をつけたままで観察、カーテンを閉めて外の光ができるだけ入らないようにしました。30秒ほどの動画です。良かったらみてください。→ 「アサガオの回旋運動とつるの巻き方」
ここでは、動画チャプターの静止画で説明しますね。まずは支柱は設置せずに観察。
HTMLタグのonmouseoverが使えれば2枚の写真の微妙な差も分かりやすかったのですがね。gooブログではそれが使えないらしいので画像を重ね合わせ合成で・・
白黒画像の5分後のアサガオがカラーになっています。奥から手前に動いていることがわかります。5分間で予想以上に動いていました。
それから約40分後の写真が・・
最初の写真から茎の先が右回りに半回転ほどしました。平均をとると、約85分で1回転していたことがわかりました。
回転の中心は、頂芽から数えて2番目と3番目の節の間ににあるようです。この辺りの細胞増殖スピードを順番に変化させていくことでアサガオは茎の先端を大きく旋回させているものと考えられます。すなわちオーキシン濃度が高まった茎の下側の成長スピードが増すこと(側面重力屈性)で茎の姿勢が変わり、新たに下側になった細胞でオーキシン濃度と成長スピードが増すというように順番に細胞の成長スピードを変化させることで茎が旋回していきます。それにより周りに絡みつけるものがないか探しているのです。この動きを回旋運動といいます。
次に支柱を立てて巻きつき方を調べました。
上の左の写真で茎の先端付近が支柱に触れてからは回旋運動しなくなりました。ここから支柱に巻きついていきますが、回旋運動が右回りだったため茎の先端の左側を内側に支柱に巻きついていき右の写真のようになりました。巻きつきには茎が支柱に触れてから2巻きするのに約10時間もかかっていました。茎の先端が大きく動く回旋運動とは違い つるの巻きつきは主に先端近くの細胞増殖と伸長に影響を受けているので比較的長時間かかるものと思われます。
以上のことから、アサガオが右巻きになるのは回旋運動が右回転しているからと考えてよさそうです。だから左巻きの植物では回旋運動も左回転しているはずです。いずれヘクソカズラでも調べておきますね。来年以降になるかな?
ここで、茎の先端が物に触れたのが茎の右側だった場合、その触れた側を内側に左巻きになるのか?という疑問が当然出るかと思います。しかし、無理やり左巻きにしようとしても元の巻き方に戻ることから、そうはならないはずです。茎先端が触れた位置によって巻き方が変わる植物種がないとは言えませんけれども。。。
つるの巻き方と植物種がまとめられたサイトがあったのでリンクしておきます。→ 日本の野生植物検索表
回旋運動について。2005年に「つる植物が支柱をよじ登るために必要な遺伝子の発見」という論文が発表されました{Kitazawa, D. et al. (2005) Proc. Natl. Acad. Sci. USA (DOI) 10.1073}枝垂れアサガオの研究から、SCRタンパク質に変異があると重力感受細胞が正常に分化できず重力屈性と回旋運動が正常でなくなるとのこと。モデル植物のシロイヌナズナのscr変異体にアサガオの正常SCRを導入すると回旋運動が復活するなどの結果により「重力感受細胞がアサガオのよじ登りの原動力である回旋運動に必須であること」を結論づけていました。やはり回旋運動を起こす側面重力屈性とつるの巻きつきには大きな関係があったということでした。
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