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合唱団ひぐらし 第25回定期演奏会

2018年07月28日 | pocknのコンサート感想録2018
7月22日(日)合唱団ひぐらし 第25回定期演奏会「いろはのゐ」
第一生命ホール


【曲目】
<第1ステージ>
♪ 信長貴富/覚和歌子の詩による混声合唱曲集「等圧線」
<第2ステージ>
♪ 仁平秋弘/都に帰り来て
♪ 魚路恭子/あげます
♪ 西下航平/すきとおる
♪ 田中達也/For The Good Times
<第3ステージ>
♪ 武満 徹/混声合唱のための「うた」~さくら、恋のかくれんぼ、見えないこども、小さな空
<第4ステージ>
♪ マルタン/二重合唱のためのミサ曲
~アンコール~
♪ 信長貴富/夜明けから日暮れまで
♪ 山田耕筰/林光編/この道

【演奏】
指揮:清水 昭、野本立人/Pf:小田裕之


「合唱団ひぐらし」は今年で創立30周年を迎え、歴史と実力を兼ね備えたアマチュアの混声合唱団。現在、別の団体で一緒に「モツレク」に取り組んでいて「ひぐらし」メンバーでもあるみっちゃんからのお誘いでこの演奏会を知り、曲目にも引かれて夫婦で出かけた。

60名を優に超える規模の「ひぐらし」の演奏は、滑らかな歌いまわしや、柔らかく色彩感に富んだハーモニーが印象的。大規模でありながら、お互いの声をキチンと聞き合うことで生まれる優しくて繊細な表現は完成度が高い。とりわけ弱音で醸し出される、透明感のある独特な響きが印象的だ。最初のステージの「等圧線」では、言葉とハーモニーを大切にする演奏から、詩の行間からも香りや味わいが漂ってきて、音楽全体を温かく包み込み、聴く者を幸せな気持ちにしてくれた。

「ひぐらし」のメンバーには、プロとして活躍している作曲家が何人もいる。第2ステージでは、団員(かつての団員も含む)兼作曲家の作品が集められた。どの作品からも感じられたのは、優しさや豊かな詩情。合唱団のメンバーとして歌った経験が生かされ、実際には他の合唱団のために書かれた曲でも、近しい存在である歌い手一人一人の顔を思い浮かべながら書いたような親密さが伝わって来た。

後半の第3ステージでは、武満の合唱作品を全曲演奏する3年がかりのシリーズの最初の回として、4曲が演奏された。武満が持ち続けた「歌心」がにじみ出たノスタルジックで温かな味わいを湛え、心に沁みる「うた」を聴かせる点では秀でているが、例えば「さくら」の冒頭部と終結部で発せられる眩く雅な光のリアルさをはじめ、静謐な光彩や、孤高の存在感といった武満独特の魅力という点では物足りなさも感じた。

最後は難曲で大曲のマルタンのミサ曲。ここでも「ひぐらし」は、気負うことなく、滑らかな歌いまわしで、きめ細かく美しいハーモニーを紡いで行った。全体が優しく暖かな空気に満たされ、この曲が難曲だなんてことを忘れさせてしまう。ただ、全体的にお行儀が良い印象で、もっとリアルな表現を追求してもらいたいとも思った。プログラムの解説で触れられている「磔刑」や「復活」の場面などからは、言葉に呼応したスリリングなダイナミズムを感じるアクティブな表現も垣間見ることが出来たので、これを全体で貫けば、この音楽の核心に更に迫ることができると感じた。

ブログ管理人作曲によるCD
さびしいみすゞ、かなしいみすゞ ~金子みすゞの詩による歌曲集~

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