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大野和士 指揮 東京都交響楽団(都響スペシャル2021)

2021年02月24日 |  pocknのコンサート感想録2021
2月22日(月)大野和士 指揮 東京都交響楽団
都響スペシャル2021(2/22)
東京文化会館

【曲目】
1.武満徹/夢の時(1981)
2.ブラームス/アルト・ラプソディ~ゲーテ「冬のハルツの旅」による Op.53
MS:藤村実穂子/男声合唱:新国立劇場合唱団
3.マーラー/交響曲第4番 ト長調

S:中村恵理

好きな曲ばかりを大好きな大野和士と都響がやる、これは行くっきゃない。定期の代替公演として行われている「都響スペシャル」、定期で組まれていた「復活」での出演予定者を極力生かすプログラミングとのこと。これはいい!

最初は武満。それぞれのパートの音が混ざり合わずにピュアに生え、透過性のある澄んだ響きが広がった。切れも良く、音の運びも生き生きとしているが、香りや色彩をもっと感じられたら、とも思った。

続いてブラームス。曲目解説によれば、これはブラームスが失恋の痛手を負い(ブラームスがクララの娘にも恋してたなん知らなかった)、云わば腹いせに書いた曲とのこと。藤村の歌唱は言葉がくっきりと感情を伴って発せられ、それが音楽にしっくりと乗って届いてくる。さすがだ。繰り返される「人への嫌悪(Menschenhass)」という言葉が、鋭い刃物のように突き刺さってきた。オーケストラと、後半から入る男声合唱が、傷ついた心を優しく包み込むようになめらかに奏でられた。最後に長く引き伸ばされたオーケストラの響きが、遥かな暗闇へと消えていくようで印象深かった。

最後は今夜最も楽しみだったマーラーの第4シンフォニー。大野/都響は、透明感のある響きで、切れ味のいい、鋭くて冴えた演奏を聴かせた。長いフレーズで、感情の起伏を敏感に反映して表情を変化させていく様子は、様々な感情がモザイクのように入り組んだ構造を鮮やかに表出させている。更に、艶やかさを伴う濃淡の表現から、一見美しくて純粋なものに「毒」が潜んでいることも感じさせた。第2楽章でコンマスの矢部達哉が調弦をずらしたヴァイオリンで奏でるソロに、独特な「いやらしい」ディナミークが施され、その毒を浮かび上がらせているよう。穏やかな第3楽章は、抒情に溺れることなく覚醒していて、それはこの音楽がただ美しいだけではないことを伝えていた。

そしてソプラノソロが入る終楽章へ。中村恵理は芳香の漂う魅惑の美声で、「天上の生活」の詩を歌い聴かせる。ただ、ブラームスでの藤村の歌が、言葉が感情を伴って息づいていたのに比べ、詩に合わせて変幻自在に動き回る音楽に、言葉が反応し切れていないように感じた。そして詩が最後の節に入り、音楽も落ち着いてくるときに訪れる満たされた気分、まだまだ終わって欲しくないという気分に浸れない。

これは歌だけではなく、第1楽章から聴いて来た演奏が、僕が求めていたものに必ずしもフィットしていなかったことにも因る。今夜の演奏は、マーラーがこの音楽に込めた意味をうまく反映していたのかも知れない。けれど僕がこの音楽から感じたいのは、郷愁とか切なさとか、天上的で哀しいほどピュアな美しさだ。それがあまり感じられなかったことに終始物足りなさを覚えた。

大野和士/都響スペシャル2020 2020.9.16 サントリーホール
大野和士/都響:トゥーランガリラ交響曲 2018.1.20 東京芸術劇場
大野和士指揮 都響&スウェーデン放送合唱団:「天地創造」2017.9.11 サントリーホール

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