7月27日(土)第14回 二期会研究会駅伝コンサートより
東京文化会館小ホール
ドイツ歌曲研究会
~後期ロマン派歌曲への誘い~
♪ R.シュトラウス/「乙女の花」~矢車菊、けしの花、睡蓮
♪ R.シュトラウス/「最後の花びらから8つの歌」~献呈
♪ マルクス/夜想曲、森の幸福、愛がお前に触れたなら
S:伊藤祐子、近藤悦子/Pf:中山真理
フランス歌曲研究会
~音楽の祝祭 フランス、旋律の系譜~
♪ ラモー/オペラ「プラテ」~アポロンの憂鬱に
♪ ショーソン/夜
♪ プーランク/ 歌曲集「月並み」~すすり泣き
ベイツ/歌曲集「鳥たちのための歌」~青い鳥
♪ メシアン/歌曲集「天と地の歌」~復活
♪ フォーレ/この世のすべての魂は
S:荒井恵美、宮地里美、三上道子/MS:岡村彬子/Pf:須江太郎
日本歌曲研究会
~平成に生まれた歌たち~
♪ 朝岡真木子/組曲「春に あこがれ」~きっと春はくる
♪ 木下牧子/「古風な月」~月光
♪ 信長貴富/「時に人が通る」~風景
♪ 中田喜直/歌をください
♪ 山本正美/ねむの木の子守歌
S:山本富美、丹羽京子、斉藤京子/MS:清水邦子/Pf:髙木由雅
ロシア歌曲研究会
~ロシアのお祝いのロシア歌曲を集めて~
♪ リムスキー=コルサコフ/雲雀の歌は高らかに Op.43-1
♪ リムスキー=コルサコフ/八行詩 Op.45-3
♪ チャイコフスキー/陽は沈み Op.73-4
♪ チャイコフスキー/自然と愛
♪ チャイコフスキー/森よ お前たちを祝福する Op.47-1
S:福成紀美子、清水知加子/MS:筧 聰子/B:岸本 力/Pf:小笠原貞宗
バッハ・バロック研究会
♪ ヴィヴァルディ/グローリア ニ長調 RV.589
♪ バッハ/カカンター第202番「消え去れ、悲しみの影よ」(結婚カンタータ)BWV202~第1,8,9曲
♪ バッハ/カンター第78番「イエスよ、汝はわが魂を」BWV78~第2曲
♪ バッハ/カカンター第140番「目覚めよと呼ぶ声が聴こえ」BWV140~第6曲
♪ バッハ/カカンター第147番「心と口と行いと命」BWV147~第10曲コラール
S:松堂美枝子、大原一姫、水野由加里、田島朱季子、井内理恵、高草木玲子、野崎由美、大河原美紀子/A:前田美樹、橋爪万里/B:多田羅迪夫(指揮)/Pf:鈴木真理子 ほか
イタリアオペラ研究会
~魅力溢れるイタリアオペラの世界~
♪ プッチーニ/「トスカ」~歌に生き、愛に生き
♪ プッチーニ/「蝶々夫人」~花の二重唱
♪ マスカーニ/「カヴァレリア・ルスティカーナ」~"サントゥッツァ、お前がここに"、"乾杯の歌"
S:後藤美奈子、石橋佳子/T:伊藤 潤/Pf:小野寺美樹
エンディングステージ
♪ヴェルディ/「椿姫」~"乾杯の歌"
出演者有志
♪ ♪ ♪
出演者からお誘い頂いて初めて聴いた二期会の駅伝コンサート。4時間にも及ぶコンサートのうち、ドイツ歌曲研究会の発表からエンディングまでの約3時間を聴いた。声楽家による大所帯の二期会に分科会のような各種研究会があるなんて知らなかった。全部で12の研究会があり、今回はこのうち9つの研究会が発表を行い、そこから6つの研究会の発表を聴いた。
それぞれの発表は20分足らずで、この枠では各研究会の成果を十分に発揮することは難しい。そんななかでも「さすが二期会」と思える発表も少なくなく、印象に残った演奏について感想を記しておきたい。
まずフランス歌曲研究会。バロック時代のラモーのオペラ作品を冒頭に、そのあとは19~20世紀のフランス歌曲を並べた。歌手による日本語の短い前口上が入り、ステージとしての統一感が生まれた。このステージで最も感銘を受けたのはメゾの岡村彬子さんが歌ったプーランクの「すすり泣き」。表現の幅が大きくて雄弁。声からも歌の表情からも気品が感じられて心を捉えた。ピアノのプーランクっぽい独特のバスラインが気分を更に高めてくれた。
平成に生まれた新しい日本の歌を並べた日本歌曲研究会も良かった。演奏曲の作曲者(朝岡さんと信長さん)が客席に来ていたのも同時代性を感じさせる。印象に残ったのはソプラノの斉藤京子さんが歌った信長貴富の「風景」。この売れっ子作曲家の作品は殆ど知らないが、心にしみじみと自然に訴えてくる深みあるいい歌だ。初演を手掛けたという斉藤さんは、上品な美声と豊かな表情で丁寧に滑らかに歌い、作品の魅力を伝えた。朝岡さんの「きっと春はくる」を歌った山本富美さんのキレイな日本語と澄んだ声、軽やかな歌の表情も心に残っている。
バッハ・バロック研究会では15人の歌手たちがステージに勢ぞろい。ヴィヴァルディのグローリアで華々しく開始した。「古楽器演奏とは一線を画しつつも、最新の古楽研究の成果を積極的に取り入れて…」とパンフレットで謳われたコンセプトに期待したが、演奏からそれは伝わってこなかった。限られた時間のなかに沢山盛り込み過ぎたのが原因かも知れない。本来一人の歌手が全曲を歌うソロカンタータを、その一部だけ演奏するのに4人もの歌手が交替で歌ったり、歌と同様に大切な器楽による間奏部分が大幅にカットされたり、目まぐるしい印象だけが残ってしまった。
最後の研究会発表となったイタリアオペラ研究会のステージでは、「カヴァレリア・ルスティカーナ」からトゥリッドゥとサントゥツァによる愛憎合いまみえた激しいやり取りの場面が素晴らしかった。サントゥツァを歌う石橋佳子さんの切迫したテンションと熱さ、迫力、トゥリッドゥ役の伊藤潤さんの張りのある強靭な声での冷酷さが、白熱のドラマを盛り上げ、聴きごたえがあった。伊藤さんがソロを歌ったそのあとの「乾杯の歌」も高音の輝きが冴えていた。
こうして大勢の二期会会員の演奏をまとめて聴いて、当然ではあるが同じ二期会でも個性は様々、感銘を与えてくれる度合いも様々であることを実感した。感銘を受けたこと以外で全体として感じたことは2つ。
一つは言葉(フランス語とロシア語はわからないが・・)の伝わり方に大きな差があること。歌詞を伴う歌での言葉の重要性は云うまでもない。これをいかに聴き手に明瞭なメッセージとして届けることができるか、ということをさらに探求することで、聴衆が受ける印象は大きく異なるのではないだろうか。
もう一つはそれぞれの作品が持つ使命を追求し、それに相応しい表現で演奏しようとしているか疑問に思ったことが少なからずあったこと。どんなに良い声で上手に歌っても、それが場違いでは聴き手に感銘を与えることは難しい。もちろん感じ方は人それぞれだから、僕が何も感じなかった演奏に感動した人もいるかも知れない。こうした二期会の各研究会が一堂に会する機会に、お互いの演奏を聴きあって、忌憚のない意見を交わす機会を設けてはどうだろうか。それこそ各研究会の「切磋琢磨して刺激を与えあう」という趣旨が意味を持つのではと思った。
♪ブログ管理人の作曲♪
金子みすゞ作詞「積もった雪」
MS:小泉詠子/Pf:田中梢
金子みすゞ作詞「私と小鳥と鈴と」
S:薗田真木子/Pf:梅田朋子
「子守歌」~チェロとピアノのための~
Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美
合唱曲「野ばら」
中村雅夫指揮 ベーレンコール
金子みすゞ作詞「さびしいとき」
金子みすゞ作詞「鯨法会」
以上2曲 MS:小泉詠子/Pf:田中梢
「森の詩」~ヴォカリーズ、チェロ、ピアノのためのトリオ~
MS:小泉詠子/Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美
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東京文化会館小ホール
ドイツ歌曲研究会
~後期ロマン派歌曲への誘い~
♪ R.シュトラウス/「乙女の花」~矢車菊、けしの花、睡蓮
♪ R.シュトラウス/「最後の花びらから8つの歌」~献呈
♪ マルクス/夜想曲、森の幸福、愛がお前に触れたなら
S:伊藤祐子、近藤悦子/Pf:中山真理
フランス歌曲研究会
~音楽の祝祭 フランス、旋律の系譜~
♪ ラモー/オペラ「プラテ」~アポロンの憂鬱に
♪ ショーソン/夜
♪ プーランク/ 歌曲集「月並み」~すすり泣き
ベイツ/歌曲集「鳥たちのための歌」~青い鳥
♪ メシアン/歌曲集「天と地の歌」~復活
♪ フォーレ/この世のすべての魂は
S:荒井恵美、宮地里美、三上道子/MS:岡村彬子/Pf:須江太郎
日本歌曲研究会
~平成に生まれた歌たち~
♪ 朝岡真木子/組曲「春に あこがれ」~きっと春はくる
♪ 木下牧子/「古風な月」~月光
♪ 信長貴富/「時に人が通る」~風景
♪ 中田喜直/歌をください
♪ 山本正美/ねむの木の子守歌
S:山本富美、丹羽京子、斉藤京子/MS:清水邦子/Pf:髙木由雅
ロシア歌曲研究会
~ロシアのお祝いのロシア歌曲を集めて~
♪ リムスキー=コルサコフ/雲雀の歌は高らかに Op.43-1
♪ リムスキー=コルサコフ/八行詩 Op.45-3
♪ チャイコフスキー/陽は沈み Op.73-4
♪ チャイコフスキー/自然と愛
♪ チャイコフスキー/森よ お前たちを祝福する Op.47-1
S:福成紀美子、清水知加子/MS:筧 聰子/B:岸本 力/Pf:小笠原貞宗
バッハ・バロック研究会
♪ ヴィヴァルディ/グローリア ニ長調 RV.589
♪ バッハ/カカンター第202番「消え去れ、悲しみの影よ」(結婚カンタータ)BWV202~第1,8,9曲
♪ バッハ/カンター第78番「イエスよ、汝はわが魂を」BWV78~第2曲
♪ バッハ/カカンター第140番「目覚めよと呼ぶ声が聴こえ」BWV140~第6曲
♪ バッハ/カカンター第147番「心と口と行いと命」BWV147~第10曲コラール
S:松堂美枝子、大原一姫、水野由加里、田島朱季子、井内理恵、高草木玲子、野崎由美、大河原美紀子/A:前田美樹、橋爪万里/B:多田羅迪夫(指揮)/Pf:鈴木真理子 ほか
イタリアオペラ研究会
~魅力溢れるイタリアオペラの世界~
♪ プッチーニ/「トスカ」~歌に生き、愛に生き
♪ プッチーニ/「蝶々夫人」~花の二重唱
♪ マスカーニ/「カヴァレリア・ルスティカーナ」~"サントゥッツァ、お前がここに"、"乾杯の歌"
S:後藤美奈子、石橋佳子/T:伊藤 潤/Pf:小野寺美樹
エンディングステージ
♪ヴェルディ/「椿姫」~"乾杯の歌"
出演者有志
出演者からお誘い頂いて初めて聴いた二期会の駅伝コンサート。4時間にも及ぶコンサートのうち、ドイツ歌曲研究会の発表からエンディングまでの約3時間を聴いた。声楽家による大所帯の二期会に分科会のような各種研究会があるなんて知らなかった。全部で12の研究会があり、今回はこのうち9つの研究会が発表を行い、そこから6つの研究会の発表を聴いた。
それぞれの発表は20分足らずで、この枠では各研究会の成果を十分に発揮することは難しい。そんななかでも「さすが二期会」と思える発表も少なくなく、印象に残った演奏について感想を記しておきたい。
まずフランス歌曲研究会。バロック時代のラモーのオペラ作品を冒頭に、そのあとは19~20世紀のフランス歌曲を並べた。歌手による日本語の短い前口上が入り、ステージとしての統一感が生まれた。このステージで最も感銘を受けたのはメゾの岡村彬子さんが歌ったプーランクの「すすり泣き」。表現の幅が大きくて雄弁。声からも歌の表情からも気品が感じられて心を捉えた。ピアノのプーランクっぽい独特のバスラインが気分を更に高めてくれた。
平成に生まれた新しい日本の歌を並べた日本歌曲研究会も良かった。演奏曲の作曲者(朝岡さんと信長さん)が客席に来ていたのも同時代性を感じさせる。印象に残ったのはソプラノの斉藤京子さんが歌った信長貴富の「風景」。この売れっ子作曲家の作品は殆ど知らないが、心にしみじみと自然に訴えてくる深みあるいい歌だ。初演を手掛けたという斉藤さんは、上品な美声と豊かな表情で丁寧に滑らかに歌い、作品の魅力を伝えた。朝岡さんの「きっと春はくる」を歌った山本富美さんのキレイな日本語と澄んだ声、軽やかな歌の表情も心に残っている。
バッハ・バロック研究会では15人の歌手たちがステージに勢ぞろい。ヴィヴァルディのグローリアで華々しく開始した。「古楽器演奏とは一線を画しつつも、最新の古楽研究の成果を積極的に取り入れて…」とパンフレットで謳われたコンセプトに期待したが、演奏からそれは伝わってこなかった。限られた時間のなかに沢山盛り込み過ぎたのが原因かも知れない。本来一人の歌手が全曲を歌うソロカンタータを、その一部だけ演奏するのに4人もの歌手が交替で歌ったり、歌と同様に大切な器楽による間奏部分が大幅にカットされたり、目まぐるしい印象だけが残ってしまった。
最後の研究会発表となったイタリアオペラ研究会のステージでは、「カヴァレリア・ルスティカーナ」からトゥリッドゥとサントゥツァによる愛憎合いまみえた激しいやり取りの場面が素晴らしかった。サントゥツァを歌う石橋佳子さんの切迫したテンションと熱さ、迫力、トゥリッドゥ役の伊藤潤さんの張りのある強靭な声での冷酷さが、白熱のドラマを盛り上げ、聴きごたえがあった。伊藤さんがソロを歌ったそのあとの「乾杯の歌」も高音の輝きが冴えていた。
こうして大勢の二期会会員の演奏をまとめて聴いて、当然ではあるが同じ二期会でも個性は様々、感銘を与えてくれる度合いも様々であることを実感した。感銘を受けたこと以外で全体として感じたことは2つ。
一つは言葉(フランス語とロシア語はわからないが・・)の伝わり方に大きな差があること。歌詞を伴う歌での言葉の重要性は云うまでもない。これをいかに聴き手に明瞭なメッセージとして届けることができるか、ということをさらに探求することで、聴衆が受ける印象は大きく異なるのではないだろうか。
もう一つはそれぞれの作品が持つ使命を追求し、それに相応しい表現で演奏しようとしているか疑問に思ったことが少なからずあったこと。どんなに良い声で上手に歌っても、それが場違いでは聴き手に感銘を与えることは難しい。もちろん感じ方は人それぞれだから、僕が何も感じなかった演奏に感動した人もいるかも知れない。こうした二期会の各研究会が一堂に会する機会に、お互いの演奏を聴きあって、忌憚のない意見を交わす機会を設けてはどうだろうか。それこそ各研究会の「切磋琢磨して刺激を与えあう」という趣旨が意味を持つのではと思った。
♪ブログ管理人の作曲♪
金子みすゞ作詞「積もった雪」
MS:小泉詠子/Pf:田中梢
金子みすゞ作詞「私と小鳥と鈴と」
S:薗田真木子/Pf:梅田朋子
「子守歌」~チェロとピアノのための~
Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美
合唱曲「野ばら」
中村雅夫指揮 ベーレンコール
金子みすゞ作詞「さびしいとき」
金子みすゞ作詞「鯨法会」
以上2曲 MS:小泉詠子/Pf:田中梢
「森の詩」~ヴォカリーズ、チェロ、ピアノのためのトリオ~
MS:小泉詠子/Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美
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