8月1日(金)ワレリー・ゲルギエフ 指揮 PMFオーケストラ
サントリーホール
【曲目】
1.ドビュッシー/牧神の午後への前奏曲
2.イベール/フルート協奏曲
【アンコール】
♪バッハ/無伴奏フルートのためのパルティータ イ短調 BWV1013~サラバンド
Fl:マトヴェィ・デョーミン
3.ショスタコーヴィチ/交響曲 第4番 ハ短調 Op.43
国際オーディションで世界中から集まった若い優秀なプレイヤー達によるひと夏限りのPMFオーケストラの演奏会を聴くのは2007年以来12年ぶり。その決め手は、ゲルギエフの指揮でショスタコの4番が聴けること。ゲルギエフは100名超のオケを前に指揮台に乗らずにフラットな床に直接立ち、若いプレイヤー達との垣根を払おうとしているようだった。
前半はフランス近代の作品が2つ。「牧神」は、羽化したての蝶の羽のように弱々しいほどのデリケートさが印象的だった。いわゆるロマンチックでふくよかな表現を抑えて、あくまで音や響き、テクスチャーそのものの持つ魅力を伝えようとする姿勢が感じられた。フルートやクラリネットのなんとデリケートな響き。ホルンは、背後で響きに彩りを添えるときだけでなくソロを奏でるときも決して前面に出ず、細くたなびくような旋律線を描いた。全体が線描によるコラージュのような「牧神」だった。
続くイベールのフルートコンチェルトも重力から解放された軽やかさが印象に残った。デョーミンのフルートソロは気負いがなく流麗で軽やか。渓谷をサラサラと下って行く澄んだ水の如しで、伸びやかな高音の美しさも耳を引いた。第2楽章ではコンミスのヴァイオリンとのデュオも素敵だった。第3楽章では、小さな明かりが連なった電飾が列をなして鮮やかに点灯されて行くような華やかさがあった。オケも気負わず楽しげにフルートと戯れていたのがいい。
休憩を挟んでいよいよショスタコの4番。この曲を普段聴くことはなく、自分にとって馴染みの曲ではない。ただ13年前に聴いたアシュケナージ指揮N響の強烈な体験をまた味わいたかった。あのとき、なんてスゴい音楽かと思ったが、深刻さと諧謔、憧れと焦燥が錯綜する圧巻の演奏にその記憶が甦った。PMFオーケストラのアンサンブルとしての充実度と共に、室内楽的な緻密さ、柔軟さ、各プレイヤーの卓越した演奏能力も魅力だった。
第1楽章終盤手前の「狂気のフガート」は、目まぐるしい弦の動きの連続がみるみる熱を帯び、「狂気」へ爆発する熱気と緊迫感で金縛りにあったようだったし、2楽章の怪しさを秘めた木管アンサンブルのリアルな表情や雄弁なヴァイオリンソロが、また現世から引き離されたよう。第3楽章は開放的で楽しげだが、そこには怪しい嘲笑が潜んでいた。最終楽章では、中盤の華麗な盛り上がりからは威光が放たれ、終結へ向かう長い静寂の音楽は、音が鳴っているのに沈黙で押し潰されそうなほど。トランペットの最後の疼きが痛みとして沁みてきた。
音が消えたあとの長い長い咳ひとつ聞こえない素晴らしい静寂が、演奏の印象を更に高めた。そして割れんばかりの大きな拍手とブラボー。オーケストラは熱気と共に冷静さも供え、頑張りすぎることなく若々しいエネルギーを強力に放出した。一丸となり塊で迫ってくる圧倒的なパワーからは、遠くて実際の表情は見えないが、一人一人の熱くて真剣そのものの視線が見えるようだった。ゲルギエフの求心力にも脱帽。
ショスタコの演奏からは上皇さま夫妻が臨席。クラシック好きのお2人だが、天皇を退位してもやっぱりコンサートは後半しか聴けないのか…
ムーティ指揮PMFオーケストラ 2007.7.11 東京オペラシティコンサートホール
♪ブログ管理人の作曲♪
金子みすゞ作詞「積もった雪」
MS:小泉詠子/Pf:田中梢
金子みすゞ作詞「私と小鳥と鈴と」
S:薗田真木子/Pf:梅田朋子
「子守歌」~チェロとピアノのための~
Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美
合唱曲「野ばら」
中村雅夫指揮 ベーレンコール
金子みすゞ作詞「さびしいとき」
金子みすゞ作詞「鯨法会」
以上2曲 MS:小泉詠子/Pf:田中梢
「森の詩」~ヴォカリーズ、チェロ、ピアノのためのトリオ~
MS:小泉詠子/Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美
拡散希望記事!やめよう!エスカレーターの片側空け
サントリーホール
【曲目】
1.ドビュッシー/牧神の午後への前奏曲
2.イベール/フルート協奏曲
【アンコール】
♪バッハ/無伴奏フルートのためのパルティータ イ短調 BWV1013~サラバンド
Fl:マトヴェィ・デョーミン
3.ショスタコーヴィチ/交響曲 第4番 ハ短調 Op.43
国際オーディションで世界中から集まった若い優秀なプレイヤー達によるひと夏限りのPMFオーケストラの演奏会を聴くのは2007年以来12年ぶり。その決め手は、ゲルギエフの指揮でショスタコの4番が聴けること。ゲルギエフは100名超のオケを前に指揮台に乗らずにフラットな床に直接立ち、若いプレイヤー達との垣根を払おうとしているようだった。
前半はフランス近代の作品が2つ。「牧神」は、羽化したての蝶の羽のように弱々しいほどのデリケートさが印象的だった。いわゆるロマンチックでふくよかな表現を抑えて、あくまで音や響き、テクスチャーそのものの持つ魅力を伝えようとする姿勢が感じられた。フルートやクラリネットのなんとデリケートな響き。ホルンは、背後で響きに彩りを添えるときだけでなくソロを奏でるときも決して前面に出ず、細くたなびくような旋律線を描いた。全体が線描によるコラージュのような「牧神」だった。
続くイベールのフルートコンチェルトも重力から解放された軽やかさが印象に残った。デョーミンのフルートソロは気負いがなく流麗で軽やか。渓谷をサラサラと下って行く澄んだ水の如しで、伸びやかな高音の美しさも耳を引いた。第2楽章ではコンミスのヴァイオリンとのデュオも素敵だった。第3楽章では、小さな明かりが連なった電飾が列をなして鮮やかに点灯されて行くような華やかさがあった。オケも気負わず楽しげにフルートと戯れていたのがいい。
休憩を挟んでいよいよショスタコの4番。この曲を普段聴くことはなく、自分にとって馴染みの曲ではない。ただ13年前に聴いたアシュケナージ指揮N響の強烈な体験をまた味わいたかった。あのとき、なんてスゴい音楽かと思ったが、深刻さと諧謔、憧れと焦燥が錯綜する圧巻の演奏にその記憶が甦った。PMFオーケストラのアンサンブルとしての充実度と共に、室内楽的な緻密さ、柔軟さ、各プレイヤーの卓越した演奏能力も魅力だった。
第1楽章終盤手前の「狂気のフガート」は、目まぐるしい弦の動きの連続がみるみる熱を帯び、「狂気」へ爆発する熱気と緊迫感で金縛りにあったようだったし、2楽章の怪しさを秘めた木管アンサンブルのリアルな表情や雄弁なヴァイオリンソロが、また現世から引き離されたよう。第3楽章は開放的で楽しげだが、そこには怪しい嘲笑が潜んでいた。最終楽章では、中盤の華麗な盛り上がりからは威光が放たれ、終結へ向かう長い静寂の音楽は、音が鳴っているのに沈黙で押し潰されそうなほど。トランペットの最後の疼きが痛みとして沁みてきた。
音が消えたあとの長い長い咳ひとつ聞こえない素晴らしい静寂が、演奏の印象を更に高めた。そして割れんばかりの大きな拍手とブラボー。オーケストラは熱気と共に冷静さも供え、頑張りすぎることなく若々しいエネルギーを強力に放出した。一丸となり塊で迫ってくる圧倒的なパワーからは、遠くて実際の表情は見えないが、一人一人の熱くて真剣そのものの視線が見えるようだった。ゲルギエフの求心力にも脱帽。
ショスタコの演奏からは上皇さま夫妻が臨席。クラシック好きのお2人だが、天皇を退位してもやっぱりコンサートは後半しか聴けないのか…
ムーティ指揮PMFオーケストラ 2007.7.11 東京オペラシティコンサートホール
♪ブログ管理人の作曲♪
金子みすゞ作詞「積もった雪」
MS:小泉詠子/Pf:田中梢
金子みすゞ作詞「私と小鳥と鈴と」
S:薗田真木子/Pf:梅田朋子
「子守歌」~チェロとピアノのための~
Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美
合唱曲「野ばら」
中村雅夫指揮 ベーレンコール
金子みすゞ作詞「さびしいとき」
金子みすゞ作詞「鯨法会」
以上2曲 MS:小泉詠子/Pf:田中梢
「森の詩」~ヴォカリーズ、チェロ、ピアノのためのトリオ~
MS:小泉詠子/Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美
拡散希望記事!やめよう!エスカレーターの片側空け