6月19日(木)尾高忠明 指揮 NHK交響楽団
《2015年6月Bプロ》 サントリーホール
【曲目】
1. チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第1番変ロ短調 Op.23
【アンコール】
チャイコフスキー/「四季」~6月「舟歌」
Pf:小山実稚恵
2.ラフマニノフ/交響曲第1番 ニ短調 Op.13
今シーズンの締めとなったN響定期公演は正指揮者の尾高忠明が指揮。小山実稚恵をソリストに迎えたチャイコのピアノコンチェルトで華々しく始まった。太く力強くダイナミックなオケの前奏に導かれて入った小山さんのピアノは、変わらず逞しくしなやかで華やか。大音量のオーケストラと堂々と渡り合う姿は頼もしい。オケと格闘するのではなく、先導しているような余裕も伝わり、「点」で決めなければならないいくつもある肝心な合わせどころも難なくクリアして行く。尾高さんとはそうしたポイントでの合わせだけでなく、協演の方向性や収めどころ、スピード感の捉え方などでも息が合っているのが伝わってきた。
小山さんのピアノはダイナミスムのみならず、繊細で透明な詩情や、心をくすぐる歌心も持ち、磨かれた美しい音色もピカイチ。長大な作品の魅力を隅々まで丁寧に、そしてインスピレーション豊かに綴って行った。尾高/N響は、ソリストとの抜群の合わせを聴かせただけでなく、焦点の定まった濃厚で艶やかな演奏で熱っぽく働きかけてくる。こういう演奏でチャイコのシンフォニーも聴いてみたくなった。
後半にプログラミングされたラフマニノフの交響曲第1番はこれまで聞いたことは1度もないが、前半のオケパートの演奏を聴いて期待が高まった。尾高/N響は冒頭から最後の1音まで、充実の極みと言いたくなる見事な演奏を聴かせた。無理のない自然な息遣いとアゴーギクから生まれる有機的な動きや、ドラマチックな表現とロマンチックな表現のバランス感覚の良さなどから、全体としてスマートな、整った姿をしていながら、響きはとても密度が高く、そこに込められた熱気も十分、ここぞというところの集中力や爆発力も鮮烈で、「スマートでドラマチック」という一見相反する要素が見事に合体して、ハイレベル、ハイクオリティー、ハイパワーの名演が実現した。
第1楽章ではパワフルでかつ民族的な色と匂いが漂って聴き手を引きつけ、第2楽章は尾高のチャーミングなセンスがやわらかく音楽を包んだ。第3楽章では熱気帯び、血の通った歌が切々と訴えてきた。コンマスの伊藤さんの熱いハートが伝わるソロもよかった。そして第4楽章は特徴あるリズムに乗って悪魔たちが乱舞しているようで、妖しい凄みが地の底から突き上げてきた。どんなに烈しくても全体が崩れそうになることはなく、ピーンと筋が通っているところに、尾高の冷静さとN響のアンサンブル能力の高さを感じる。
初めて聴いたラフマニノフの交響曲第1番。第2番に負けず劣らずの充実した名曲ではないか!それに面白い。こんな感想を持てたのには演奏の力も大きい。尾高さんの指揮でN響を聴いたのは2004年のブラームス以来。あの時は代役であまり期待していなかったにもかかわらず大きな感動をもらった。そして今夜の名演だ。尾高とN響は相性も良さそう。近いうちまたこの組み合わせを実現させて欲しい。
《2015年6月Bプロ》 サントリーホール
【曲目】
1. チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第1番変ロ短調 Op.23
【アンコール】
チャイコフスキー/「四季」~6月「舟歌」
Pf:小山実稚恵
2.ラフマニノフ/交響曲第1番 ニ短調 Op.13
今シーズンの締めとなったN響定期公演は正指揮者の尾高忠明が指揮。小山実稚恵をソリストに迎えたチャイコのピアノコンチェルトで華々しく始まった。太く力強くダイナミックなオケの前奏に導かれて入った小山さんのピアノは、変わらず逞しくしなやかで華やか。大音量のオーケストラと堂々と渡り合う姿は頼もしい。オケと格闘するのではなく、先導しているような余裕も伝わり、「点」で決めなければならないいくつもある肝心な合わせどころも難なくクリアして行く。尾高さんとはそうしたポイントでの合わせだけでなく、協演の方向性や収めどころ、スピード感の捉え方などでも息が合っているのが伝わってきた。
小山さんのピアノはダイナミスムのみならず、繊細で透明な詩情や、心をくすぐる歌心も持ち、磨かれた美しい音色もピカイチ。長大な作品の魅力を隅々まで丁寧に、そしてインスピレーション豊かに綴って行った。尾高/N響は、ソリストとの抜群の合わせを聴かせただけでなく、焦点の定まった濃厚で艶やかな演奏で熱っぽく働きかけてくる。こういう演奏でチャイコのシンフォニーも聴いてみたくなった。
後半にプログラミングされたラフマニノフの交響曲第1番はこれまで聞いたことは1度もないが、前半のオケパートの演奏を聴いて期待が高まった。尾高/N響は冒頭から最後の1音まで、充実の極みと言いたくなる見事な演奏を聴かせた。無理のない自然な息遣いとアゴーギクから生まれる有機的な動きや、ドラマチックな表現とロマンチックな表現のバランス感覚の良さなどから、全体としてスマートな、整った姿をしていながら、響きはとても密度が高く、そこに込められた熱気も十分、ここぞというところの集中力や爆発力も鮮烈で、「スマートでドラマチック」という一見相反する要素が見事に合体して、ハイレベル、ハイクオリティー、ハイパワーの名演が実現した。
第1楽章ではパワフルでかつ民族的な色と匂いが漂って聴き手を引きつけ、第2楽章は尾高のチャーミングなセンスがやわらかく音楽を包んだ。第3楽章では熱気帯び、血の通った歌が切々と訴えてきた。コンマスの伊藤さんの熱いハートが伝わるソロもよかった。そして第4楽章は特徴あるリズムに乗って悪魔たちが乱舞しているようで、妖しい凄みが地の底から突き上げてきた。どんなに烈しくても全体が崩れそうになることはなく、ピーンと筋が通っているところに、尾高の冷静さとN響のアンサンブル能力の高さを感じる。
初めて聴いたラフマニノフの交響曲第1番。第2番に負けず劣らずの充実した名曲ではないか!それに面白い。こんな感想を持てたのには演奏の力も大きい。尾高さんの指揮でN響を聴いたのは2004年のブラームス以来。あの時は代役であまり期待していなかったにもかかわらず大きな感動をもらった。そして今夜の名演だ。尾高とN響は相性も良さそう。近いうちまたこの組み合わせを実現させて欲しい。