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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

フィッシャー=ディースカウ「シューマンの夕べ」(1987/サントリーホール)

2020年05月13日 | pocknのコンサート感想録(アーカイブ)
フィッシャー=ディースカウのリサイタルをもうひとつ。サントリーホール開館1周年記念として行われたリサイタルシリーズから聴いた「シューマンの夕べ」の感想。シリーズは添付のチラシにある4種類のプログラムで行われた。「冬の旅」以外は超メジャーなプログラムというわけではなく、サントリーホールが1人の歌手でこんなリサイタルシリーズをやってくれたなんて何とも贅沢な企画だ。これもフィッシャー=ディースカウという、稀有の名歌手の存在あってこそのことだろう。

pocknのコンサート感想録アーカイブス ~ブログ開設以前の心に残った公演~

1987年 10月26日(月)
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(Bar)/ハルトムート・ヘル(Pf) ㊝
サントリーホール
1.シューマン/「リーダークライス」Op.39
2.シューマン/「12の詩」Op.35

(アンコール)
1.シューマン/君は花のよう
2.シューマン/僕の愛はかがやき渡る
3.シューマン/はすの花
2.シューマン/自由な心
3.シューマン/私の馬車はゆっくりと行く

 素晴らしいコンサートだ!フィッシャー=ディースカウの歌に酔い、しびれた。あの巧さは誰にも真似ることはできない。巧いというと誤解するかもしれないが、全ての面で巧いのだ。自分の声を自由自在に魔法のように操るのだ。青く澄んだ深い湖を想わせるような声はささやくppからバリバリのffまで実にしなやかで思いのまま。絶妙の歌いまわしは明晰なドイツ語の発音も大いに影響している。ドイツ人だから発音が良いのは当たり前だが、ディースカウはどういう発音で聞かせるとその詩が、歌が光るかということを熟知している。ディースカウの発音は何とも快く耳に響くのだ。あこがれ、恐怖、優しさ、怒り、安息、絶望、そして様々な風景の描写… ディースカウはこれらのものをしびれる巧さで歌い分けてしまう。心が引き込まれてしまう。絹のはだ触りのような声で。ピアノのヘルはそうしたディースカウの歌心とたいへんマッチした自由で情感の溢れ出る演奏でたいへんよかった。


30年以上前に書いた感想だが、ディースカウの歌の魅力はこの「巧さ」に尽きるだろう。ディースカウの歌は誰の追随も許さない「名優」を思わせる。どんな激しい場面であっても常に沈着冷静に言葉を見つめ、言葉の真髄を沈着冷静に伝える表現者に徹する。それで聴き手の心を怒涛のように揺さぶり、涙を溢れさせ、憧れで胸をいっぱいにさせ、皮肉や諧謔の妙を味わわせてくれる。気が付くと聴き手は「歌」の世界と同化しているのだ。ディースカウの歌はこの先も変わることなく、シューベルトやシューマン、ヴォルフなどのリートの世界で揺るぐことのない「範」であり続けるだろう。
(2020.5.12)

フィッシャー=ディースカウの「冬の旅」
ペーター・シュライアーの「美しき水車屋の娘」
ヘルマン・プライの「白鳥の歌」
♪ブログ管理人の作曲♪
「金魚のお墓」~金子のみすゞの詩による歌~
(S:田村茜)

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