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二期会 オペラ公演 「ラ・ボエーム」

2006年02月24日 | pocknのコンサート感想録2006
2月24日(金)二期会オペラ公演
オーチャードホール

【演目】
プッチーニ 「ラ・ボエーム」

【配役】
ミミ:木下美穂子(S)、ロドルフォ:山田 精一(T)、マルチェッロ:成田 博之(Bar)、ショナール:萩原 潤 (Bar)、ムゼッタ:安藤赴美子 (S)、コッリーネ:黒木 純 (B)、アルチンドロ:菅野宏昭 (B/Bar)、ベノア:鹿野 由之 (B)、パルピニョール:児玉 和弘(T)
【演出】
鵜山 仁
【公演監督】
栗林義信

【演奏】
ロベルト・リッツィ・ブリニョーリ指揮 東京フィルハーモニー交響楽団/二期会合唱団

とても心に沁みる良い「ボエーム」だった。
まずは演出の良さ。オペラは「通」というわけではない僕にとっては、今夜のようなオーソドックスな舞台はありがたい。
1幕と4幕、パリの下町の屋根裏部屋の古臭いにおいまで漂ってきそうなセット、2幕の街とカフェは、人々の衣装や道具の華やかな色調と動き、空からはフランス三色旗の小旗が無数に降って来て、空中に至るまで場面全体が思いっきりの鮮やかに彩られイヴのウキウキした気分を盛り立てた。3幕のしんしんと降る雪のシーンも雰囲気があった。
それぞれの装置は、しかし細かくリアルな情景描写というわけではなく結構大胆で、例えば屋根裏の場面では、ステージの高いところに大きなユトリロ風の絵が無造作に掛かり、これに微妙に様々な照明が当たり、マルチェッロの描いた絵とも、窓の風景とも、或いは立地の説明ともいろいろに取れる。2幕では傾斜をうまく利用して、大きな道具で華やかな通りやカフェやらを象徴的に表現している。オーソドックスを基調としながらも演出家のセンスが光る舞台だと感じた。

そんな雰囲気のある舞台で繰り広げられる「ボエーム」の物語に素直に引き込まれたのは優れた歌手陣とブリニョーリの手腕、オケの力がある。
歌手では主役ミミを歌った木下美穂子が大いに存在感を発揮した。美しい声、幅のある木目細かな表現力には迫真のドラマ性も備えていて、常に聴き手を引き付ける。”Mi chiamo Mimi”をはじめ、Mimiの歌に心酔!相手役ロドルフォを歌った山田精一はつややかで柔らかな美声が魅力だが、ここ一番の押しでは物足りなさも感じた。ムゼッタを歌った安藤赴美子は役柄にふさわしい華やかさを持っていてなかなか良い。他には哲学者コッリーネを歌った黒木純の4幕でのアリア「さらば古外套よ」が万感の思いが込められた味わい深さがあり、大きな喝采を浴びた。そして、我らが菅野先生は2幕だけの登場だったが、ムゼッタに手を焼きつつも恋焦がれ、手放したくない老いぼれの心の内を見事に演じ、歌いブラボー!これからも更なる活躍を期待したい。

オケは、このオペラの色調にぴったりの温かみのある音色を奏でた。とりわけ歌い手と一緒に呼吸し、息を自然につなぎ、大きなフレーズを描き、歌手の歌に寄り添う弦の調べは見事で、ブリニョーリの手腕が窺えた。ただ、トゥッティでの決然とした表現やパンチ力という面では少々弱さも感じた。最後の金管の嘆きのファンファーレ、もっともっと胸が張り裂けるような響きが欲しい!

何はともあれ、こうした分り易い甘く哀しいプッチーニのラブストーリーオペラは、無条件で没入できるような公演が一番で、こうした詳しい感想よりも、オペラに酔えたという一言に尽きるかも知れない。

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