4月28日(木)ロジャー・ノリントン指揮 NHK交響楽団
《2011年4月Bプロ》 サントリーホール
【曲目】
1. ベートーヴェン/バレエ音楽「プロメテウスの創造物」序曲
2.ベートーヴェン/交響曲第2番ニ長調Op.36
3. ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第5番変ホ長調Op.73「皇帝」
Pf:マルティン・ヘルムヒェン
N響にノリントンが客演するのは4年半振り2度目。前回聴いたなかで、モーツァルトの39番ではノリントン節が弾けまくり、ゴキゲンの快演が強烈な印象を与えた一方で、ヴォーン=ウィリアムズに到っても飽くなきノンヴィヴラートへのこだわりにはちょっと辟易、という印象も持った。でも今回はノリントンのゴキゲン節が炸裂しそうなベートーベンプログラム。
最初の「プロメテウスの創造物」は、まさに期待通りの颯爽とした演奏、オケもノリノリの胸のすく快演で、続くシンフォニーへの期待を高めてくれた。その第2シンフォニーは、最初の序曲の空気を引き継ぎ、序奏を抜けるとスピード感溢れる、これまた颯爽とした演奏で吹き抜けて行く。でもこの2番の第1楽章、自分の中では、軽快ななかにもベートーヴェンの中期の作品に通じる、ある種濃厚な煌めきがある音楽、という理想像があり、そんなじっくり凝縮された魅力が、ここまてスピードを上げてしまうと大切にされず、どこかへ吹き飛んでしまったという不満がくすぶった。最初は刺激的でいいと思っていた硬質で目立つティンパニも、こう強調されると「ティンパニコンチェルトか・・・?」という感じ。第2楽章ではデリケートな美しい響きが聴こえてきたが、いわゆるN響サウンドとは別物の音だ。
ノリントンはあくまでも、ノリントンスタイルで、ノリントンの音をN響から引き出そうとする。N響は優秀で適応力も良いので、そんなノリントンの求めにもちゃんと応えるが、ブリリアントで輝きとふくよかさのある美音がやっぱりN響本来の持ち味だと思う。N響からピリオドオーケストラの響きが聴こえる!というのは話題性はあっても、それが感動に結びつくかは別問題。
今夜のプログラムはコンチェルトが最後にくるという珍しい曲順だったが、ピアノが主役というイメージが強い「皇帝」でも、主役はノリントンだった。いろいろと「普通でない」アプローチを仕掛けてくるオケパートに対して、ヘルムヒェンのピアノは、パリっとした美しい音色が耳を引き、繊細でしなやかな演奏ではあるが、いわゆる正攻法のアプローチ。オケとソリストの間にスリリングな関係は成り立たない。同じフレーズでも、ノリントン節の効いたオケがやるのと、ピアノがやるのとでは音楽が異なってしまい、噛みあわない。ノリントンが強調するアクセントや、フェイントや、或いは2楽章の終り~3楽章にかけて強調されていたB音の響きが、ピアノのソロパートにどのような効果をもたらし、どのような関係を築こうとしているのかが見えてこず、ただ、ノリントンの音楽がやけに目立つだけの結果に終わってしまった。
《2011年4月Bプロ》 サントリーホール
【曲目】
1. ベートーヴェン/バレエ音楽「プロメテウスの創造物」序曲

2.ベートーヴェン/交響曲第2番ニ長調Op.36
3. ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第5番変ホ長調Op.73「皇帝」
Pf:マルティン・ヘルムヒェン
N響にノリントンが客演するのは4年半振り2度目。前回聴いたなかで、モーツァルトの39番ではノリントン節が弾けまくり、ゴキゲンの快演が強烈な印象を与えた一方で、ヴォーン=ウィリアムズに到っても飽くなきノンヴィヴラートへのこだわりにはちょっと辟易、という印象も持った。でも今回はノリントンのゴキゲン節が炸裂しそうなベートーベンプログラム。
最初の「プロメテウスの創造物」は、まさに期待通りの颯爽とした演奏、オケもノリノリの胸のすく快演で、続くシンフォニーへの期待を高めてくれた。その第2シンフォニーは、最初の序曲の空気を引き継ぎ、序奏を抜けるとスピード感溢れる、これまた颯爽とした演奏で吹き抜けて行く。でもこの2番の第1楽章、自分の中では、軽快ななかにもベートーヴェンの中期の作品に通じる、ある種濃厚な煌めきがある音楽、という理想像があり、そんなじっくり凝縮された魅力が、ここまてスピードを上げてしまうと大切にされず、どこかへ吹き飛んでしまったという不満がくすぶった。最初は刺激的でいいと思っていた硬質で目立つティンパニも、こう強調されると「ティンパニコンチェルトか・・・?」という感じ。第2楽章ではデリケートな美しい響きが聴こえてきたが、いわゆるN響サウンドとは別物の音だ。
ノリントンはあくまでも、ノリントンスタイルで、ノリントンの音をN響から引き出そうとする。N響は優秀で適応力も良いので、そんなノリントンの求めにもちゃんと応えるが、ブリリアントで輝きとふくよかさのある美音がやっぱりN響本来の持ち味だと思う。N響からピリオドオーケストラの響きが聴こえる!というのは話題性はあっても、それが感動に結びつくかは別問題。
今夜のプログラムはコンチェルトが最後にくるという珍しい曲順だったが、ピアノが主役というイメージが強い「皇帝」でも、主役はノリントンだった。いろいろと「普通でない」アプローチを仕掛けてくるオケパートに対して、ヘルムヒェンのピアノは、パリっとした美しい音色が耳を引き、繊細でしなやかな演奏ではあるが、いわゆる正攻法のアプローチ。オケとソリストの間にスリリングな関係は成り立たない。同じフレーズでも、ノリントン節の効いたオケがやるのと、ピアノがやるのとでは音楽が異なってしまい、噛みあわない。ノリントンが強調するアクセントや、フェイントや、或いは2楽章の終り~3楽章にかけて強調されていたB音の響きが、ピアノのソロパートにどのような効果をもたらし、どのような関係を築こうとしているのかが見えてこず、ただ、ノリントンの音楽がやけに目立つだけの結果に終わってしまった。