9月21日(金)小菅 優(Pf)
~Four Elements Vol.2 Fire~
東京オペラシティコンサートホールタケミツメモリアル
【曲目】
♪ チャイコフスキー/「四季」Op.37b ~1月「炉端にて」
♪ レーガー/「暖炉のそばの夢」Op.143~第3番、第5番、第7番、第10番(ユーモレスク)、第12番
♪ リスト/シュタルク編/プロメテウス
♪ ♪ ♪
♪ ドビュッシー/燃える炭火に照らされた夕べ
♪ ドビュッシー/前奏曲集第2巻~「花火」
♪ スクリャービン/悪魔的詩曲Op.36
♪ スクリャービン/詩曲「炎に向かって」Op.72
♪ ♪ ♪
♪ ファリャ/組曲「恋は魔術師」~「きつね火の歌」、「火祭りの踊り」
♪ ストラヴィンスキー/バレエ音楽「火の鳥」(作曲者によるピアノ編曲版)~1919年版組曲の構成に準じて演奏
【アンコール】
♪ チャイコフスキー/「四季」 ~1月「炉端にて」
古代から、世界の構成要素と云われていた「四元素」を、毎年一つずつテーマとして取り上げる小菅優の壮大なリサイタルシリーズ、2回目のテーマは「火」。小菅は、「火」にまつわるあまたの作品から、1910年代、調性音楽から無調へと変遷する時代の作品に焦点を当て、更に性格ごとに3つのカテゴリーに分類、それぞれの間に休憩を2回入れ、徹底したコンセプトのもと、非の打ち所がないとほどの圧倒的なリサイタルを成し遂げた。
最初のカテゴリーは、火が人にもたらす温もりや安らぎ。小菅は、親密な語り口で穏やかな情景を描くが、それはほんわかと、少々ピントの甘いアプローチではなく、澄んだ眼差しでゆらゆらと静かに揺らめく炎を見つめ、対象をくっきりとピュアに描く。そこには真の安らぎをもたらす静寂がある。最後におかれたリストのプロメテウスは、激しさや灼熱ももたらし、次のカテゴリーへの布石を与えた。
休憩を挟んだ次のテーマは、火の根源的に持つエネルギー、人の手には負えない奔放さ。小菅は、オレンジ色の衣装から真紅のコスチュームに衣替え。最初の「燃える炭火に…」では、まだ静かな佇まいを保ちつつも、その後の曲たちへの点火剤となった。続く「花火」では火が炸裂し、パチパチと弾けた火の粉があらゆる方向にまき散らされる。花火の美しさよりも、手の付けられない火の勢いに圧倒された。続くスクリャービンの2つの作品では、火の勢いが極限にまで高まって、まさに悪魔的。猛り狂った炎が情け容赦なく全てを飲みこみ燃やし尽くす。小菅は、悪霊が乗り移ったかのような凄味を見せ、これでもか!と聴き手を圧倒しつつ、小菅自身は至って冷静に狙いを定め、猛獣の眼差しのように対象を捉えて離さず、あぶり出す。聴衆の熱気は一気に跳ね上がった。
再び15分の休憩のあと、小菅はまた最初のコスチュームに戻った。3つ目のカテゴリーに集められた作品は、人の熱愛や夢想と「火」が結びついた作品。ファリャの「火祭りの踊り」では、妖しく、真っ赤に燃える血潮をたぎらせて踊り狂う情景をリアルに描いた。そして「火の鳥」では、火の中から再生した火の鳥によってもたらされた愛の物語が、圧倒的な大団円へと突き進んで行った。この作品はオーケストラで馴染んでいるせいもあるが、ストラヴィンスキー自身によるピアノへの編曲が、オケ版がもたらす鮮やかなコントラストや迫力を表現し切れていないのでは、と、アレンジの方に少し疑問が残ったが。
前回の「水」をテーマにしたリサイタルは、小菅の本領が100パーセント発揮されるまでには至らない気がしたが、今回は、プログラム構成とその意味づけから実際の演奏まで、小菅優というピアニストのとてつもない才能と実力、更には、企画・構成力も思い知らされた。自ら打ち立てた明確なコンセプトに、全てのエネルギーとテンションを、無駄なく、鋭く、深く、そして熱く注ぎ込み、聴く者にストレートに訴えた。
マイナーな曲目が多く、主宰者のKJIMOTOも集客はそれほど見込んでいなかったのか、1階席のみを開放したが、それでも後方には空席が目立った。それを承知の上で、こうした価値あるシリーズを続けるKAJIMOTOにも賛意を表したい。
小菅 優 ピアノ・リサイタル Four Elements Vol.1 Water ~2017.11.30 東京オペラシティコンサートホールタケミツメモリアル~
♪ブログ管理人の作曲♪
金子みすゞ作詞「鯨法会」(MS:小泉詠子/Pf:田中梢)(YouTube)
「森の詩」~ヴォカリーズ、チェロ、ピアノのためのトリオ~(YouTube)
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~Four Elements Vol.2 Fire~
東京オペラシティコンサートホールタケミツメモリアル
【曲目】
♪ チャイコフスキー/「四季」Op.37b ~1月「炉端にて」
♪ レーガー/「暖炉のそばの夢」Op.143~第3番、第5番、第7番、第10番(ユーモレスク)、第12番
♪ リスト/シュタルク編/プロメテウス
♪ ドビュッシー/燃える炭火に照らされた夕べ
♪ ドビュッシー/前奏曲集第2巻~「花火」
♪ スクリャービン/悪魔的詩曲Op.36
♪ スクリャービン/詩曲「炎に向かって」Op.72
♪ ファリャ/組曲「恋は魔術師」~「きつね火の歌」、「火祭りの踊り」
♪ ストラヴィンスキー/バレエ音楽「火の鳥」(作曲者によるピアノ編曲版)~1919年版組曲の構成に準じて演奏
【アンコール】
♪ チャイコフスキー/「四季」 ~1月「炉端にて」
古代から、世界の構成要素と云われていた「四元素」を、毎年一つずつテーマとして取り上げる小菅優の壮大なリサイタルシリーズ、2回目のテーマは「火」。小菅は、「火」にまつわるあまたの作品から、1910年代、調性音楽から無調へと変遷する時代の作品に焦点を当て、更に性格ごとに3つのカテゴリーに分類、それぞれの間に休憩を2回入れ、徹底したコンセプトのもと、非の打ち所がないとほどの圧倒的なリサイタルを成し遂げた。
最初のカテゴリーは、火が人にもたらす温もりや安らぎ。小菅は、親密な語り口で穏やかな情景を描くが、それはほんわかと、少々ピントの甘いアプローチではなく、澄んだ眼差しでゆらゆらと静かに揺らめく炎を見つめ、対象をくっきりとピュアに描く。そこには真の安らぎをもたらす静寂がある。最後におかれたリストのプロメテウスは、激しさや灼熱ももたらし、次のカテゴリーへの布石を与えた。
休憩を挟んだ次のテーマは、火の根源的に持つエネルギー、人の手には負えない奔放さ。小菅は、オレンジ色の衣装から真紅のコスチュームに衣替え。最初の「燃える炭火に…」では、まだ静かな佇まいを保ちつつも、その後の曲たちへの点火剤となった。続く「花火」では火が炸裂し、パチパチと弾けた火の粉があらゆる方向にまき散らされる。花火の美しさよりも、手の付けられない火の勢いに圧倒された。続くスクリャービンの2つの作品では、火の勢いが極限にまで高まって、まさに悪魔的。猛り狂った炎が情け容赦なく全てを飲みこみ燃やし尽くす。小菅は、悪霊が乗り移ったかのような凄味を見せ、これでもか!と聴き手を圧倒しつつ、小菅自身は至って冷静に狙いを定め、猛獣の眼差しのように対象を捉えて離さず、あぶり出す。聴衆の熱気は一気に跳ね上がった。
再び15分の休憩のあと、小菅はまた最初のコスチュームに戻った。3つ目のカテゴリーに集められた作品は、人の熱愛や夢想と「火」が結びついた作品。ファリャの「火祭りの踊り」では、妖しく、真っ赤に燃える血潮をたぎらせて踊り狂う情景をリアルに描いた。そして「火の鳥」では、火の中から再生した火の鳥によってもたらされた愛の物語が、圧倒的な大団円へと突き進んで行った。この作品はオーケストラで馴染んでいるせいもあるが、ストラヴィンスキー自身によるピアノへの編曲が、オケ版がもたらす鮮やかなコントラストや迫力を表現し切れていないのでは、と、アレンジの方に少し疑問が残ったが。
前回の「水」をテーマにしたリサイタルは、小菅の本領が100パーセント発揮されるまでには至らない気がしたが、今回は、プログラム構成とその意味づけから実際の演奏まで、小菅優というピアニストのとてつもない才能と実力、更には、企画・構成力も思い知らされた。自ら打ち立てた明確なコンセプトに、全てのエネルギーとテンションを、無駄なく、鋭く、深く、そして熱く注ぎ込み、聴く者にストレートに訴えた。
マイナーな曲目が多く、主宰者のKJIMOTOも集客はそれほど見込んでいなかったのか、1階席のみを開放したが、それでも後方には空席が目立った。それを承知の上で、こうした価値あるシリーズを続けるKAJIMOTOにも賛意を表したい。
小菅 優 ピアノ・リサイタル Four Elements Vol.1 Water ~2017.11.30 東京オペラシティコンサートホールタケミツメモリアル~
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「森の詩」~ヴォカリーズ、チェロ、ピアノのためのトリオ~(YouTube)
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