9月15日(土)櫻井元希/ヴォーカル・アンサンブル アラミレ
ピエール・ド・ラ・リュー没後500年記念
ルネサンス・ポリフォニーとグレゴリオ聖歌によるミサ形式の演奏会
大森福興教会
【曲目】
♪ ピエール・ド・ラ・リュー/ミサ「ロム・アルメ(精霊の随意ミサ)」
♪ ピエール・ド・ラ・リュー/モテット「喜んでください、キリストの母なるおとめよ」
(曲中に挿入されたグレゴリオ聖歌)
♪入祭唱「主の霊は満ち」
♪昇階唱「幸いな国」
♪アレルヤ唱「来てください、精霊」
♪奉納唱「強めてください」
♪拝領唱「突然、音が天から聞こえ」
メンバーは1つの大きな譜面を皆で見ながら唱和する(最後のページ)
中世・ルネサンス時代の声楽作品を中心に、ネウマ譜など当時の記譜法で書かれた譜面を用いて、美しい純正調の響きで演奏活動を続けるヴォーカル・アンサンブル・アラミレの定期演奏会を4年ぶりに聴いた。取り上げられたのは、今年没後500年を迎えるというピエール・ド・ラ・リューの大作ミサ「ロム・アルメ」。
今年のアニバーサリー作曲家にラ・リューの存在は気づかなかった。名前は聞いた気がしていたが、僕が知っていたのはル・ルーだったようで、未知の作曲家というわけだ。演奏の前にリーダーの櫻井さんが曲の解説をしてくれ、このミサ曲の定旋律として用いられている原曲を、聴衆にも促して一緒に歌ったので親しみがわき、「メンスーラカノン」という、パートによって速度が異なるという複雑なカノンを実践で聴かせてくれて興味が深まった。
そして始まった「アラミレ」による演奏は、いつもながら極上のハーモニーで、この上なくデリケートに進んでいった。響きの伸縮や膨らみが常に穏やかで柔軟。今回はフランドルの作曲家ということで、フランス語の発音に順じたというラテン語の発音も柔らかく繊細で、穏やかで静謐な祈りの歌を、礼拝堂の隅々まで優しく響かせた。
プログラムに印刷されたテキストを追いながら聴いていると、主の栄光を讃える場面、憐れみを請う場面、イエスが人として降臨する場面、磔刑の場面など、歌詞の内容が、アグレッシブにではなく、ジワッと訴えかけてくる。ラ・リューのこのミサ曲は、ルネサンスの宗教作品のなかでも、とりわけデリケートで香り高い音楽と感じた。「アニュス・デイ」で終わりかと思いきや、そのあとに長大な楽曲が続き、演奏が進むほどに熱を帯び、濃厚な表現で訴えてきて心を動かされた。あとでパンフレットを読み返したら、これはミサとは別のモテットだったと知り、それまでのミサと少し毛色が違う音楽だと感じたことに納得。ラ・リューの多様で多彩な魅力を味わうことができたわけだ。
間に挟まれたグレゴリオ聖歌の、デリケートでふくよかに描かれる旋律線も心にフィットしたし、いつものように渡辺研一郎さんによる節の付いた福音書朗読の心地よい抑揚にも酔った。櫻井さんが解説してくれた複雑なカノンは、残念ながら聴き取ることができなかったが、これは、難曲を難なく通過した「アラミレ」の高い演奏能力の証しなのだろう。
ところで、「アラミレ」の公演はミサ形式で行われ、通常の演奏会とは一味違った趣を呈する。聖書朗読では、司祭役の渡辺さんが説教壇をイメージした場所へ進み、そこで朗唱を行い、会衆(他の団員)との受け答えが進む。これらは全てラテン語で行われるので、聴衆はプログラムの対訳を追わない限り理解できない。何やら厳かな神々しい雰囲気で、お香の匂いが漂ってくるような気分になる。ラ・リューの時代にミサに参じた会衆もこのような儀式に立ち会って信仰心を駆り立てられたことだろう。
ちょうどラ・リューが没した前年に、このような形式ばったやり方ではなく、自国語での聖書を普及させ、聖書の言葉を心から理解することで真の信仰を唱える宗教改革が起きたわけだが、ルターが思い描いたであろう「礼拝」とは対照的な、一つの完成された姿を見た思いがした。
ヴォーカル・アンサンブル アラミレ 第7回演奏会 14.9.15 淀橋教会エクレシアホール
♪ブログ管理人の作曲♪
金子みすゞ作詞「鯨法会」(MS:小泉詠子/Pf:田中梢)(YouTube)
「森の詩」~ヴォカリーズ、チェロ、ピアノのためのトリオ~(YouTube)
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ルネサンス・ポリフォニーとグレゴリオ聖歌によるミサ形式の演奏会
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♪ ピエール・ド・ラ・リュー/ミサ「ロム・アルメ(精霊の随意ミサ)」
♪ ピエール・ド・ラ・リュー/モテット「喜んでください、キリストの母なるおとめよ」
(曲中に挿入されたグレゴリオ聖歌)
♪入祭唱「主の霊は満ち」
♪昇階唱「幸いな国」
♪アレルヤ唱「来てください、精霊」
♪奉納唱「強めてください」
♪拝領唱「突然、音が天から聞こえ」
メンバーは1つの大きな譜面を皆で見ながら唱和する(最後のページ)
中世・ルネサンス時代の声楽作品を中心に、ネウマ譜など当時の記譜法で書かれた譜面を用いて、美しい純正調の響きで演奏活動を続けるヴォーカル・アンサンブル・アラミレの定期演奏会を4年ぶりに聴いた。取り上げられたのは、今年没後500年を迎えるというピエール・ド・ラ・リューの大作ミサ「ロム・アルメ」。
今年のアニバーサリー作曲家にラ・リューの存在は気づかなかった。名前は聞いた気がしていたが、僕が知っていたのはル・ルーだったようで、未知の作曲家というわけだ。演奏の前にリーダーの櫻井さんが曲の解説をしてくれ、このミサ曲の定旋律として用いられている原曲を、聴衆にも促して一緒に歌ったので親しみがわき、「メンスーラカノン」という、パートによって速度が異なるという複雑なカノンを実践で聴かせてくれて興味が深まった。
そして始まった「アラミレ」による演奏は、いつもながら極上のハーモニーで、この上なくデリケートに進んでいった。響きの伸縮や膨らみが常に穏やかで柔軟。今回はフランドルの作曲家ということで、フランス語の発音に順じたというラテン語の発音も柔らかく繊細で、穏やかで静謐な祈りの歌を、礼拝堂の隅々まで優しく響かせた。
プログラムに印刷されたテキストを追いながら聴いていると、主の栄光を讃える場面、憐れみを請う場面、イエスが人として降臨する場面、磔刑の場面など、歌詞の内容が、アグレッシブにではなく、ジワッと訴えかけてくる。ラ・リューのこのミサ曲は、ルネサンスの宗教作品のなかでも、とりわけデリケートで香り高い音楽と感じた。「アニュス・デイ」で終わりかと思いきや、そのあとに長大な楽曲が続き、演奏が進むほどに熱を帯び、濃厚な表現で訴えてきて心を動かされた。あとでパンフレットを読み返したら、これはミサとは別のモテットだったと知り、それまでのミサと少し毛色が違う音楽だと感じたことに納得。ラ・リューの多様で多彩な魅力を味わうことができたわけだ。
間に挟まれたグレゴリオ聖歌の、デリケートでふくよかに描かれる旋律線も心にフィットしたし、いつものように渡辺研一郎さんによる節の付いた福音書朗読の心地よい抑揚にも酔った。櫻井さんが解説してくれた複雑なカノンは、残念ながら聴き取ることができなかったが、これは、難曲を難なく通過した「アラミレ」の高い演奏能力の証しなのだろう。
ところで、「アラミレ」の公演はミサ形式で行われ、通常の演奏会とは一味違った趣を呈する。聖書朗読では、司祭役の渡辺さんが説教壇をイメージした場所へ進み、そこで朗唱を行い、会衆(他の団員)との受け答えが進む。これらは全てラテン語で行われるので、聴衆はプログラムの対訳を追わない限り理解できない。何やら厳かな神々しい雰囲気で、お香の匂いが漂ってくるような気分になる。ラ・リューの時代にミサに参じた会衆もこのような儀式に立ち会って信仰心を駆り立てられたことだろう。
ちょうどラ・リューが没した前年に、このような形式ばったやり方ではなく、自国語での聖書を普及させ、聖書の言葉を心から理解することで真の信仰を唱える宗教改革が起きたわけだが、ルターが思い描いたであろう「礼拝」とは対照的な、一つの完成された姿を見た思いがした。
ヴォーカル・アンサンブル アラミレ 第7回演奏会 14.9.15 淀橋教会エクレシアホール
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