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ユベール・スダーン指揮ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団

2006年05月24日 | pocknのコンサート感想録2006
5月24日(水)ユベール・スダーン指揮ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団
サントリーホール

【曲目】
1.モーツァルト/交響曲第31番ニ長調K.297「パリ」
2.モーツァルト/ヴァイオリン協奏曲第5番イ長調K.219「トルコ風」
Vn:川畠成道
3. モーツァルト/交響曲第36番ハ長調K.425「リンツ」
4.モーツァルト/交響曲第38番ニ長調K.504「プラハ」
【アンコール】
1.モーツァルト/行進曲ニ長調K.335(320a)No.1
2.モーツァルト/カッサシオン


モーツァルテウム管弦楽団というオーケストラは、とりわけ秀でた合奏力があるわけでも、独特な音色を持っているわけでも、名人プレーヤーを擁しているわけでもないのに、モーツァルトを演奏すると不思議なことに「これぞモーツァルト魂」と言いたくなるような独特な雰囲気を醸し出す。久し振りに聴いた今回もシビレるモーツァルトを聴かせてくれた。

スダーンの程よい柔らかさと、メリハリの効いたリズム感のある演奏は前半も良かったが、いよいよシビレて来たのは「リンツ」のメヌエットのあたりから。乗りが良く、伸びやかに歌い、前へ前へと進んで行く。そしてフィナーレ。弦のささやきで始まり、チャーミングな歌が続き、パンチの効いたアクセントに導かれて弦の小刻みな振動が心を揺さぶり、そして僕の大好きなあの「・ソラシ・ドシド・ミレド・シラソ」という8分音符3つのシンプルな連なりと、それを後ろで支える「ソーファーソ」というこれも単純な刺繍音の組み合わせの展開を、スダーン/モーツァルテウム管弦楽団はさり気なく、しかし魅力たっぷりに語り、歌ってくれ、宙に浮くような気分に持ち上げてくれる。これぞモーツァルトの魂が宿ったと感じる瞬間。

こうなると演奏の波長と自分の心の波長がピタリと合い、波は増幅されて行くばかりで、気分を最高潮へと運んでくれる。嬉々としたつややかな弦と、それに明るい光りを当てる管との饗宴。このオケにはモーツァルトを最も自然な形で魅力的に聴かせる節回しが染み込んでいて、センスの良い指揮者に出会えばその「モーツァルトの遺伝子」がにわかに活動を開始するようだ。

続く「プラハ」でもこの乗りが続き、またまた素晴らしい演奏となった。次々と現れる性格の違うフレーズが、さり気なく自然な姿で瞬時に表情を切り替え、歌い分けられる見事さ。こうしたことの連続が演奏の魅力的な印象を決める。1つだけ不満を言うなら、スダーンはソナタ形式の提示部もリピートしないで快活にどんどん先へと行ってしまうこと。古楽器オケでよくやる全てのリピートには閉口するが、こんな素敵な演奏の特に提示部はリピートして聴きたいではないか!

本プログラムが心憎い曲目ならアンコールも、聴く機会は少ないが魅力たっぷりの2曲をやってくれるのが嬉しい。これもモーツァルトの臭いがプンプンとするよう。モーツァルトが生まれ、前半生を過ごした町にあり、モーツァルトの名を冠したこのオーケストラは、そうした重みを気負いなく誇りに感じつつモーツァルト演奏の伝統を育んできたに違いない。このオケをいつかはザルツブルクで聴いてみたい。

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