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クァルテット・エクセルシオ ベートーヴェンチクルス第4回

2021年02月09日 |  pocknのコンサート感想録2021
2月6日(水)クァルテット・エクセルシオ 
~Vn:西野ゆか、北見春菜/Vla:吉田有紀子/Vc:大友肇~
~ベートーヴェン生誕250年記念 弦楽四重奏全曲チクルス第4回~
浦安音楽ホール

【曲目】
1.弦楽四重奏曲第1番ヘ長調 Op.18-1
2.弦楽四重奏曲第2番ト長調 Op.18-2
3.弦楽四重奏曲第3番ニ長調 Op.18-3
4.弦楽四重奏曲第4番ハ短調 Op.18-4
5.弦楽四重奏曲第5番イ長調 Op.18-5
6.弦楽四重奏曲第6番変ロ長調 Op.18-6

浦安音楽ホールで行われているクァルテット・エクセルシオによるベートーヴェンの弦楽四重奏曲全曲演奏会の4回目は、立春を過ぎて日も延びてきた穏やかな昼下がりに行われた。プログラムは作品18の全6曲。中期や後期のカルテットと比べれば規模は控え目なものが多いが、それでも3時間はかかりそうと思っていたら、2回の休憩を挟んで4時間にもおよぶ長丁場のコンサートになった。

これら6曲はベートーヴェンがセットで発表したそうだが、全てをまとめて聴いて感じたのは、それぞれが魅力的な個性ある6人きょうだいのような存在だということ。重みや密度という点では共通点はあるものの、むしろ実際のきょうだいのように、それぞれが異なる個性の花を咲かせ、魅力を放っていることを認識することができた。

エクの4人は、それぞれを個々に際立たせるアグレッシブなアプローチには距離を置き、6人きょうだいの一人一人を紹介するように、作品群全体を俯瞰したうえで丁寧に音を紡いで行った。とりわけ印象深かったのは、どの作品も常に対話で成り立っていて、問いと答え、発信と受信、呼びかけと唱和など、様々なタイプのコミュニケーションで緻密に出来上がっていることを伝えてくれたこと。音楽のモチーフやフレーズが一種の「言語」としてやり取りされていることに気づかされた。エクはこうしたコミュニケーションをごく自然に進め、落ち着きのなかにも、ある時は熱気を孕み、ある時は切なさがこみ上げ、またある時は陽気なおしゃべりに興じるなど、様々な感情を表現し、作品ごとの個性豊かなストーリーを聴かせてくれた。

6曲を1回の演奏会で時間をかけて作品番号順に全曲演奏したのは、エクがこれらをひとつの大きな作品と捉えようとしたのだと思う。短いモチーフを繰り返すプレリュード的な第1番と、それへの答えのような第2番が対をなし、芳醇な抒情と歌を湛えた第3番と唯一の短調作品である引き締まった第4番が全体の中間に置かれ、間奏的な第5番に続いて、未来に扉を開いたような第6番で締めるという一連の展開が感じられたが、これは正にエクが狙ったものだったのではないだろうか。

ただ、こうして6曲を一度に続けて聴いてみると、どの音楽もセットのなかのひとつという括りでは収まらないほどの豊かな内容を具えた重さがあることにも改めて気づかされ、少々疲れもした。一度に全部聴いてしまうより、一つ一つをもっとじっくりと味わいたい気もする。もしこれらが例えば2回の演奏会に分けられたら、エクのアプローチも同じではなかったかも知れない、と思うと、それがどんな演奏になったかなとも思った。

クァルテット・エクセルシオ ベートーヴェンチクルス第3回 2021.1.13 浦安音楽ホール
クァルテット・エクセルシオ ベートーヴェンチクルス第2回 2020.12.16 浦安音楽ホール
クァルテット・エクセルシオ 第37回東京定期演奏会 2019.11.17 東京文化会館小ホール
クァルテット・エクセルシオ ベートーヴェンチクルス第1回 2020.10.14 浦安音楽ホール

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