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NHK交響楽団 2⽉公演 NHKホール(尾高忠明 指揮)

2021年02月10日 |  pocknのコンサート感想録2021
2月7日(日)尾高忠明 指揮 NHK交響楽団
NHKホール

【曲目】
1.武満徹/3つの映画音楽
2.ショスタコーヴィチ/チェロ協奏曲 第1番 変ホ長調 Op.107
 【アンコール】
 ♪ バッハ/無伴奏チェロ組曲第2番ニ短調 BWV1008~第4曲 サラバンド
 Vc:横坂 源
3.シベリウス/交響曲 第1番 ホ短調 Op.39

N響と、このオケの正指揮者を務める尾高忠明とは相性が良い印象があり、今夜の演奏会も楽しみに出かけた。

最初の武満は、繊細で透明で柔軟なN響の美しい弦楽合奏に聴き惚れた。水も漏らさぬ精緻なアンサンブルでありながら、人の呼吸のような温もりと豊かな表情を持ち、淡い色彩を湛えていた。武満の音楽の表現には欠かせない、風にゆらめく薄衣が幾重にも折り重なるようなテクスチャーが見事に表現されている。第3曲「他人の顔」の得も言われぬ色香も絶品だった。

ショスタコーヴィチのチェロ協奏曲でソロを受け持った横坂源の演奏を聴くのは初めて。第1楽章はおとなしめで、これと云った特徴を掴めなかったが、第2楽章では地の底にマグマが滞留しているような粘っこい熱さを感じ、第3楽章のカデンツァではそのマグマが地表に顔を覗かせ、濃厚な熱気を放ち、聴き手をぐいぐいと引き込んで行った。終楽章ではこの熱気が緊迫感と共に最高潮に達した。

横坂の演奏は一見控え目だが、心の奥底に熱くたぎるものを持ち、これを一気に放出するのではなく、じわじわと、ねっとりと滲ませ、気が付くと聴き手の体と心をほてらせている。アンコールのバッハは深くて大きな包容力で叙情豊かに歌い上げた。

最後はシベリウス。尾高の指揮で一番楽しみだった曲だ。冒頭のクラリネットの薄明から浮かび上がるような静かな歌から透徹とした美しさを聴かせ、やがて生命力溢れる歌を高らかに奏でた。磨き抜かれた輝かしいサウンド、湧き上がるエネルギー、細部に目を転じれば、柔らかな語り口で連綿と繋がり重なりあう音のヒダが、遥か遠くへと伸びてゆく。

しかし聴き進むうちに何かが足りない気が・・・ 響きも表現もパワーも、細部から全体までとにかく全てが非の打ちどころがないほど上手い。それが優等生的で反って物足りなさを感じるのだ。こんなに上手くなくてもいいのでは?シベリウスには、ちょっとしたズレとかカスレ、野暮ったさとかもあっていいのに。でもこれは僕の単なる好みの問題で、尾高さんにもN響にも全く不満はない。どうか悪しからず・・・

尾高忠明指揮 読売日本交響楽団 (2020.9.8 サントリーホール)
尾高忠明 指揮 NHK交響楽団 (2018.6.21 サントリーホール)
尾高忠明 指揮 NHK交響楽団 (2015.6.19 サントリーホール)

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