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9月B定期(指揮:若杉弘、外山雄三)

2006年09月13日 | N響公演の感想(~2016)
9月13日(水)若杉 弘(1~3)/外山雄三(4)指揮 NHK交響楽団
~N響創立80周年 正指揮者シリーズ 故・岩城宏之追悼公演~
《9月Bプロ》 サントリーホール


【曲目】
1.武満徹/弦楽のためのレクイエム
2.武満徹/テクスチュアズ
Pf:高橋アキ/ギター:佐藤紀雄
3. 黛 敏郎/曼荼羅交響曲
4.ストラヴィンスキー/バレエ音楽「春の祭典」

N響の新しいコンサートシーズンの幕開けは、「正指揮者シリーズ」と銘打ったものだったが、正指揮者の一人でこのB定期の指揮台に立つ予定だった岩城さんが亡くなったため、他の二人の正指揮者がこのプログラムを振り分けての岩城さんの追悼公演になった。岩城の指揮で武満やハルサイが聴けるのを楽しみにしてはいたが、若杉さんと外山さんはこの追悼公演を大変立派なものに仕上げてくれた。

最初に登場した若杉弘は、まず岩城の冥福を祈るように指揮台の横で黙祷を捧げてから「弦楽のためのレクイエム」を始めた。静寂な出だしは死者を慰めるようにどこまでも柔らかい。若杉らしい息の長い、たっぷりとしたレクイエムが始まった。マロさんや店村さんのソロもしっとりと滑らかに歌いかける。会場は静かな空気で満たされた。

「テクスチュアズ」は武満の新しさが引き立つ作品。武満の若い時代の作品は「弦楽のためのレクイエム」以外なかなか演奏されないので、こうした曲が取り上げられるのは嬉しい。オーケストラの音の質感の変化を見事に感じさせてくれる演奏だったと思う。

続く黛の「曼荼羅交響曲」も、音楽は武満のものとは全く違うが、現代音楽で様々な新しい試みが行われていた1950~1970年代の日本の作曲界の充実ぶりをうかがわせる作品。若杉の骨太でしなやかな表現が、崇高さと永遠性を引き立てる演奏だった。ここでもマロさんのソロは色香を湛えて艶やかに歌い、光彩をもたらした。

最後は外山雄三の指揮で「春の祭典」。落着いたテンポで暖かな春の息吹が感じられるような導入から独特の魅力を感じた。外山は音楽の構造をしっかりと見渡して確実に音を積み上げ、安定感のある演奏に仕上げて行く。荒々しさの代わりに大地にしっかりと根を生やしたような堅実なたくましさがあり、その根は水分や養分をたくさん吸収し、大空に枝葉を広げて行くような熱い生命力を感じさせてくれる。厚みと落ち着きのある充実した響きがそうしたたくましさを一層引き立てるが、これはN響の個々の技量と合奏力の高さも大いに貢献していた。堂々とした「春の祭典」を聴いて、この曲の別の魅力を発見したような気がした。

若杉にしろ外山にしろ、めっきりN響の定期に出る機会は減ってしまっているが、現役の名誉指揮者が事実上ブロムシュテットだけになってしまっている今、正指揮者にはもっと登場してもらいたい、と思える今夜のコンサートだった。

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2 コメント

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ギターの音 (一静庵)
2006-09-15 11:37:33
Bプロ、今回は振り替えで2日目に行きました。席はいつもより、中よりでしたので、ステージ全体が見渡せるところで、私にとっては嬉しいことでした。

武満徹:テクスチュアズのことですが、佐藤さんのギターの音は、まるで解りませんでした。

「曼荼羅交響曲」のまろさんのソロヴァイオリンは、母親のような優しさがありました。
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Re:ギターの音 (pockn)
2006-09-15 14:53:27
確かにギターの音、前の席でも全然聞こえませんでした… PAでも使ったほうがいいかも知れませんね。それとも、あれは弾いている姿を視覚的に感知できればそれでいいのかも??!
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