12月19日(土)Cl:豊永美恵/Pf:グヤーシュ・マールタ
~演連コンサート216~
東京文化会館小ホール
【曲目】
1.ハイドゥ/ハンガリー狂詩曲
2. シューマン/民謡風の5つの小品Op.102
3. ヒダシュ/クラリネットとピアノのためのソナタ
4. コヴァーチ/コダーイのオマージュ
5. ブラームス/クラリネットソナタ ヘ短調Op.120-1
【アンコール】
コヴァーチ/ベニスのカーニヴァル
豊永美恵さんはハンガリーのリスト音楽院で長く研鑽を積み、去年帰国してからは日本での演奏機会も増えてきた新進のクラリネット奏者。ハンガリー時代に共演していたというマータルさんをピアノに迎えて行なわれた東京での初のリサイタルは、ハンガリーの作曲家の珍しい作品を3曲入れたプログラムも、その演奏もとても充実した内容だった。
最初のハイドゥのハンガリー狂詩曲でめまぐるしく動きまわる技巧的なパッセージを高いテンションで鮮やかに演奏してまず聴き手の心を捉えると、次のシューマンでは詩情豊かな世界をたっぷりと、或いは活き活きと描いた。原曲はチェロの作品だが、ピアノに埋もれ勝ちになってしまうチェロより音域的にもクラリネット版はたっぷりした歌がくっきりと浮かび上がる。とりわけ高音域の柔かな色合いの美しい調べが印象に残った。
次のヒダシュのソナタは豊永さんがハンガリーで見つけ、作曲者立ち合いのもと初演したという曲。細やかなニュアンスに富み、東欧的な温もりのある曲を豊永さんは滑らかな語り口で、丁寧に、深く掘り下げたアプローチで聴かせてくれた。ピアノのマールタさんとの自然なやり取りが演奏を更に味わい深いものにしていた。
後半の最初に置かれたコヴァーチの無伴奏の作品は、印象深いコダーイのメロディーが温かく心に響いてくる合間に、衝動的なパッセージが散りばめられた曲で、短いながらも豊永さんのクラリネットの幅広い音域に渡る豊かな表現力と、技巧的な部分も完全に手中に収めた見事な腕前に感嘆した。
最後のブラームスでは、微妙に色合いを変えながらしみじみと歌い込まれる息の長いメロディーが心に沁みた。温かい音色とデリケートな表情が心のひだに優しく入ってきて、何とも言えない心地良さを感じる。マールタさんのピアノはいつでも出すぎることなくクラリネットに優しく寄り添い、音楽に温かく奥行きのある陰影を与えていた。二人が心を交わしながら織り上げた素敵なブラームスだった。
楽しいアンコールも含め、クラリネットの魅力をたっぷり堪能させてくれたこのリサイタルは鮮烈なイメージだけでなく、心をくすぐる親近感を残してくれた。
このリサイタルの前半部分で客席のステージに向かって右側のドアの外からずっと人のしゃべり声が聞こえてきたのがえらく気になった。ドアのすぐ外で誰かがしゃべっているのかと思い、1曲目が終わったときケリを入れてやりたい気分で曲間に注意しようと急いで扉の外まで行ったがそこには誰もいない。扉の外は大ホールのロビーや食堂と同じ空間で、ロビーとか食堂での話し声が中まで聞こえてきたようだ。この文化会館の小ホールは響きも雰囲気もとても好きなのだが、こんな構造上の欠陥があったなんて知らなかった。でもこんなに「外界」の音が聞えるならこれまでもクレームはあったはず。現に僕が席に戻ったあと、別の人もたまりかねて文句を言いに行っていた。いなかのおんぼろ公会堂じゃあるまいし、これはすぐに何とか対策を考えてもらわないことには演奏する側にとっても聴く側にとっても大問題だ。
~演連コンサート216~
東京文化会館小ホール
【曲目】
1.ハイドゥ/ハンガリー狂詩曲
2. シューマン/民謡風の5つの小品Op.102
3. ヒダシュ/クラリネットとピアノのためのソナタ
4. コヴァーチ/コダーイのオマージュ
5. ブラームス/クラリネットソナタ ヘ短調Op.120-1
【アンコール】
コヴァーチ/ベニスのカーニヴァル
豊永美恵さんはハンガリーのリスト音楽院で長く研鑽を積み、去年帰国してからは日本での演奏機会も増えてきた新進のクラリネット奏者。ハンガリー時代に共演していたというマータルさんをピアノに迎えて行なわれた東京での初のリサイタルは、ハンガリーの作曲家の珍しい作品を3曲入れたプログラムも、その演奏もとても充実した内容だった。
最初のハイドゥのハンガリー狂詩曲でめまぐるしく動きまわる技巧的なパッセージを高いテンションで鮮やかに演奏してまず聴き手の心を捉えると、次のシューマンでは詩情豊かな世界をたっぷりと、或いは活き活きと描いた。原曲はチェロの作品だが、ピアノに埋もれ勝ちになってしまうチェロより音域的にもクラリネット版はたっぷりした歌がくっきりと浮かび上がる。とりわけ高音域の柔かな色合いの美しい調べが印象に残った。
次のヒダシュのソナタは豊永さんがハンガリーで見つけ、作曲者立ち合いのもと初演したという曲。細やかなニュアンスに富み、東欧的な温もりのある曲を豊永さんは滑らかな語り口で、丁寧に、深く掘り下げたアプローチで聴かせてくれた。ピアノのマールタさんとの自然なやり取りが演奏を更に味わい深いものにしていた。
後半の最初に置かれたコヴァーチの無伴奏の作品は、印象深いコダーイのメロディーが温かく心に響いてくる合間に、衝動的なパッセージが散りばめられた曲で、短いながらも豊永さんのクラリネットの幅広い音域に渡る豊かな表現力と、技巧的な部分も完全に手中に収めた見事な腕前に感嘆した。
最後のブラームスでは、微妙に色合いを変えながらしみじみと歌い込まれる息の長いメロディーが心に沁みた。温かい音色とデリケートな表情が心のひだに優しく入ってきて、何とも言えない心地良さを感じる。マールタさんのピアノはいつでも出すぎることなくクラリネットに優しく寄り添い、音楽に温かく奥行きのある陰影を与えていた。二人が心を交わしながら織り上げた素敵なブラームスだった。
楽しいアンコールも含め、クラリネットの魅力をたっぷり堪能させてくれたこのリサイタルは鮮烈なイメージだけでなく、心をくすぐる親近感を残してくれた。
このリサイタルの前半部分で客席のステージに向かって右側のドアの外からずっと人のしゃべり声が聞こえてきたのがえらく気になった。ドアのすぐ外で誰かがしゃべっているのかと思い、1曲目が終わったときケリを入れてやりたい気分で曲間に注意しようと急いで扉の外まで行ったがそこには誰もいない。扉の外は大ホールのロビーや食堂と同じ空間で、ロビーとか食堂での話し声が中まで聞こえてきたようだ。この文化会館の小ホールは響きも雰囲気もとても好きなのだが、こんな構造上の欠陥があったなんて知らなかった。でもこんなに「外界」の音が聞えるならこれまでもクレームはあったはず。現に僕が席に戻ったあと、別の人もたまりかねて文句を言いに行っていた。いなかのおんぼろ公会堂じゃあるまいし、これはすぐに何とか対策を考えてもらわないことには演奏する側にとっても聴く側にとっても大問題だ。